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【日記】勤務先の品質部に抗議して勝利するまでの6日間(48歳になってもHIPHOP入門㉕)

2025年2月某日 暴君を諫める忠臣の気持ち

会社で。業務上どうしても納得いかないことがあった。そのことで直属の上司よりもちょっと上の人と面談してもらって。それでも問題が解決せず、腹が立ってる。

 

それで、業務が終わり帰宅してからも、「そのこと」ばかり考えてしまって、いろんなことが手につかない。マンガを読んだり、Mリーグを見たりはできるんだけど、HIPHOPの解説動画を見るのはちょっとキツい。何かを考えようとすると、会社でのことを考えてしまう。

 

すると困ったことになるな。この日記が書けそうにない。職場であったイヤなことや、その中でのささやかな勝利、嫌いな人へのツッコミなどはこの日記によく書くんだけど、それはあくまでも「人間あるある」として、「事実に基づいたフィクション」として、会社の業務内容に触れないようにしながら書いているのであって。今回僕が腹を立てていることは業務内容そのものについてだから、なかなかまとめるのが難しい、というか。

 

まあでも、今日は何を考えようとしても「そのこと」を考えてしまうので、悔しいけど会社のことを書くか(あくまでもフィクションとして)。

 

僕の務めるコールセンターで行われている「品質チェック」のこと。オペレーターの電話応対の録音を品質部(仮称)がランダムにチェックして、結果をオペレーターの業務評価の一部とする、というようなものなんだけど。その品質チェックの「NG判定」が厳しすぎて、オペレーターたちは大変傷ついている、というのが物語の背景。

 

それで、僕の応対にも「NG」の評価がついて、納得がいかないと申し出たのが去年の11月。「納得がいかないと申し出た」だと? どういうことか。大変恥ずかしながら、「使命感」が芽生えてしまったんである。


意に沿わないダメ出しをされて不貞腐れたわけでは決してない。いや、そんな気持ちも15%ぐらいはあるかもしれないけど、ちょっと納得できなかったぐらいなら、飲み込んでしまった方が楽なわけであって(それがいいのかはともかく)。今回は、その範囲を超えていたので。「品質部の横暴をこれ以上放置しては、会社が滅んでしまう。これは、お諫めしなくてはならない……!」と「命を懸けて暴君に献策する忠臣」の気持ち、僕にもまだあったのか。

 

品質部のNG判定がいかに常軌を逸しているのかをここに書かなければ、あまりに悔しいんだけど。例えば。朝8時15分に事故受付の電話を取ったとする。現場で、警察の到着を待っていたとする。そこで、事故の時間をオペレーターが確認して、お客が「8時です」と答えたとして。ここで、オペレーターが「それは午前8時ですか?午後8時ですか?」と確認しないと、「確認不十分」としてNG判定が下されてしまう、というような。例えばそういうこと。

 

文脈上「午前」以外にあり得ないことをわざわざ聞き直すような人とは、僕は個人的にはまったく会話したくない。しかも、自動車保険の事故連絡である。事故が起きたその直後の当事者なんて、人生の中でも、相当不機嫌な状態にいるのだ。加害者でも、被害者でも、不安だし、自分や相手や周囲に腹を立ててしまいやすい精神状態。そのような気持ちの人に、「さっきというのは、午前8時ですか?午後8時ですか?」とは聞けない。7回生まれ変わっても不可能だよ。(※この判定例はあくまでもフィクションなんだけど、それに近いような「理不尽なほど重箱の隅を突くチェック」が入って、僕もウンザリしてる、というストーリーだとご理解ください)

 

去年の11月。「NG判定」を伝える僕の担当の上司に異議を表明して、面談。面談後に意見をまとめ直してメール。その後、チームのリーダーとも面談して、その内容を文章化してメール。面談内容を文書に残すのは上司の仕事のような気がするけど、まあそれはいい(暴君を諫める憂国の忠臣だから)。

 

それで今日。品質チェックのキャプテンとの面談が実現したという流れである。それで、2時間半話し合ったんだけど、僕の主張はほとんど認められず、物別れに終わったというところ。

 

僕の主張が認められないことは想定してたけど、それは「現状の品質チェックが無意味なレベルで厳しいことを本音では分かっているが、必要悪として続けざるを得ない」ぐらいの感覚なのかな、と思ってた。だけど「当然必要なことだし今後も続ける」という回答だったので驚いた。

 

ならば仕方ない。「現状の品質チェックの厳しさは常軌を逸していて、パワハラの常態化と本質的に変わらない」「評価する側という優位性を背景に、実行不可能な指示を出し、従業員の人格を否定する言葉で指導している」という「パワハラ理論」を持ち出すしかない(というか最初から僕の主張の一部だったんだけど)。つまり、品質チェックの妥当性を、品質部の人間が評価しても無意味なので、コンプラ部(仮称)にチェックしてもらうべきじゃないのか、と。まあ、これは一応認められた(パワハラの訴えを握りつぶすわけにはいかないみたいだ)。


帰宅後。やっぱり「品質部」に間違い(厳しすぎる判定)を認めさせたいという気持ちがぬぐい切れず、「面談の途中にうまく言えなかったけど、こういえばよかった」ということばかり考えてしまう。失敗したな。もっと短く面談を終えてもらって(「納得がいかないのでもう1回時間を作ってもらえませんか」など言えばおそらく認められたと思う)、会社にいるうちに反論を文章化すればよかった。そうしたらいったん忘れられたのに。

 

カンベンしてくれよ。過ちは自分で気づいてくれ。なんで僕が君たちの過ちに気づいてやらなくちゃならんのだ。それを君たちでも分かる言葉にまとめてやったのに、それでも頑なに過ちを認めようとしないのか。こっちはHIPHOPの解説動画を見たいんだよ、と。


でも、いよいよ何も手につかないので仕方ない。反論のポイントをメモにまとめるところまでやって、ようやく一段落。明後日が次の出勤日だから、その時まではこの話は忘れよう。文章を書くことには、「フリーズドライ」の効能がある。頭の中にあるままだと生々しい感情も、文章に書き写すといったん忘れられる、というような。出勤したら、「怒り」をリスタートすればいい、というような。


2月某日 みじめな気持ちになりやすい

昨日の続き。朝起きて、翻訳の添削業務を少しやりながら、どうも集中しきれなくて。「キーチVS」読んでも、NBAを見ても、芯を食った興味が湧いてこない、というか。やっぱり、会社のことで腹が立ってるんである。

 

おいおい、休日に会社のことを考えるなんて、なんたる屈辱か。でも、しょうがない。「ああ、これはできること全部やらないと僕の気が収まらないだろうな」と自分に認めてしまった。

 

それで。とりあえず「味方」を増やそうと考えた。幸い、僕は在籍25年の最古参バイトなので、知り合いはたくさんいる。夜勤時代の仲間で正社員になった後輩たちは、みんなそれなりのポジションについているのだ。その中から誰に連絡取ったら、僕の「怒り」を理解してもらえるか考えた。

 

いや、「それなりのポジションについている」って言うのも、ちゃんと把握してない(嫉妬が苦しくて、無意識に避けていたんだろう)。誰が誰に指示できる指揮系統なのかよく知らない。それに、「知り合いはたくさんいる」って言っても、そもそもほとんど連絡先知らないじゃん、ってなったんだけど。あれ、やっぱ夜勤時代の仲間を頼るのはやめるか。なんか、仕事のことでムキになってるの、イタいしな… と思いかけたところで、麻雀仲間のⅮくんのことを思い出した。ああそうだ。麻雀の待ち合わせ用に、LINEグループがあったはず。

 

Dくんは地頭がよくて、周りがよく見えてる。職場のあれこれに固執することはないけど、人間観察は得意なタイプ。相談相手としては適任だろう。LINEして、1時間ぐらいしたら返事が来て。「相談があるので通話で話せる? 都合のいい時間教えて」と送ったらすぐ電話がかかってきた。

 

「どうしました? 麻雀?」
「いや、マジ悪いんだけど仕事の相談」
「ウケる」
「Dさ、今会社のどこにいるの?」
「えっと、○○部から関連会社に出向中です」
「あ、そうなんだ。じゃあ、仕事中にオレとの面談組むのムズいよね。時給出ないのに仕事の話するのダルいんだけど」
「ハハ、面談する権限はちょっとないですね」
「じゃあ今3分ぐらい相談していい? 仕事中?」
「はい、仕事中ですけど全然いくらでも大丈夫です」
「品質チェックが厳しすぎる問題、知ってる?」
「知ってます。有名です」
「(有名なのかよ)俺ですら我慢の限界を突破してるレベルで。誰も納得してないから、品質向上の効果ゼロで、モチベーション低下の効果無限大でしょ。直した方がいいと思うんだけど」
「ですよね。賛成です」
「(賛成なのかよ)で、一応正攻法というか、直属の上司に申し入れて、品質チェックのキャプテンとは話したんだけど、あんまり効果なくて」
「ああ」
「まあ今まで仕事でやってきてる部署に直接言っても、間違ってました、と素直に認められないじゃん。誰に相談したら状況が好転するか教えてくれない?」
「ああ、なるほど。それだったら品質部を統括する企画部(仮称)の話が分かる人がいいんじゃないですか。GさんかHさんですかね」
「わかった。GさんかHさんと話すにはどうしたらいい?」
「いや、正攻法のままでいいと思いますよ。直属の上司通じて申し入れるので全然通じますよ。出向中だから僕は直接は関われない立場ですけど、一言伝えておきます」
「わかったありがとう」

 

みたいな(一応その後、交渉の経緯と現在位置を伝えて通話終了)。おいおい、昨日2時間半かかって何も通じなかった主張が、2分で通じたじゃないか。通話が終わってから、ちょっと笑っちゃったよ。「誰にも理解されない真実のために闘う」というヒロイズムだったはずが、「心理的にはめんどいけど、やり方知ってたら普通に片づくはずの手続き」だったのか。確定申告かよ。

 

ちょっと拍子抜けしちゃったけど、まあ「安心」の方が強かったか。とりあえず、「僕の感覚の方が間違ってるのか」と悩まずに済みそう。

 

「話を短めに終わらせよう」と、意識していたのがよかったのかもしれない。あんまり長い話をして、Dくんの時間を奪うのも悪いし、何より、信用してる後輩から「イタいヤツ」と思われたくなかった。短く話を終わらせるために、「本来どうあるべきかはさておき、現状の費用対効果は最悪」という合意しやすい部分だけ話したのね。そう思うと、昨日の僕は私怨で冷静さを欠いていたのかも。品質チェックを見直すことの損得よりも、「間違いを認めさせる」ことにこだわり過ぎていたのかもしれない。

 

ようやく気持ちが落ち着いたので、「キーチVS」の続きを読み始める。奇しくも、「自分が納得できないことは絶対に何があっても金輪際納得しない主人公」が、「自分ができることは全部やり、それを周囲にも強く求める」というようなマンガで。

 

いやあ、キーチよ。僕は、「できること全部やらないと僕の気が収まらない」と思ったのに、1本電話しただけでなんか満足しちゃったよ。笑っちゃうよな。そう思ってたら、なんかみじめになっちゃって(みじめな気持ちになりやすい)。それで、やっぱりもうちょっと「味方」を増やそう、と思い直した。「巨悪を倒す」ではなくていい。「めんどいタスクが目の前にあるからそれを片づける」というタイプのヒロイズムだってある。

 

夜勤時代の仲間の、結婚式2次会に誘われた時のLINEグループが残ってたことを見つけて、その中からWくんに連絡することにした。バンドマンだったWくんに頼まれて、彼のバンドのMVを監督したことがある(自慢なんだけど、自慢に思うとイタいのでどちらかと言うと「黒歴史」かな)。とにかく、僕のことを好きな奴に連絡するのが分かりやすくていいや。多少はみじめな気持ちになりにくいでしょ。

 

Wくんには、「知り合って20年以上経つけど、今まで僕が会社のことで相談したことないよね。それほどのことだと思って聞いてほしいんだけど」と切り出して。Dくんに話したことと同じ話をして、やっぱり同じように賛成してくれて。

 

「企画部(仮称)のGさんかHさんに話すのが一番上手く進みそうですね」と。
「ああ、それDも言ってた。じゃあさ、GさんかHさんに協力を仰ぐとして。どういうルートで伝えるのが効果的? 僕の言ってることを、感情的な不平じゃなくて、耳を傾けるに足る諫言だってわかってもらうために、何をしたらいい?」と聞いたら。
「それは、この電話で十分です。僕も動きます」と。

 

おいおい、Wくんよ。カッコいいじゃないか。僕も言ってみたいよ。「キーマン? それは、僕ですね」かよ。

 

この電話が終わった時に、まず最初に感じたことを告白しておかなくちゃいけない。それは、シンプルに「品質チェックキャプテンよ、ザマアないな。震えて眠れよ」という醜い感情で。まあ要するに単なる私怨なのだ。「品質チェックだかなんだか知らないが、オレのことを評価しやがって」と、シンプルにムカついてることを自分でも認めて、笑っちゃったよ。


そしてやはり訪れる圧倒的な虚しさ。「オレの後輩、アンタより上にいるよ?」って、さっき一瞬自慢に思ったけど、アホか。そんなに悔しいことはない。「本当だったら、Wくんより僕の方が上にいてもおかしくなかった」って話でしょ。そう思わずにいられる48歳、この世にいますか?

 

まあでも、休日にしては上々の戦果でしょう。たとえ虚しさにしか着地しないとしても、もう「納得できないことがあっても、めんどくさいから納得したことにする」という選択肢は捨てちゃったので、やるしかないのである。みじめでも、片付けなくちゃいけないタスクはある。


2月某日 ビル風が身にしみる帰り道

出社して。うわさ好きのBさんから、「おとといの面談、何か成果はありましたか?」と心配そうに聞かれる。面談に抜ける前に簡単に事情は話したけど、結果については話してなかった(終業時間ギリギリまで面談してたので)。そうか。2時間半も現場を抜けたんだから、「ただごとじゃない」って誰でも気づくよな(電話オペレーターが電話の前に座らずに現場を抜けることなんてほぼあり得ない。健康診断よりも長い離席)。

 

「いや、具体的な成果はゼロでした。まあでも、僕を本気にさせたという意味ではそれが成果だったと思います」と答える。我ながらイタすぎるセリフだが、本当のことなんだからしょうがない。

 

それで、チームのメンバーにも、僕の陳情メールを読んでもらうことにした。面談で長時間抜けた(いままで3回抜けた)し、今後もありそう。ならば、その間の業務負担が増える同僚に、理由をシェアするのはそんなにイタくないだろう。

 

メールを書くのに使ったメモファイルをプリントアウトして、順番に読んでもらった。すると、絶賛の嵐。「私が言いたかったことがここに書いてある」「感動しました。聖書を読む気持ちで読みました」とか。それで気を良くしたのはやっぱりイタいな(もう、自分がイタいかイタくないかしか興味がなくなってるのかよ)。

 

電話対応の合間を縫って、おとといの品質部キャプテンとの面談について、反論メールを作っていく。昨日DくんとWくんに連絡して、「スタッフが納得してない基準でチェックしても逆効果。コスパ悪すぎ」という観点では同意を得たけど、それは序の口であって。「オレのこと評価しやがって」という恨みを晴らさないことには、品質チェックが多少マシになろうが勝利とは言えない。

 

なんとかメールの下書きを書き終えたタイミングで終業時間。でも「推敲」まではできなかった(隙のある原稿を作りたくないんである。字幕の添削でギャラもらってるんだ。意地があるでしょ)。それで、「お礼」だけ先にメールしておくにとどめた。

 

「先日は面談ありがとうございます。何度も同じ話を繰り返したにも関わらず、最後まで聞いていただいて感激しました。納得するまで説明する、という品質部の意思を信じます。引き続き、よろしくお願いします」みたいな。要するに、「納得するまでこの話終わらせないですからね」という意志表示としてのお礼メール。できることは全部する覚悟だ。送信して終業。

 

帰り道。わざと遠回りして歩きながら、「ひょっとして、今からでも正社員登用に応募した方がいいのでは…」と思い浮かんで。だって、僕がいくら活躍したとて、もう時給は上がらないんだ。これほど虚しいことはない。それならばいっそ頭を下げて、今からでも正社員に挑戦した方が、前向きに働けるんじゃないか。考えれば考えるほど、それがいいんじゃないかと思えてきて、ちょっとパニックになった。

 

20代の頃は演劇、30代は翻訳の勉強、40代は主夫業を優先して、パートタイムの非正規雇用のまま働いてきた。その間、正社員になった後輩たちは、もうずいぶん出世してるんである。今さら、彼らの下の序列になるなんて、そんなこと我慢できるんだろうか。イタすぎる。いや、こんなこと考えてウジウジしてることの方がイタすぎる… などと。ビル風が身にしみる帰り道。

 

2月某日 スーパーボウルとコークハイと私

早朝から添削仕事をテキパキと。いつもならダラダラやるのに、さすがに今日はテキパキ片づけなくてはならない。NFLスーパーボウルを観戦するのだ。

 

子どもたちに朝食を出し、6分添削、皿を洗い、6分添削、子どもたちを見送りながらゴミ出し、6分添削。家事と添削のミルフィーユ。平凡ながら充実した甘みでしょ。妻を見送る頃には、家事も添削も片付いていて。思わず妻に「今日の分の添削仕事終わったから、スーパーボウル見ながら酒が飲めるわ」と自慢して。(月曜朝の出勤時に、家に残る配偶者から飲酒宣言なんてされたくないだろう。スマン、妻よ。コソコソできない飲酒だってある)

 

キックオフまで時間が余ったので、妻を見送りつつ、自販機にコーラを買いに行く。大変恥ずかしながら、ウィスキーのコーラ割りが好きなんである。ウィスキーの豊潤な香りをコーラの甘さで台なしにして、コーラの爽快さをウィスキーのコクで台なしにして、「安易に酔える」だけに変換する最強の飲み物、コークハイ。スーパーボウルのミーハー観戦には最適でしょ。

 

さて。スーパーボウル見ながらも、僕は「品質チェックを潰すために、できる限りのことをする」という先日からの使命感はフツフツと煮えたままなんであって。辛抱できず、PC画面の右端にメモパッドを開いてしまう。他のスタッフにも抗議を呼びかける「檄文」を作るのだ。

 

なんだそりゃ。ちょっと前まで、「時給が出るわけでもないし、時給が上がるわけでもないのに休日に会社のことを考えるのは屈辱」と思ってたのに、スーパーボウル見ながら、コークハイ飲みながら、会社のために作文をしてるなんて。認めたくないけど、告白しよう。楽しいんである。「怒り」をデトックスしてる感じ。どうせほっといても会社のことを考えてしまうのであれば、むしろ積極的に考えをまとめてしまおう。上層部に味方を作れそうな状況だけど、それだって確実じゃない。今のうちに次の手を仕込んでおかなくては。

 

たまらず、デスクトップにLINEも開く。夜勤のリーダー格のMさんを味方につけよう。夜勤はいまだに「昭和の体育会系」のノリが(薄まってはいるものの確かに)残っていて、先輩後輩の「タテ」にうるさいのだ。OBの僕から、現役の部長を通じて呼びかけてもらえば、夜勤のスタッフ全体が味方になってくれるだろう。

 

いきなり「檄文」を送り付けられても戸惑うだろうし、とりあえず「いざとなったら味方になってくれること」を確認したいだけなので、短めのやり取りで終わらせよう。Mさんも夜勤明けでこれから寝るところかもしれない。

 

そうしたら、これが意外にも短いやり取りで終わらなくて。Mさん、「確かに品質チェックを嫌ってるスタッフは夜勤にも多い。でもチェックである以上、ある程度の緊張感は必要」という立場だったのである。それで僕から、「NG判定の厳しさが常軌を逸してるのは、品質維持を大義名分にした単なる”いじめ”じゃないですか」と始めて、意見交換のラリーをした。

 

これは、なかなか悪くない議論だったと思う。お互い嫌いあっておらず、利害も対立してない同士なので、無駄にアツくならずに済む。敵味方に分かれて相手を言い負かそうとするだけが議論じゃない。別の観点から検討を重ねて、論理を洗練させていくことだってできる。

 

「警察官が拳銃を所持していることは必要だとしても、それを善良な市民相手に見せびらかしたり、ましてや威嚇射撃をするようなことがあればそれは適切ではない。権力者(ここでは品質部)の方が強いからこそ、権力の行使(品質チェックでのNG判定)の妥当性こそ厳しく問われるべき」みたいなことを伝えたりして。

 

どんな状況だよ。スーパーボウル見ながら、仕事の話を真剣にするなよ。コークハイ飲みながら、会社の現状を憂いてるんじゃないよ。


おかげで、ケンドリック・ラマーのハーフタイムショーも「ながら見」になっちゃったよ。…あれは、どうだったんだ? 「不完全燃焼」に見えたけど… まさか、ケンドリックに限って、そんなはずがない… 僕のリテラシーが足りないからやや退屈に見えてしまうだけだよな… まあおそらく、「最もアメリカらしさが求められる舞台で、それをやらずに視聴者を挑発した」っていうことなんだろうけど。でも少なくとも「前提知識ゼロの視聴者が見ても理屈抜きで分かる狂気じみたバイブス」ではなかったような… (ケンドリック・ラマーのパフォーマンスを、退屈だと言ってしまう勇気は僕にはない。そんなこと言ったらバカにされるに決まってるでしょ。でも…)

 

そして、スーパーボウルは後半に突入。これが、僕のNFL観戦歴の中で「最も残酷」なワンサイドゲームだったのである。イーグルスの守備陣が、チーフスQBのマホームズをいじめ抜いた。おそらく、チーフスのファンは1プレーたりともガッツポーズをしなかったのではないか(勝負が決まったに等しい大差がついてから取ったタッチダウンではガッツポーズできない)。


僕とMさんの議論はとりあえず「危機感は共有できました」というところまで進んで終了。(結局「檄文」は送らずに済ませた。「今後の展開で署名とか必要になったら協力してほしいけど、とくに今すぐにはしてほしいことはないです」みたいな。なんだそりゃ)


一応スーパーボウルを最後まで見届けて、大きくため息。自分に対して、認めなくてはいけないことがある。Mさんに「味方になってくれ」と説得するの、すごく楽しかった。僕が10年以上ハマってきたNFLよりも、大好きなアーティストのショーよりも、「自分が当事者になってやるケンカ」の方がアツくなれるのか。そうなのかもしれない。驚いたな。にわかには認めがたい。


僕は、「好戦的な自分」を避けて生きてきた。勝ち負けにムキになる相手や自分を見たくなくて、自分のなかにある「負けず嫌い」な気持ちにフタをしてしまう。気が弱くて、納得できないことがあっても言い出せない。怒っていても、それを言い出せない事実と向き合いたくないから、「怒るほどのことではない」「怒っても意味はない」と自分を説得してしまう。だけど、ひょっとしたら。自分を納得させるんじゃなくて、僕を怒らせている相手(今回の場合は会社の仕組み)に、変更を迫ることだってできるんじゃないか。実際に相手が変わるかどうかは分からない。でも、最初からあきらめる必要はないじゃないか。

 

そんなことを思いながら夕飯の買い出しに。回り道しながら歩いて。また別の後輩のSくんと電話で話す。Sくんは正社員の中で一番末端というか、アルバイトスタッフに直接指導をしなくちゃいけない立場だ。「品質部の厳しすぎるNG判定」をスタッフに「会社からの評価」として伝える役目。ある意味一番ツラい役回りを演じてる。そしたら、Sくんは完全に僕と同じ見解だった。「品質チェックという暴君の狼藉をこのまま見て見ぬフリをしたら国が滅びる。お諫めしなくては。それともいっそのこと亡き者にすべき」と僕が言うと、「マジでお願いします」と。いや、おかしいだろ。君がやれよ。まあいい、乗りかかった船だ。僕がやるから見ていてくれ。

 

夕飯は麻婆豆腐。スマン、子どもたちよ。いつもより辛めになっちゃった。パンチを効かせたい夜なんすよ。

 

2月某日 ChatGPTが考えたリリックがダサすぎた件

「キーチVS」(新井英樹)、11巻まで読み終えた。面白かった。テロリストになった輝一が、あやと土壇場で”男女の関係”になる流れ、すごくよかった。あれ、「死ぬ前に好きな女を抱けてよかった」ではもちろんないよね。「もっと早くに、性の悦びを知っていたら、革命なんて考えずに済んだかもしれないのに」という運命の皮肉じゃないですか。

 

その昔、「デスノート」の映画版を見た友人が怒ってて。原作では夜神月がデスノートを拾うのは高校生の時なのに、映画版では最初から大学生だった設定が気に入らなかったそうだ。曰く、「童貞だから世直しのためにデスノート使うんだよ。リア充大学生はサークル活動してろよ」と。そうか。革命は童貞の仕事かもしれない。

 

だいぶ雑なこと言ってるのは承知の上で、「守るべき生活があったら、極端な思想にはハマりにくい」みたいなことか。でも、ありがとう、輝一。「納得いかないことは、誰が何と言おうと納得いかない」という態度、パワーをもらった。

 

昨日、ハーフタイムショーを「ながら見」してしまったのが申し訳なくなってきて、ケンドリック・ラマーの「HiiiPoWeR」を履修。ChatGPTでざっくり解説してもらってから、RapGeniusを読み、分からなければまたChatGPTに聞くっていう遊びで、若きケンドリックの重いパンチを味わっていく。

 

ちょっと余計な質問もしたりして。「この曲を真似して、日本向けに曲を作りたい。アメリカに隷属する現状を変えろとリスナーを挑発するのであれば、日本では誰の名前を挙げて挑発、啓蒙できますか?」みたいな。ChatGPTが考えた歌詞がダサくて、ちょっと安心したよ。

 

「坂本龍馬が黒船を追い返すために立ち上がったとして、君たちはどうする?」「チェ・ゲバラがこの状況を見たら、何を思うだろう?」「ドナルド・キーンに頼らずに、自分の文化を守れるか?」「吉田茂の路線から脱却する時が来た!」

 

だってさ。これは面白くなさ過ぎて、さすがに採用できないでしょ。(まあでも、質問の仕方を変えていけば、もっといいリリックが返ってくるかもしれないわけで、「安心した」っていうのも違う気もするけど)

 

2月某日 完結編:あっけない全面勝訴

会社に着いて、さっそく直属の上司からのチャットを確認。企画部(仮称)のGさんが面談してくれるという。そして、現場のフロアリーダーTさんも立ちあってくれると。あわてて3日前につくったメールを送る。「しっかり推敲して、隙のない文章にしてから」と思っていたけど、これは面談前に目を通しておいてもらった方が効果が高そう。(文章の完成度よりも、タイミングが重要なので、多少の論理の粗さには目をつぶろうと思って読み返したら、あんまり直すところなかったけど)

 

それで、この面談。びっくりするぐらい、あっけなく、「全面勝訴」なんである。おそらく僕との面談の前に話は終わっていて。現場のトップから、裏方のトップに申し入れがあり、現状の品質チェックの体制をゼロベースでの見直すことが決まったと、僕の前で約束する形で。

 

僕の陳情メールも、「ハッとさせられた部分が非常に多かった。問題を認識していたつもりだったが、解像度が足りなかった」と妥当かつ必要な意見だったと認められた。

 

こっちとしてはやや呆気に取られてしまって。もちろん、「正攻法」での陳情の内容に説得力があってのことなんだろうけど、裏から根回しして、正しいところに話を持ち込めばこんなにあっさりと話が進むのかよ。必要なのは論理の正しさじゃなくて権力なのか。

 

訴えが認められなかった場合に言いたいことばかり考えていたので、認められたとなると、その場で言葉が出てこなくてウケたよな。まあでも何とか、「見直しの約束を早めにスタッフ全体に開示して信頼回復に努めるべき」「ミスや苦情が起きた時に、スタッフの資質が責められるカルチャーを反省するきっかけにしてほしい」などを伝えて。30分で面談終了。

 

さて、この件について書くのはここでおしまいにする。終わってみれば、虚しさでいっぱいだよ。抱える腫瘍にメスを入れる決断を会社に迫った、僕の陳情メール。その指摘のあまりの正確さのおかげで、会社はいくつものミーティングを省略できたわけでしょ。すごい貢献じゃないか。それでも、それなのに、僕の時給が上がることはないんだ。

 

でも、経験としては面白かった。僕の動きの源になったのは、「オレの仕事をアホがジャッジしやがって」という私怨であることは間違いないんだけど、その恨みを燃料にして動くのは、正直言って気分がよかった。軽い興奮状態で、頭が冴えてくるのを久しぶりに味わった感じ。

 

そして、動機は「個人的な恨み」であっても、それを公共性の高いもの(会社全体の利益に関係があるもの)として整理する冷静さを保てたのは自信になったな。

 

「怒り」に自分をコントロールさせるのがイヤすぎて、「怒ってない」「怒るほどのことではない」と、感情にフタをするクセがつきすぎてたかもしれない。だけど、「怒ってもしょうがない」を内面化すること、見て見ぬフリを続けることで、結局は「コアにある怒り」から自由になれていなかった気がする。でも今回、「怒ってる」ことを自分で認めつつも、冷静さを両立させることができた気がする。「この怒りには意味があり、認められるべきだ」と主張できたのは、自分のためにもナイスプレーだった気がする。

 

これが僕なりのHIPHOPでしょ(相変わらずイタすぎる。でもうれしかったんだからしょうがない)。

 

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