珠玉の短編:山田詠美著のレビューです。
- 作者: 山田詠美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/22
- メディア: 単行本
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感想:またひとつ突き抜けた感の変化が見られた短編!
短編集です。
ただし、「珠玉の短編」というのは本書内の一作品のタイトルでありこの本自体が珠玉の短編を集めたものなのかはまた別の話かな。
山田詠美氏はデビュー作から追っていますが、本書を読みながらなんだかとっても長い年月、この作家とお付き合いしてきたものだな・・・と、感じずにはいられませんでした。わたしも若かったころ、エイミーの甘い恋愛小説に随分うつつを抜かしていたような気がします。
そんな時期を経て、ニューヨークやパリやベースを舞台にした小説に自分を重ね合わせ、ようやく辿り着いたのが今の小説。
前置きが長くなりましたが、本書を読んでいるとこれまでの作風の生い立ちのようなものを辿りたくなった。微妙な変化や昔と変わらない部分が交差し、これまでと違った緊張感が自分のなかにありました。
「言葉」への(ひつこいほどの)こだわり、歪んだ性愛、そしてエイミーのおちゃらけ等々、なんらこれまでと変わりはないのだけれども、感覚としてはまたひとつなにか突き抜けた変化のようなものが・・・そんな気配を感じました。と、抽象的なことしか言えないのですが・・・。
そうそう、前作「賢者の愛」で谷崎潤一郎に挑んだエイミー。本作の「箱入り娘」はどこか谷崎氏の「少年」の世界観に似ているものを感じました。
「箱入り娘になった気分はどうだ!」
「はい、とってもとっても幸せです」
この操られ感!ふたりの少女が徐々に怪しい世界にハマってゆく様は谷崎氏の少年少女に感じたあの邪悪で淫靡な感じそのもの。しかもこの作品のオチはかなりゾワゾワさせられます。
今回は短編ということで好みのものと、ちょっと解りにくいなというもの2パターンありました。短編だから気軽に読めそうではあるけれども少し曲者(笑)特に山田詠美初読の方には非常に入りにくいものもあると思います。とにもかくにも、また一段突き抜けたエイミーの長編が早く読みたいのである。
願わくは、さらに成熟した身も心もとろけるようなビター&スイーツな恋愛小説などを再び(笑)