生きとるわ:又吉直樹著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
久しぶりの又吉さんの小説。これまで芸人さんが書いた小説ってことを意識して読んできたけど、さすがにここまで読まされちゃうと、改めて又吉さんは作家なんだなぁ~って感じました。「火花」から「生きとるわ」まで、根底に流れているものに共通するものを感じますが、なんというか、文章をこねくり回す感じが、今回グッと上がったような気がしました。10年という歳月、着々と腕を上げたことが窺えます。とにかく文章をこねて、こねて、こねくり回している職人・又吉が直樹が見えてくる感じがしました(笑)
ということで、読むのも時間がかかりました。先を知りたくてページをめくっているのになかなか進まない。なんでかな~。今考えると、結構しんどい内容だったからかなぁと。でも、笑える部分なんかも結構あったりして、「くふっ」と思わず小さな笑いがこぼれてしまう。面白いけど進まないジレンマ。
話は高校の友達にお金を貸した(かなりの高額)ことにより、その後の人生が狂ってしまう公認会計士の岡田とその仲間たちの話。とにかく借金を重ねる横井という男のウソがエグすぎてイライラさせられるのだけど、騙されていると分かりながらも、お金を貸し続ける岡田にもイライラさせられる。横井の借金は岡田だけではなく、他の友人も同じく被害を受けている。
なんでだろう?なんでこんな奴のために大金を用意しちゃうんだろう?横井って奴は、本当のところなにかあるのではないか?横井の親ですら彼を信じている様子。これだけ人をを自由に動かしてしまうのは天性のものなのか。特に岡田はすでに家庭崩壊、離婚までして人生が狂ってしまっているというのに、それでもまだ横井を憎んでいる感じがしないのである。
推理小説でもスリラーでもないんだけど、読んでいるときはそんな感覚でした。「なぜ?」「横井はどこにいる?」「その話は本当?」「この人は信じられる?」と疑問が疑問を呼ぶ感じ、どうなるのか、ちょっと怖い感じも常にあったなぁ。もう本当猜疑心いっぱいの気持ちで読んでいました。唯一、岡田の別れた奥さんだけが気の毒だったけどまともだったな。
どこをとっても痛い話ではあるんだけど、関西弁トークだからか、真面目なシーンもマイルドな雰囲気になっている。岡田と奥さんの掛け合いなど、まさに芸人ムードが満載でした。
読み終わると友達付き合いってなんだろう?なんてことを考えてしまった。「友情」なんて麗しい言葉もあるけれども、もっと互いにドロッとした感情を裡に秘めていたり、憎らしいなど負の感情がたくさんある友情、離れられない関係ってのも案外ありそう。いろんな複雑なことがあっても、一緒にいる、離れられないという関係ってなんだろうなって。男女間ではありそうな話だけど、岡田たちみたいに仲間うちでもこういうことがあり得るということ。なんか説明しきれないものがそこに横たわっている。
タイトルもいいですね。読み終えるとタイトルごと笑えます。横井のお父さんに関しても「生きとるわ」って思わずつぶやいてしまったわけで(笑)いや、、みんな生きとるわ。情けなくて哀しいほど生きとるわ。
王様のブランチでこの本について又吉さんが語っています。その記事はこちらです。
