大阪公立大学は3月11日、高齢者を対象に複合現実(Mixed Reality:MR)技術を用いた自走式トレッドミル歩行の安全性を検証し、転倒などのリスクなく運動の「楽しさ」を高められることを明らかにした。同大大学院リハビリテーション学研究科の杉山恭二講師らの研究グループによるもの。長続きしにくい高齢者のリハビリテーションにおいて、新たな運動支援技術の導入が進むと期待される。研究成果は「Disability and Rehabilitation: Assistive Technology」にオンライン掲載されている。
高齢者にとって歩行能力の維持は、転倒予防や自立した生活を送る上で不可欠であり、医療・介護現場ではトレッドミルを用いた歩行運動が広く取り入れられている。

しかし、単調な反復運動になりやすく継続が難しいという課題があった。
近年、運動を継続するためには「楽しい」「やってみたい」という自発的な意欲が重要視されており、仮想現実(VR)を活用した運動も試みられているが、視界が遮られることによる転倒や映像酔いのリスクが高いことが高齢者への適用の障壁となっていた。そこで研究グループは、現実の景色を見ながらその上にデジタル映像を重ねて表示できる「複合現実(MR)」に着目した。
研究では、60~70代の男女42人を対象に、MRを用いたトレッドミル歩行の安全性を検証した。参加者を「MRを用いて歩行するグループ」と「MRを使わずに歩行するグループ」に分け、それぞれ10分間のトレッドミル歩行運動を実施した。
その結果、MRを用いたグループでも転倒や気分不良などは一切認められず、高齢者でも安全に実施できることが確認された。さらに、「Physical Activity Enjoyment Scale(PACES)」等を用いた調査では、通常の歩行と同等の運動強度を保ちながらも、参加者が感じる「運動の楽しさ」が有意に高いことが判明した。
同研究により、MR技術が高齢者の歩行運動に無理なく導入でき、従来のリハビリに「楽しさ」という新たな価値を付加できる可能性が示された。
研究を行った杉山講師は、「高齢者の運動では、正しさだけでなく、『やってみたい』『続けたい』と感じられることが重要である」と述べている。今後は、病院やリハビリ施設だけでなく、地域の介護予防教室などへの展開も期待される。より長時間の運動における安全性の確認や、実際にリハビリを必要とする高齢者での効果検証などを進めることで、医療・介護現場で実用化される新しい運動支援技術としての発展が見込まれる。
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