2025年4月某日 このような過ちを二度と繰り返さないために
職場で、びっくりしたことが起きた。Mさんに3年ぶりに遭遇した時のこと。僕、思わずやってしまったのである。何をやったか。彼の肩を、軽くパンチしてしまったのである。自分でも、魔が差したとしか思えない。でも、あの瞬間だけは、「うぇ~い」というテンションが自分の中に湧き起こり、その陽キャのノリを、押しとどめることができなかった。めちゃくちゃ恥ずかしい。
なんで恥ずかしいのか。それは、「Mさんと仲がいい」ということを周囲に見せびらかす、パフォーマンスの気持ちが含まれてることに、自分で気づいてしまってるからだ。今後、このような過ちを二度と繰り返さないためにも、なぜ「うぇ~い」に至ってしまったのか、しっかりと振り返っておきたい。
4月で新年度になったということで、会社ではいくつか配置転換が行われる。僕の所属するチームにも、何人か新メンバーが入った。そういう「メンバー構成」の配置だけじゃなくて、今回はチームが使う「島」を変える、物理的なポジションチェンジもあった(机を10個まとめて「島」と呼び、それが管理上の1つの単位になってる)。
僕らアルバイトスタッフはあんまりチームの変更はないんだけど、管理する社員の側は、まあまあ異動する。だいたい3割ぐらいの社員が、新しいチームで新年度をスタートさせる感じ。
つまり、上司とスタッフの新しい組み合わせが生まれてる状況なわけで、職場全体がなんとなく緊張してる。たぶんお互いに、「ナメられるわけにいかない」みたいなプレッシャーがあるんだろう。ギスギスしてる感じとは少し違って、むしろ普段よりちょっと明るい。そりゃあそうか。ビビッてないぞ、と自分にも周囲にも示したい。気合がちょっと空回りしたあいさつが行き来してる感じ。
そうか、もう答え出てるじゃんか。僕自身も、この雰囲気にのまれてたんだ。認めたくないけど、認めるしかない。緊張して、「ナメられるわけにいかない」みたいな防衛意識で、普段とはちょっと違うテンションだったんだ。
新しい「島」に引っ越して、人の往来が多い場所になった。3月までは部屋の端で、用がある人以外とは顔を合わせない感じだったのが、今は部屋の入口に近い。つまり、いろんな人と、会釈しなくてはいけないようなポジションで。
つまり、普段より積極的に「あいさつ」をするような状況だった。僕は「あいさつ」は重要だと思ってる方だ。すれ違う人に、敵意がないことを示すべきだ。たとえメンタル強めの人だとしても、「無視されたかも」「怒ってるかも」「嫌われてるのかも」と思いながら仕事をしたら、そりゃあ生産性が下がるだろう。つまり、「敵意がないことを示す」のだって、仕事のうち。あいさつを指図されるのは嫌いだけど、だからといってただ不貞腐れてるのは、なかなかにダサい。引っ込み思案でサイコパスな僕でも、いやそんな僕だからこそ、「あいさつ」だけはちゃんとしよう。
そんな気持ちで、結構積極的に目を合わせるようなムーブをしていたんである(キョロキョロしてるだけかもしれません)。そうすると、案外知り合いが多いことに気づいた。さすがに勤続20年以上の「でんせつバイトリーダー」である。この職場、友達はいなくても、顔見知りだらけじゃないか。スマイル多めでお辞儀してみる。そしたら、スマイル多めでお辞儀が返ってくる。試しに、「軽く手を振る」を加えてみる。そしたら、手を振り返されるじゃないか。驚いた。嫌われてないっぽいぞ。嫌われてないことの、なんと安心なことか。
この流れで、僕はMさんと再会を果たす。Mさんは、別の地方に単身赴任で出ていて、3年ぶりに戻ってきた。前は同じチームだったけど、今度は隣のチームの管理者になる。
Mさん、人に警戒させないタイプの人柄なんである。いつもニコニコ笑顔を絶やさず、いや、ニコニコというかニヤニヤと顔に締まりがなく、周囲への圧かけがまったくない。むしろ、圧を吸収してる感じ。いつも、直属の部下社員とか、バイトリーダーから「ちゃんとしてよ」と怒られてるぐらい。でも、怒られても、ニヤニヤと、いやヘラヘラと、ヘコヘコと謝ってマウントを取り返そうとするところがないので、チームがギスギスしないのである。こう書くと、まるで「理想の上司」っぽくはあるけど、残念ながら、仕事はできない。日常の業務もノロノロ、ダラダラと過ごし、特になんの課題も発見せず、解決せず、ただ笑って座ってる。ほとんど出世せず、同期に置いていかれても、後輩に抜かれても、あんまり気にしてない感じ。あれ、「雨ニモマケズ」じゃないか。みんなにデクノボーと呼ばれ、褒められもせず、苦にもされず。そんなMさんに、僕もなりたいよ。
それで、僕は油断しちまったんだ。トイレに行こうと席を立ち、部屋の出口に近づいたところに、「なんとなく」立っていたMさん(今から振り返っても、何してたのかマジでわからない)を見つけたんで、ちょっとテンション高めに「あれ?」と声をかける。Mさんも僕に気づき、「あれ?」と。お互いに、ちょっとしたネタなんである。職場で、隣のチームなんだからいつか会うに決まってるのに、「こんなところで会うなんて奇遇ですね」みたいなやり取り。
その流れで、「うぇ~い」的なノリで肩にパンチをしてしまった。恥ずかしそうなMさん。「また仕事してるフリしてるんすか」「いやあ(ヘラヘラ)」「今絶対、何もしてなかったでしょ」「そんなことないすよ(ニヤニヤ)」「Mさんクラスになると、何もしないでも、仕事の方から勝手に片づいていきますからね」「そうなんですよ(ヘラヘラ)」みたいな。ぎゃははは、と笑い合う。「トイレ行くんで、ついてこないでください」とか言ってすぐに解散。
3年ぶりに会ったけど、お互い近況報告をするでもなく、若干ハイコンテクストな絡み方を交換して、仲の良さを確認、ということなんだろうけど、やっぱり振り返ってみても、だいぶ恥ずかしいよな。芝居がかってる。ネタはまあともかくとして、「肩にパンチ」はおかしいよ。そんなの、今までの人生でやったことないじゃん。Mさんがそういうのが好きで、僕が合わせてるとかでもなく、あれな、完全に周りに見せようとしてるのよ。周囲の誰も気づいてなかったとしても、俺の目はごまかせないからな。
認めたくないけど、認めなければならない。4月になってうちのチームに入ってきた若手社員のTさんに対する「ナメんなよ」という気持ち。そうやら僕にも根強くあったみたいだ。なんとかして、マウントを取りたい。間違っても説教されたくない。そんな気持ちがあったんだろう。Mさんと僕は、夜勤仲間だったわけよ。フットサル合宿にも一緒にいったし、僕の自主映画の撮影も手伝ってくれた(Mさんは、デカい車の運転に慣れてるんである)。Mさん、同世代のみんなから比べると2~3段階ぐらい出世が遅れてるけど、一応管理職の立場だからね。Tくんよ、Mさんにバイトリーダー業務を教えてたの僕だからね。これ、20年前の話だからね(Tさんからしてみれば、「知らんがな。普通にしてくださいよ」っていう話だろう)。このように、例えばTさんに、僕とMさんの仲の良さを見せびらかしたかったのだ。ああ、恥ずかしい。Mさんを手段にするなよ。Mさんを目的にしろ。
かなり苦しかったけど、自分の気持ちは認めることができた。これ、再発防止策あるのかな。すぐには思いつかない。むしろ正直に、自分の気持ちを表に出していく、とか? 「年下の部下にナメられたくないという気持ちはあります。でも、あんまりこだわっても意味ないですし、気にせず明るく過ごしたいです。そっちの方がナメられないでしょうし」と、左右の手に入れ墨するか。
でも、「うえ~い」を見せびらかす、陽キャたちの気持ちが少しわかったような気がする。あいつら、「みじめなヤツ」と思われたくなくて、ビビってるから、自分が今楽しんでることを見せびらかしたいんである。かわいいじゃないか(かわいくない)。
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