
生成AIというと、ChatGPTやGeminiといった"チャット形式"のツールを思い浮かべるかもしれません。しかし、最近はターミナル(いわゆる黒い画面)上で動くツールが次々登場しています。これらのツールはなぜ注目されているのでしょうか?
CLIツールとは何か
これまで、AIによるコーディング支援はテキストエディタやIDE(統合開発環境)の拡張機能として提供されることが多くありました。たとえば、Visual Studio Code(VS Code)の拡張機能としてGitHub Copilot ChatやClineなどがありました。ただ、このような拡張機能を使う方法は、VS Codeなど特定のエディタに依存してしまいます。
そんな中で登場したのが、いわゆるCLIツールと呼ばれるツールです。CLIは「Command Line Interface」の略で、ターミナル(黒い画面)にコマンドを入力して操作するインターフェイスを指します。
最近注目されているのは、このCLIと大規模言語モデル(LLM)を組み合わせたもので、自然言語での指示や、数行のコマンドだけで、AIにコードの作成・修正・テスト実行まで任せることができます。
たとえば、Claude CodeやGitHub Copilot CLI、Gemini CLI、Codex CLI、Kiro CLIといったツールがあります。ターミナルでこれらのツールのコマンドを実行し、「このファイルの関数を高速化して」「このバグを修正してテストを書いて」といった指示を入力するだけで、目的のファイルを編集し、テストの実行までワンストップで進められます。
エディタを選ばないだけでなく、LinuxのサーバーやDockerのようなコンテナ、リモート環境でも同じように動作します。つまり、Webサーバーにおいてデプロイ作業やコード整形、簡単な自動レビューなどをしたいとき、GUI(Graphical User Interface:クリックなどで操作できる視覚的ユーザーインターフェイス)は不要で、むしろ邪魔になります。CLIであればSSHで接続するだけでAI機能を呼び出せるため、環境構築の手間が減り「軽く試せる」ようになります。
これまで、生成AIというと「対話型のインターフェイス」を使ったサービスが一般的でした。また、エンジニアのコーディング支援AIも特定のエディタや開発環境に依存したものでした。
テキスト形式の強み
多くの生成AIは英語や日本語といった自然言語をテキスト形式で指示して動作します。このように、入出力がテキスト中心であることは、生成AIとCLIは非常に相性が良いと言えます。チャット感覚でメッセージを送信できるため、ターミナルの操作に不慣れな人でも手軽に操作できます。
過去の会話履歴やコマンド履歴をそのまま文脈として渡せるため、どの指示に対してどのような結果が得られたのかを追跡しやすく、出力をログとして保存したり、差分を管理したりすることも便利です。
つまり、CLIコマンドをそのままシェルスクリプトやCI/CDパイプラインに組み込めます。たとえば、コミットするタイミングで自動的にコードレビューを走らせたり、複数ファイルを一括で整形・修正するようなバッチ処理を作成したりできます。日常的な反復作業をスクリプト化することで、業務効率が向上します。
また、CLIツールは軽量で、メモリやCPUの消費が少ないことから、性能の低いコンピューターでもスムーズに動作することが特徴です。Dockerのようなコンテナで使うと、利用者の環境を選ばず操作できることもメリットです。
AIエージェントの入口
CLIは人間がツールとして使うだけでなく、AIエージェントが自律的に複数のコマンドを連携して処理するときにも使えます。今後、AIエージェントを使う人が増えると、標準的なインターフェイスになる可能性があります。複数のツールを連携することを考えたとき、エージェントに一連の作業を任せるためには、CLIでの操作が便利なためです。
そこで、プログラマ向けのツール以外にもCLIツールが増えています。たとえば、SlackにアクセスするSlack CLI、Google Workspaceにアクセスするgws(Google Workspace CLI)、X(旧Twitter)にアクセスするxurl(A curl-like CLI Tool for the X API)なども登場しています。これらも人が操作するよりもAIエージェントが処理するのに向いていることが理由として考えられます。
もちろん、これまでもWeb上のサービスであればAPI経由でアクセスする方法がありました。現在も多くのAPIが使われており便利な一方で、APIはインターフェイスを一度決めると手軽に仕様を変更できません。
一方で、CLIで一度接続してしまえば、インターフェイスとして英語や日本語のような自然言語が使えます。処理には少しの時間がかかるものの、その拡張性が高くなるのです。これは、以前解説したMCP(Model Context Protocol)に近い考え方だと言えます。
まとめ
いかがでしたか。CLIというと馴染みのない方もいるかもしれませんが、AIの助けによってより身近な使い方ができるようになってきています。
まずは、自分の環境でインストールが簡単なCLIツールを1つ試してみるところから始めるのがおすすめです。そして、ソースコードの整形や簡単なリファクタリング、単体テストの自動作成といった小さなタスクから試してみるとよいでしょう。
※お仕事でのAIの使用は就労先の規定に必ず従い、情報の取り扱いには十分注意してください。
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』(翔泳社)、最新刊の『実務で役立つ ログの教科書』(翔泳社)がある。
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※本稿に記載されている情報は2026年3月時点のものです。