ワーニカ :アントンチェーホフ著のレビューです。
- 作者:アントン チェーホフ
- メディア: 単行本
少年の悲痛な叫びは届いたのか?
もしこのはなしを最後まで読んだのなら、
読者はかならずこのあとどうなったんだろう・・・
と、考えずにはいられないと思う。
チェーホフを読み重ねてゆくと、
この作家の投げかけてくるさりげない問いかけに
数日間悩むことが少なくないことに気づく。
否、チェーホフは決して意図して
読者に問いかけているわけではないのかもしれないけれど、
わたしはしばらく考えてしまうことが多い。
ワーニカは9歳の少年。
三か月前に、靴職人の親方のところへ見習い奉公に出された子供です。
ここでの生活は辛く耐えがたいもので、ワーニカは親方一家が
留守の晩を見計らい故郷の大好きなおじいちゃんへ手紙を書くのです。
手紙を書きながらおじいちゃんの姿や故郷の風景を思い浮かべ、
今の生活の辛さを綴り、迎えに来てほしいと訴える。
おじいちゃん、おねがい、ほんとうにおねがい。
神さまにずっとおいのりします、ボクをここからつれ出して、
じゃないとしんじゃう・・・・
やっと書き上げた手紙。
宛て先は「村のぼくのおじいちゃんへ」
そして「コンスタンチン・マカールィチへ」と書き足す。
彼はそれを握りしめ一目散にポストへ向かい投函する。
奉公に耐えかねた少年が「帰りたい」とおじいちゃんに手紙を書く話。
ただそれだけの話なのに、故郷の風景やおじいちゃんのことを、
知れば知るほどせつなくなってしまう。
ワーニカが希望を抱き、甘い気分に酔いしれながら投函した手紙。
頼りない宛先が書かれた手紙の行方は知る由もない。
なんともキリキリした思いに駆られます。
さて、数日後に巻末の訳者のあとがきを読んでみた。
そこに書かれていたことにハッとさせられる。
チェーホフが我々に何を伝えたかったのか?
数日彷徨い続けていたこの疑問を訳者さんの言葉から掴めた気がしたのです。