刺青・秘密:谷崎潤一郎著のレビューです。
- 作者:潤一郎, 谷崎
- 発売日: 1969/08/05
- メディア: 文庫
感想:ちびっこたちの芝居ごっこは、とんでもないことに!
谷崎の色々な「味」が愉しめる、所謂バラエティパック的な1冊。短編が7つです。谷崎文学に関しては、1作品1冊と言うかたちでじっくり読んで余韻を味わいたいと思っているので、ごちゃごちゃと色々な作品が入って来ると、ちょっと落ち着かなかったりする。ほら、高級チョコは一粒でもあの濃厚な味に満足するじゃないですか。大事に食べようと思うじゃないですか。谷崎文学もそれと似ていて濃度が高い作品なものだから、
一冊一冊小分けにして、解説などもたっぷり読みたいとい我が儘な願望が・・・(笑)
それはそうと・・・。記憶に残ったのは、なんといっても「少年」。
今回の登場人物はちびっこたち。お金持ちの気弱な少年・信一。信一の腹違いの姉の光子。(光子と言う名の女性は谷崎文学では要注意?)そして、この家にお呼ばれした私とガキ大将の仙吉。この4人で日々、芝居のような遊びに没頭する。
ここで面白いのは、学校で気弱な少年信一が、この家に居る時は、ガキ大将の仙吉を家来のように扱っているという逆転現象。会社のお偉いさんほど、マゾっけのある人が多いと言われているが、そんなものを彷彿させる少年たち。
このあたりまでは、まだ面白おかしく読んでいたわけだが・・・。遊びの中で互いにいたぶったり、いたぶられたりして行くうちに、徐々にエスカレートしてゆき、恐怖と快楽が表裏一体の世界へ。やがて男子どもは光子に操られるようになる。その光子の吸引力たるや、ものすごいものがある。光子に縛られたり、蝋を垂らされたりしながら仙吉は私に言う。
「おい、お前も己も不断あんまりお嬢様をいじめたものだから、今夜は仇を取られるんだよ。己はもうすっかりお嬢様に降参して了ったんだよ。お前も早くあやまって
了わないと、非道い目に会わされる。……」
仙吉も私も光子に跪く。「腰かけにおなり」と言われれば、直ちに四つん這いになり背中を向ける。爪を切らされる。鼻の掃除をさせられる。Urineを飲まされる。ついにここまで来たか・・・。これ、大人たちの話ではなく、タイトル通り少年たちの話なんですよね。最終的に女王様の奴隷になっちゃうあたりは、谷崎文学のお約束とでも言える。
おっちゃん、ブレないねぇ。
谷崎文学の好みの分かれ目
これまで読んで来た中でグロテスク度がかなり高い内容だった「少年」。だから、谷崎は苦手だ。いや、だから谷崎は面白い。好みの「分かれ目」ともなりそうな作品なのではないかと思う。なぜこのような題材を大人じゃなく子供たちの世界に入れ込んだのか?谷崎自身のことを分析したくなってしまうのも、きっと私だけじなく、多くの読者が興味を持つところだろう。
ということで、「少年」だけで気づけば1000文字越え(笑)だから、1冊1作品にして欲しいのですって。他の6編は、また違った雰囲気を持つ作品ばかりです。女装癖のある男性の話なんかもあるし、谷崎の自叙伝的小説「異端児の悲しみ」も秀逸である。本当はあれこれ書いてみたいところだが、燃料切れです。バラエティパックなので、お好みの作品がみつけられるという意味ではお得な一冊だけれども、やっぱり1作品1冊で・・・
(しつこい)