スナックちどり :よしもとばなな著のレビューです。
- 作者:よしもとばなな
- 発売日: 2016/05/27
- メディア: Kindle版
タイトルからちょっと場末の演歌が聞えてきそうなお話かと思いきや、舞台はイギリスの小さな田舎町でした。
いとこ同士の女性ふたりが、イギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かけるといった内容なのですが、よくもこんなに「ふたりぼっち」の孤独を感じさせられる雰囲気が出せたものだというくらいとても静かで孤独で…。
気持ちがしんしんとして来て、でもこんな旅こそが、この二人にはぴったりなのです。
ちどりは幼い頃に両親が離婚してしまい、スナックを営んでいる祖父母に育てられてきた。しかし、その祖母が亡くなってしまい、本当に一人になってしまったという淋しさの中にいる。
一方「私」は、離婚をしたばかり。まだ気持ちの整理も出来てなくて、元夫を思い出しては、孤独の闇に落ちてしまう日々。
ふたりはこの孤独を抱えたままイギリス西の最果てペンザンスに滞在する。そこで、過去のあれこれを振り返りながら、思い切り「孤独や淋しさ」とともに過ごします。
後半、えっ?とドキドキするシーンがあったのですが…。
すごく意外なシーンなのに、スッとこの話に溶け込んでいるとでもいうのだろうか。むしろそれが自然な出来事だったような感じで、ばななさんったら本当にすごい。
いとこって不思議な存在ですよねぇ。姉妹とも違うけど根っこが繋がっているって感覚があって、大人になってもどこか「子供の時の匂い」を感じることができる存在で…。
根っこが一緒の二人が寄り添い、そして、明日へ向かって動き出すまでの話ですが、湧き出してくる孤独の波をずっと抱いているような小説だった。
そしてとてもとても静かで、行ったことはないけれども、この町の雰囲気がくっきり描けてしまうくらい私の中でペンザスの風景が見えた気がします。
私、何回「孤独」と書いただろうか?それだけこの話の核になっていたのだと思うけど、読後はすっきりしたもので、まるで今食べていた「氷」がスッと口の中溶けて消えた…そんな感じです。