2025年4月某日 なかなかのウルトラCではないか
小6息子の保護者会に参加。皆さん、4月の保護者会での恒例イベントをご存じだろうか。それは、「PTAの委員決め」である。
PTA全体の幹事役になる役員(会長とか書記、会計とか)は昨年度中にすでに決まっていて、今日は「委員」を決める。その中で、「行事委員」は割と拘束時間が多いらしく、やりたくない人にとっては負担感が強い。学年で4人がノルマの行事委員に、立候補者が2人出て、残り2人が決まらない流れになった。
予想通り、PTAの係決め恒例の、「ダンマリ・チキンレース」が始まる。「どなたか、やってみてもいいという方、いませんか?」の声に、誰も反応しないあの時間。その雰囲気に耐えきれなくなった人が、「…じゃあ」と手をあげるのをみんなが待ってる。沈黙が続くほど、しゃべった方が不利になる感じがしてしまう。ここで何か意見を言おうものなら、「じゃあお宅が引き受けなさいよ」という言われちゃうんじゃないか。それが怖くて、沈黙は重くなるばかり…
特に、6年生の「委員決め」はギスギスしやすいのではないか(正直言ってよく分かってないんだけど)。「PTAをやりたい人、やってもいい人」は昨年までに既にノルマを済ませていて、「やりたくない人」にとっては、「今年さえ避ければ逃げ切れる」という状況で、結構覚悟を決めてダンマリに徹しているのだ。
さて、このタイミングで、「あのぅ…」と遠慮がちに手を挙げた「勇気アリ」がいた。誰あろう、この僕である。何を言ったか。「くじ引きで、どうでしょうか…」だ。どうだろう、この斬新なアイデア。神発言ではないか。
まことにアホらしいと言えばアホらしいんだけど、「くじ引き」の提案ですらちょっと勇気が要るんである。「くじ」を提案するということは、「自分もくじを引いてもいい。くじに当たったら委員を引き受けてもいい」という意志を表明することであって、そうすると、「それなら委員を引き受ければいいじゃないですか」と言われかねない。損得だけで言えば、くじ引き提案の発言は「損」なのだ。
同じ理由で、僕に続いて「くじ引き、賛成です」と言ってくれる人がなかなか出てこない。「自分以外の誰かが委員に決まるまでは地蔵のままでいる」という固い決意を実行してるわけで、内心くじ引きに反対でなくても、そう簡単に「じゃあくじ引きをしましょう」とは言い出せない。
これが、ちょっと切ないのは、ほとんどの家庭は過去に1回は委員を引き受けたことがあって、その時に「これで卒業までお役御免」だと一度安心してるわけで、そうなると心理的に「もう1回やってもいい」という気持ちには到底ならない。ほんのわずかにいる「委員経験ゼロ組」は、断固たる決意で今まで委員を避けてきたわけであって、その人に委員になるように説得できるのか、誰が説得するのか、説得して意味あるのか、という問題もある(それこそ、時間と感情のムダ、という気がする)。
再び、より濃密な「ダンマリ・チキンレース」が始まりそうになるのを感じて、僕は言葉をつなぐ。「僕は、くじで当たったら引き受けよう、と思って来ました。たぶん、そう思ってる人もある程度いるんじゃないかと思います」「どうしても委員をできない方、どうしても委員をやりたくない方もいるとは思うので、そういう人はくじを引く前に辞退してもらっても、しょうがないのかな、と個人的には思います」「くじを引いた後でやっぱりイヤ、だと気まずいので、事前に納得した人が引くのがいいと思います」とか、そういうような。
ここで、司会役のPTA会長のNさんが話を引き取ってくれて、「どうですか、くじ引きで決める、というご意見が出ましたが、他に意見がある方はいますか?」と。なんにせよ、話がつながるのはありがたい。「じゃんけんにしますか?」って聞いていて、話の本質が違うでしょ、と思ったんだけど(抽選をするかどうかの合意が大切であって、その方法はその後で決めればよさそう)、「いやあ、じゃんけんはちょっと怖い…」とかの反応もあって、正直アホらしかったけど、とにかく沈黙よりはいい。「じゃあ逆に、くじ引きに反対の方挙手していただいていいですか」との呼びかけに、手を挙げた方がいて、「ウチは過去にPTA役員をやってますので…」と遠慮がちに言う。これも、「くじ引きを免除されるのは誰か」という話であって、くじ引きの是非とは違うでしょ、とやっぱり思ったんだけど、まあだけど、沈黙よりは全然いい。
さっきよりくだけた雰囲気になったこともあって、Nさんから、もう一度「立候補してくださる方、いないでしょうか?」と呼びかけがある。「どうでしょうか、最後の年ですし、夏まつりと、どんど焼き、子どもたちの笑顔を見られるチャンスです。ある意味、一番楽しい委員ですから」などゆっくり言いながら、だんだんと僕の方に近づいてくる。これ、最初は全体に向けて言ってたのに、最後は特定の人を狙い撃って、「漢気立候補」を促す伝統芸(?)なのだ。
最終的に僕の隣まで来て、「どうですか、まあ、こうなったら、やりますか」とNさん。会長のNさんは、僕を「オヤジの会」と中学校のPTAコーラスに誘ってくれた人であり、いつも腰が低く、ニコニコと「みなさんに助けてもらわないと何もできません」というような姿勢を崩さないタイプのやり手なんである。確かに、もう関係性ができたNさんが会長ということなら、僕としても参加のハードルはだいぶ下がる。というかそもそも、やってもいいかなと思いながら来ているのだ。
だけど、ここで僕は譲らずに、お誘いをお断りする。全体に向けて、もう一度呼びかけ。「僕自身は、くじ引きにそんなにネガティブなイメージはなくて、結構積極的に、くじ引きがいいな、と思ってるんです。というのは、誰にも決まらない気まずい雰囲気に耐えられなくなった人が、つい、やりますって言っちゃうパターンには違和感があって、それよりはくじ引きの方がむしろスッキリする、というか。うちが当たったら、イヤな気持ちでなく前向きに取り組めると思います。そういう人も多いと思いますし、もし、当たった人が忙しくて、あんまりミーティングや準備の作業に参加できなくても、そのことで文句や陰口を言ったりするような人はいないと思います。くじ引き、やってもいいじゃなくて、前向きな意味で、くじ引き、引きたいです」と。若干飛躍や希望的観測はあるものの、「前向きな意味でのくじ引き」という結論に着地したのはなかなかのウルトラCではないか。裏の狙いとしては、「ダンマリを貫いた方が得、というPTAあるあるの打破」である。
Nさんが話を振ってくれたおかげで、僕としても意見を言いやすかったという面もある(自分から手を挙げる方が勇気が要る)ので、Nさんの伝統芸も正直助かった。
「他に、意見はなさそうですかね? どうでしょう?」と、呼びかけがあって、これは「他に意見がなければくじ引きで合意」という雰囲気になってる。これは案外重要で、多数決を採ってしまうと、どうしても少数意見の無視が可視化されてしまうわけで、「雰囲気」で決めるのは実践的。同じように、「くじを免除される人」が確認されていく。「PTA役員の経験者、選挙管理委員は免除ですけど、いいですね?」「今日来てない人からも、委任状はもらってます。免除に当てはまらない人はくじにいれます」など、こちらも「雰囲気」で「合意ができたこと」になっていく。「できない人/やりたくない人は辞退OK」という僕が最初に出した意見は宙ぶらりんのままなんだけど、それはいい。家庭ごとに事情や考え方は違うんだから、「辞退OKの基準」なんて全体で話し合ってもあんまり意味はなさそう。
この「雰囲気での合意」に、モヤモヤする人も多いんだろうな。「PTAは任意参加」と言いながら、「くじで決められたら断れないんだから、実質的に強制と変わらない」みたいな。まあでも、僕の感覚としては、「ダンマリ・チキンレースへの耐性が低い人が、立候補をさせられる雰囲気」の方がモヤモヤが大きいので、「どちらかと言えばマシ」という感じがする。
最初から「くじ」に決まってたら、このムダな時間を過ごさずに済んだじゃないか、という気もするんだけど、僕は「アホらしくてもこの時間は必要」派かな。「どうしてもイヤな人はイヤと言えるチャンスがあった」というステップがあった方が、多少は後味がいい、というか。
「そもそも任意参加のはずだから、学年ごとに人数のノルマが決まってるのがおかしい。おかしいというか、無理がある。立候補者がいないんだったら、その分は欠員が認められるべき」というのが、僕としては本音に近いんだけど、それは口にできなかった。それを言い始めると、話が広がりすぎて、収拾がつかなくなりそう。「このイベント廃止にしましょう」とか「PTAの活動を縮小しましょう」とかの話につながって、それはそれで十分有力な考えだったとしても、結局その合意をまとめるのにもコストがかかるわけだから、なんとなく前の年までの流れが踏襲される、というのも「PTAあるある」としてしょうがない気がしてた。
とにかく、くじ引きが行われ、僕は無事「ハズレくじ」を引いて、委員にならずに済んだ。本当は、妻が一度PTA役員をやっているので(上の子の学年の時にやった)、うちは「くじ免除」のはずなんだけど、これはしょうがない。「委員を過去に1回やった人」もくじを引くのだ。「子どもが2人いて、役員1回」のうちも同じぐらいの条件じゃないか。
少なくとも、僕は「くじ」を引いてよかった。自分もくじを引いたことで、「くじに当たった人に委員を押し付けた」という罪悪感が軽減された、というぐらいのことなんだけど。小6の「委員決め」、なかなか興味深い体験だったぜ。「未来の世界からタイムスリップで令和の時代にやってきた」という目線で参加すると、なかなか楽しいアトラクション、と言えなくもない。
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