アニバーサリー :窪美澄著のレビューです。
- 作者: 窪美澄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/03
- メディア: 単行本
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感想:現代社会の問題を作品に投入しメスを入れる感じがズシリと。
一度読み始めたら止まりませんでした。いやぁ…窪さんって、現代社会で苦しんでいる人々の現実的な問題をかなりリアルに突っ込んで書ける作家さんなんだなぁ…とまず読後に思いました。
この話の導入は、震災が起きた日、75歳で水泳のマタニティークラスの講師をしている晶子の視点になって話が進んで行きます。
話はこの震災の夜と、晶子の若かりしころの話と場面を切り替えながら進むと言う面白い構成。戦前、戦中、戦後の新婚生活を通して、晶子の生涯を徐々に知って行くことになる読者。
そしてもう一人。晶子のマタニティークラスの生徒で、料理研究家の娘真菜。忙しい母親のもとで育ち、複雑な感情を抱えたまま、まさにもうすぐその本人もシングルマザーになろうというところだが…。
さて、育児の孤独を人一倍知っている晶子がこの震災の夜、真菜の家に避難する。真菜のただならぬ様子を目の前にし、その後、出産を含めあれこれ彼女の世話を焼く。戸惑いながらも徐々にそれを受け入れて行く真菜。
何故、晶子がこれほどまで、真菜に執着したのか?そして何故、晶子はこれほど高齢でありながらこの仕事を続けているのか。
本書を読むと、一人の女性の生きて来た道が、このように今に繋がって行くのかとえらく感動をする。戦前・戦後の女性達の生き方はもちろん、家族の在り方、育児、キャリア、援助交際、原発、そして人とのかかわり等、重いテーマが次々に投入されている。
どれもこれも、色々な人々がやんややんやと討論を交わしているシーンを目にするものですが、個人的にはこの話で目に触れた女性達の姿の方がズッシリ印象に残った。
晶子の生きてきた時代は、こうやってみると本当に山あり谷あり。でも、そうしながら築き上げた彼女のキャリアはとても理想的でもある。
20代で自分に適した職を選ぶのは難しい。元来、晶子のように自分のことを十分知った上で出会えた仕事は、自分も他人も幸せにできるものなんだなぁーと感じます。現実は厳しいけど人生後半はこんな風に生きられたらなぁ…そんな女性としての生き方までも見せてくれる小説でもありました。
窪さん、やはり、なにかズシリと置き土産をする作家さんだな。