2021年、コロナ禍の小学校に1年間密着したドキュメンタリー。英題の「The Making of a Japanese」を思うとテーマが分かりやすいか。いかにして"1人の日本人”が作られるか。1年生が、給食当番や掃除当番を覚えていく様子など、小学校の日常が切り取られている。その光景は、美しく、優しく、そして少しグロテスクだ(時間内に給食を食べる様子など、「模範囚ばかりの子ども刑務所」という不条理演劇を見てるのかと錯覚してしまう)。
映画中盤で、大学教授の講演が挿入される(教員向けの勉強会の一幕かな?)。「日本人らしさを身につけさせる教育の功罪」みたいな内容で。「連帯責任を強調するような方法(グループ全員が宿題忘れなかったらご褒美、というような)は諸刃の剣。特定のタスクを果たせない個人を、責める気持ちも育ててしまう。はたしてそれがいいのかどうか」と。これで映画の輪郭はよりクッキリとしてくる。
子どもたち全員に、「みんなと同じこと」を、「みんなと同じやり方」でできるように教えていくこと。そして、ただやるだけじゃなく、「みんなと同じようにやりたい」と自分から望むように導くところまでを含めて、教育として求められている小学校の現場。(そう考えると、小学校の先生ってものすごく大変だな。めちゃくちゃ難しいミッションを背負わされて、しかも、そのことの是非まで問われているのか…)
その意味で印象的だったのは、6年生の卒業式の練習のシーン。卒業証書を受け取るまでの流れを伝えるために、先生がお手本を演じるんだけど。名前を呼ばれた時の先生の「はい!」という返事の気合に、6年生から笑い声が漏れる。それで、お手本役の先生、「人が真剣にやってることを笑うとは何ごとか。俺、魂を込めて返事したんだよ。どんな心を込めて返事をするのか、それが卒業式の意味なんじゃないのか」と熱血指導をぶちかます(一人称が「俺」なのもよかった)。
僕はその先生の熱血ぶりに感動する。やや芝居がかってはいるものの、「卒業式」と、子どもたちに真剣に向き合ってるからこそ出てくる「ホンモノ」の言葉だと思った。こんな風に叱られたら、心に響く子どもも多いことだろう。だけどその一方で、「人の内面まで教育しようとするのは無理だよ。返事にどんな心を込めるかどうかは、誰にも立ち入れない領域じゃないか」と冷めた気持ちもあったりして。
この「感動」と「違和感」の絶妙に居心地の悪いハーモニー。「”日本人”を作る場所としての小学校という奇妙な営み」というフレームを映画が用意しているからこその味わいと言うべきか。なかなかクセになる。
まあでも、映画が用意した「泣きどころ」は、たぶんだいたい泣いたと思うよ。もらい泣きしやすいので。「必ずしも美談とは言えない」という眼差しを映画が用意してくれているので、その分構えずに済んだのかも。アートにもドラマにも寄せすぎず、かと言って薄味でもない。子どもたちの成長や、先生たちの苦労を、素直に見つめることができた。
(※映画館で見て、メモを取ったわけではないので、先生のセリフなどは正確な引用ではありません)
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