「ふくわらい」西加奈子著のレビューです。
- 作者:西 加奈子
- 発売日: 2015/09/07
- メディア: 文庫
言葉がウネウネと動き出すような世界を堪能
いやぁ・・・これはまた!なんというか、もう西さんの手にかかったら、全ての言葉たちがウネウネと動き出すのですね。なんだかもう読んでいて、文字のひとつひとつが活きが良くってまさに「言葉が生きている!」と実感させられました。
凡人では決して思いつかない設定。登場する人物たちは、みんな変。でも微妙にどこかに居そうなちょっと「ひっかかる」人々でもある。
編集者の主人公・鳴木戸定。子供のころから、紀行作家の父とともに秘境を旅し、数々の特殊な体験をして育ったゆえに、定は大人になってもちょっと不思議なムードの女性。子供のころから、暗い部屋で「ふくわらい」を何時間でもやっていられるという。
そんな彼女はワニに襲われ亡くなった父の肉を食べた経験があったりする。
なんというか「ここ」です。唐突な人物設定に、頭を殴られた気分になるのですが、
この普通では考えられないようなことをしちゃうのが、西さんの凄いところ。
どんな脇役でもグイグイ個性を発揮してくる!
そしてそれに拍車をかけるかのように、定の周りには個性的な面々が登場してくる。
こうなるともう完全に西さんのペース、西さんの世界・・・。
ファミレスの店員という脇役まで、グイグイ個性を発揮させてくる。会話だって一見「噛み合ってるんですか?」って言いたくなるようなやり取りだったりで、コメディタッチなんだけど、本人たちはいたって真面目。
本書に登場する人々はちょっと変なんだけど、純粋というか、まっすぐというか。真面目すぎて逆に可笑しく仕上がってしまう・・そんな場面に思わず笑ってしまう。
人づきあいの苦手な作家兼業のプロレスラーの「守口廃尊」定に一目ぼれし、猛烈にアタックをつづけるイタリアと日本のハーフ・盲目の「武智次郎」美人すぎるゆえに苦しんでいる後輩の「小暮しずく」
彼らと距離をどんどん縮めてゆくことにより、徐々に定にも変化が訪れる。ラストはちょっとぶっ飛んでいるが、それでもなにか行く先がパ――ッと開けたような清々しい気分にさせられました。口角がキッと上がってしまう感じでね。
「今は先っちょがすべてで、でもいつか、
そのすべてが、もっと大きくなればいい」
なるほど。「先っちょだけ」って必死に言っていた武智のバカバカしい言葉にはじめは噴いてしまったけど、読み終えたときにはなんだか、人間すべて先っちょからだな・・・なんて同調しちゃってる自分がいる。
楽しい小説だった。読者も十分楽しめると思うけど、この小説を一番楽しんでいたのは
きっと西さんなんじゃないかな~。
「ふくわらい」をするように、言葉のパーツを次々に組み合わせ、浮かび上がってくる文章に「楽しいやん」と言っている姿がちょっと浮かんだ。