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【レビュー・あらすじ・感想】沖で待つ:絲山秋子

 

 

沖で待つ:絲山秋子著のレビューです。

 

感想・あらすじ

パンチが効いている文章に惹き込まれ、休む間も与えられませんでした

 

大事に読もうと密かに積んでおいたこの本。視界に入り1ページだけ読んだが最後。
結局、最後まで読み通してしまいました。

 

それもこれも1編目の「勤労感謝の日」の登場人物の女性があまりにも痛快で、たった数ページでなんかこの人と友達になれるって思ってしまいグイグイ惹き込まれてしまいました。

 

理不尽なことで会社を退職した30代の独身女性が、お見合いをすることになる。
やって来た男性は仕事好き人間。スナックのロゴが貼り付けてあるピンクの百円ライターをお見合いの場で使うような、女子なら誰でも顔を背けたくなるような無神経な男。その男との会話のやり取りで、この女性が心の中で毒づく言葉の数々が、恐ろしいほど的確で面白い。

 

例えばこの男の顔を「あんパンの真ん中をグーで殴ったような顔」と表現している。ぷっ。

 

 

絲山さんって主婦といい、独身女性といい、女性たちの持つ細かい心理、特に黒い部分をなんでこんなにもバシッとカラッと表現してくるのだろう。そしてどんなに毒っけがあっても、不思議と厭な感じは残らない。そこがたまらない魅力、私がハマった部分ともいえます。

 

さてこのお見合いの行方は…。

お見合い現場をあとにした彼女の行動なんかも妙にリアル。見合いの報告を女友達にするシーンでの女子同士の会話もなかなかの臨場感です。

 

そうこうしているうちに、読み終わってしまう…あぁ、もっとこの話読んでいたい…。
で、勢いに乗り、表題作も読んでみる。

 

同期入社の男女の友情を扱った作品。地方勤務になるこの二人。右も左も解らなかった状況から成長して行く過程とともに、静かに友情をあたためていく。

 

同期の結束って結構固いとか、常に気にかけている存在とか、そんな彼らの様子は、若き日を思い出さずにはいられない会社ライフが再現されている。会社という枠の中での友情は、学生時代のそれとまた違った親密感があって、かなり頷きながら読める。

 

 

ところで、みなさんは自分が死んだあと誰にも見られたくないものってありますか?日記なり手帳なりあると思うのですが、PCもその一つという方も案外多いのではないかと思います。

 

この話では「もし自分が死んだらPCのハードディスクを壊す」ことを共に約束する。
妻でも恋人でもなく、同僚に頼むという面白い設定です。こちらの話はツンと来るしっとりとした良い話でした。

 

本書は芥川賞受賞作品とのこと。私、ノーマークでした。文庫本の方にはもう1作短編が入っているようですが、私が読んだ文藝春秋の単行本は以上の2つの短編のみです。

 

ということで、すぐに読み終えてしまい「ああ、読んでしまった」と妙な脱力感と何故か罪悪感。ダイエット中に甘いものをこっそり食べてしまった後のあの罪悪感です。

 

でも、このくらいの量でスパッと読み切れる感じもまた清々しいんですけどね。
中毒発作予防のため、買い置きしている「絲山作品」…また補充しておかないとっ!

 




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