眠れない夜のために:千早茜著のレビューです。

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感想・あらすじ
毎日寝る前のほんのひと時に読むのにちょうどいい短編集です。長くなく、くどくなく、サクッと夢の世界に入れるような雰囲気です。千早さんの初期作品の「おとぎのかけら」という作品が好きで、そこからずっと読み続けて来てるんですけど、本作はそんな私の勝手な千早さんのイメージとかなり一致した作品でした。
また、とても美しいイラストが千早さんの文章を引き立て、読者を深い夜に誘う。
ちょっと風変わりだったのは、犬が主人公だった「夜の王」。

家族が寝静まったあと、のびのびと夜の世界を謳歌する「俺様」的な犬の様子がなんとも楽しくて、一緒にわくわくしちゃいました。この犬、家の中だけでなく、夜の町にも飛び出していくのです。
一通り散歩して家に帰って行くのですが、帰る理由がなんとも格好いいではないか!.....一目散に家に戻っていく犬の後姿を想像すると思わずクスリと笑ってしまう。けどね、翌朝家族が起きた時の反応をも想像しちゃうと、情けない顔の彼の表情も浮かんでしまい、これまた笑ってしまうのだ。
「水のいきもの」は、まさに眠れなくて、夜の深い時間に外に飛び出した女性の話。これがちょっとドキドキハラハラの展開。そもそもそんな時間に歩くこと自体怖いのに~。そして、彼女が出会ったものは....?現実的な世界から幻想的な世界へと引きこまれるような感覚を持つストーリーに釘付けでした。絵も素敵~★
夜中を描いた小説が大好きなのですが、この本も深々とした夜の森へと入っていく感じがたまりません。おとなの絵本のような雰囲気も良いんだなぁ。最近、本を開くとすぐ眠くなっちゃうから、こういうサクッと読める本はありがたい(笑)
千早茜プロフィール
1979(昭和54)年、北海道生れ。立命館大学卒業。2008(平成20)年、『魚神(いおがみ)』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2009年、同作にて泉鏡花文学賞、2013年『あとかた』で島清恋愛文学賞、2021(令和3)年、『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞、2023年『しろがねの葉』で直木賞を受賞。ほかの作品に『グリフィスの傷』『雷と走る』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)
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