犬の足あと猫のひげ: 武田花著のレビューです。
- 作者: 武田花
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/02
- メディア: 文庫
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淡々と語られる中にあるホラー性に思わずのけ反った!
気持ちが煤けてくると読みたくなる武田花さんのエッセイ。知らないどこかへ行きたくなると見たくなる武田花さんのフォト。ここ数年で出会った武田花さんの作品は、自分にとってちょっとした休憩所のようなものになっている。
というと、なんだか癒しっぽい内容だと思われそうだけれど、エッセイの中身は静かに事件性を帯びているようなものが多く、ひたひたと迫りくるダーク感がたまりません。
いつも思うのは、花さんのエッセイには「時代」がない。今なのか昔なのか?時が止まっているかのようなフォトが多いせいか、綴られている話も一体いつの出来事なのか?掴めない感じが・・・良い。
剥製・・・と言えば、武田百合子さんの「遊覧日記」を思い出すのですが、今回、花さんも剥製の話をされている。
友達のT君の家。箪笥の下に毛むくじゃらのもじゃもじゃした塊。花さんの見たものは、「うぎゃーーーー」なものなのですが、そこからのT君と花さんの淡々としたやり取りがもうホラー(笑)しかも、その時にT君からもらったモノが剥製だったりする。その剥製がまた・・・。
T君、相当な変人です。心臓がバクバクしましたが、な、なんと、このT君、「剥製騒動」というタイトルでエッセイ中盤にて再び登場!
もう強烈!電車のなかで思わず「ぐわーー」とのけぞってしまった(笑)最後の一行まで、このT君の変人ぶりが隈なく語られている。
本書はこのT君の話があまりにも強くて、他のエッセイがすっかり霞んでしまったが、
後半の海沿いを中心とした話の数々で通常モードへと。いい感じに中和されました。
天気のいい日に訪れたい場所があるように天気のいい日に読みたい本がある。花さんのエッセイは、冬空が青くて高い日にのんびり読むのが一番いい。