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【レビュー・あらすじ・感想】幼少時代:谷崎潤一郎

 

 

幼少時代:谷崎潤一郎著のレビューです。

 

 

短編小説の「少年」を読んで、一気に谷崎の幼少時代に関心が高まる。

 

「少年」は子どもたちの話ではあるが、非常にSM度の高い小説で、もしかしたら谷崎自身、こんな風に遊んでたんか?という好奇の心がムクムクと・・・で、調べたら、ちゃーんと「幼少時代」なんて本が自身の手で書かれているではないですか!

 

本書は明治中期、谷崎の生い立ちから小学校卒業までの暮らしを綴ったもの。小説以外の谷崎の文章を読むのは初めてだったのですが、小説と違いバリバリ標準語!「のん」なんて一度も出てこなかったってくらい江戸っ子です。なので、やたら読みやすいというのが第一印象。

 

いや、問題はそこではなく、谷崎がどんな子どもだったのか、知りたい知りたい一心でページをめくってゆく。すごーいことをしちゃっている幼少時代を期待し、パンパパンになっている私の気持ちとは裏腹に、意外と普通の子どもだったのだなーという感じなんです。谷崎の坊ちゃんは。

 

もっと悪ガキとか、ずば抜けたマセガキとかイメージしていたのですが、どちらかと言うとギャンギャン泣きわめくばあやにべったりな甘えん坊。だから小学校に上がってもばあやを連れて行き、そばに居てもらわないとギャン泣きしてしまうという。はにかみやで、臆病で、人前に出ると黙りこくってしまうという、あの顔からは想像できない子どもだったのですね。

 

そんなこんなで、一学年は落第し、2回やったりしていますが、良い先生にも出合い、頭はそれこそ良かったのでその後は順調な学校生活を送っていたようです。

 

当時の子どもたちはたくさんの大人たちに囲まれていた。今の子どもよりはいろんな大人たちを見ながら育っているので、その洞察力はやはり侮れません。

 

父親の仕事の浮き沈みや、親戚の大人たちの人間関係など、かなり敏感に察知しているように思える。また谷崎の場合は旅行中であれ、美しい女性を見てうっとり、ねっとり観察していたあたりは、子どものころから抜け目ない。

 

 

当時の町の様子も鮮明に描く

 

本書は谷崎の地元、人形町や蛎殻町界隈の当時の様子がかなり細かく描かれ、江戸情緒もたっぷり。それにしてもよく覚えているものだとその記憶力に舌を巻いてしまう。

 

近所の友だちと遊ぶシーンに、チラッと「少年」の作品を思い出されるものがあったり、親に連れられて行った歌舞伎や、下町の芝居小屋やお神楽、震災の様子、英語を習いに行っていたなど、その後の谷崎を形成したであろうと思われる話が盛りだくさんであった。

 

しかし何と言っても、ちょっと臆病な幼少期のおっちゃんの姿がどこまでも印象的だった。

父親と入浴する際、父の股間の一物を気味悪がって

「恐いよう」と泣いて、手拭いで隠してもらった 

 

・・・というほどの純情なお子が、まさか、こんなにも激しくヘンタイな人々を描く大作家になるとは誰が想像しただろうか?そのギャップがなんだか可笑しくて、やっぱりおっちゃんは、いろんな意味で魅力的である。谷崎文学を読み解く上で、必須の一冊です!

 

※親しみをこめて谷崎氏のことを「おっちゃん」と呼ばせていただいています。

 




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