北海道大学は3月13日、胆汁酸の再吸収は回腸末端が中心という従来の理解に加え、ヒト大腸にも一次胆汁酸の取り込みに関与しうる経路が存在する可能性を示したと発表した。この研究は、同大大学院水産科学研究院の小林彰子准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科(当時)の黒部(髙島)優季氏、齋藤佑太氏、宮脇里奈氏、同研究科の三坂巧准教授、溝井順哉准教授、群馬大学生体調節研究所粘膜エコシステム制御分野の柳澤宏太氏、宮内栄治准教授、佐々木伸雄教授、東京理科大学薬学部の荻原琢男教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」にオンライン掲載されている。

胆汁酸は食後に胆嚢から十二指腸へ分泌され、小腸で脂質の消化吸収を助けた後、主に回腸末端で「ASBT」と呼ばれる主要輸送体を介して90%以上が再吸収され、門脈を介して肝臓へ戻り再利用される。この腸肝循環は脂質吸収のみならず、コレステロール恒常性や代謝・炎症関連疾患と深く関わることから注目されてきた。一方で、胆汁酸吸収の研究で頻用されるCaco-2細胞は結腸がん由来であるものの、胆汁酸の吸収モデルとしての妥当性については輸送体レベルで十分に検証されていなかった。
研究グループは、Caco-2単層膜における胆汁酸取り込みを速度論的に精密解析し、二相性の挙動から複数の輸送機構が関与していることを示唆した。既知のASBTに加え、ナトリウム非存在下でも活性が残り、低pH条件で増加する取り込み成分が確認されたことから、その一部に「OATP1B3」が関与する可能性が示された。さらに、免疫染色によってOATP1B3が管腔側(アピカル側)に局在することが確認され、吸収方向の輸送への関与が示唆されている。
加えて、ヒト正常大腸由来オルガノイドを用いた解析においても、大腸上皮におけるOATP1B3の発現が示された。単層膜培養において同輸送体の管腔側局在が示されるとともに、実際の胆汁酸取り込み活性も確認されている。
今回の結果から、特定の生理的・病態的条件下(腸上皮の再生期や炎症時、胆汁酸負荷が高まる状況など)において、ヒト大腸上皮が胆汁酸取り込みに関与しうることが示唆された。「今後は本オルガノイドを足掛かりに、大腸での胆汁酸取り込みの生理的意義を解明することで、大腸における機能の理解を深めるとともに、胆汁酸との関連が指摘される大腸疾患の理解や予防・治療戦略の検討につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース