夜また夜の深い夜 桐野夏生著のレビューです。
- 作者:桐野 夏生
- 発売日: 2014/10/08
- メディア: 単行本
感想:謎が多く潜む設定にグイグイ引き込まれて・・・
桐野さんの作品と言えば、闇とか夜とか、動詞で表すなら潜むとか、這うとか・・・。
こんなイメージが私の中にあるのですが、なかなかそういう作品に最近お目にかかれなかった。で、で、今回は「待ってたんです、こういう作品を。」と大声で叫びたくなるほど大満足でした。何がそう感じたのかは解らないのですが、初期の作品、「村野ミロ」のシリーズを読んで桐野さんの作品にハマったときの感覚が何度も押し寄せて来ました。
さて、本題。
舞台はイタリアのナポリのスラム。主人公マイコは出生届けのされていない国籍もIDもパスポートもない少女。世界のあちこち偽名を使いながら転々とし、教育すらままならない環境で育った。母親と一緒に暮らしてはいたものの、親の過去すら明かされていない。
しかも、母は整形を繰り返している。NGOの職員の男がたまに訪ねてきては、お金や日本の古雑誌を置いてゆく。生活は貧乏で、何かから隠れるようにずっと生活をしてきたのだ。
雑誌で読んだ「七海」という女性の境遇に親近感を覚えたマイコは彼女に手紙を書き続けます。本書はその手紙によってマイコの生活の状況が語られ進行してゆく。
最近できた「マンガ喫茶」でマンガに夢中になったことや、そこの日本人オーナーとの出会い。母親との口論の末、家出をしたマイコは地下通路に住んでいるエリスとアナと出会い、彼女たちとサバイバルのような過酷な生活をはじめるなど、目まぐるしく変化してゆく彼女の生活。
18歳になる今まで、外部との接触を禁じられていたため、あまりにも知らないことが多すぎるマイコの目に映る世界は、なにもかもが新鮮で、失われていた時間を彼女は取り戻すがごとく活動的に動く。
生き抜くためには裏社会とも繋がる女たち
リベリア出身のエリス、モルドバ出身のアナ。ふたりもまた壮絶な環境で育ってきたという過去があり、彼女たちと出会ったことによりマイコ自身も色々なことに目覚めてゆく。
そして三人はいつも一緒に行動し、「生き抜く」ためにお互いを支え合って生活をする。生き抜くために裏社会と繋がることもやむを得ないという厳しい現実。
マイコたちの日々はまさに毎日がサバイバル、ハラハラの連続なのですが、それと同じくらい、母親の動向も気になるところ。一体、母親はなぜ何かから逃げるような生活をしていたのか?マイコが家を出たあとの彼女の行方は・・・。
徐々に明らかになってゆく母親の正体も同時進行で気が抜けない。とにかく、最後の最後まで楽しませてもらったというか、緊張の連続だったなぁ。
どのシーンを切り抜いても、決して休まることがなく、本を閉じても気になってまた開くという行動の連続でした。生きるための術や、貧困、裏社会…等々、随所に見られる
リアルな問題が単なる小説の世界と言いきれない部分も多く、ハッとさせられることも多かった。
読み終わると圧倒的な満足感。私も作品から解放され、ゆっくり眠ることが出来そうです。ん~、こんなに面白いと、次の作品も、ものすごく期待しちゃう読者がたくさん生まれてしまったんじゃないかな~・・・と、勝手に心配しちゃうほど、読み応えがあったわけです。そして、懐かしい桐野さんの作品を感じた1冊でもありました。