順天堂大学は3月6日、免疫受容体「CD300」が生体内脂質のスフィンゴミエリン(SM)やセラミドを識別し、マスト細胞の高親和性IgE受容体(FcεRI)シグナルを制御することで、アナフィラキシーの重症度が決まるメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科アトピー疾患研究センターの伊沢久未特任准教授、北浦次郎教授、奥村康センター長ら、および浜松医科大学、東京大学、理化学研究所、花王株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Reports」のオンライン版に掲載されている。

即時型アレルギーの中で最も重篤な病態であるアナフィラキシーは、抗原と特異的IgEによってマスト細胞のFcεRIが架橋刺激されてヒスタミンなどを放出することで即時型アレルギーが引き起こされ、全身に及び重篤化することによって起こる。マスト細胞には、細胞外領域の相同性が高い免疫受容体CD300fとCD300d3が発現している。研究グループはこれまで、脂質のセラミドを認識するCD300fがFcεRIシグナルを抑制してアナフィラキシーを抑えることを明らかにしていたが、CD300d3の生理的な役割は不明であった。そこで今回の研究では、CD300d3欠損マウスを作出し、アナフィラキシーモデルを詳細に解析した。
野生型およびCD300d3欠損マウスの骨髄から誘導したマスト細胞(BMMC)をIgEと抗原で刺激して脱顆粒率を測定した結果、両者に差は見られなかった。一方、 受動的皮膚アナフィラキシー(PCA)反応については、野生型マウスと比較してCD300d3欠損マウスのほうが減弱することが確認された。このことから、CD300d3がマスト細胞周囲の何らかの分子を認識し、FcεRIシグナルを増強していることが示唆された。さらに、CD300d3が認識する分子をスクリーニングした結果、CD300d3はスフィンゴミエリン(SM)全般に結合することが判明した。
今回の研究では、CD300d3には結合するがCD300fには結合しないSMを「I型」、両者に結合するSMを「II型」と分類している。すなわち、マスト細胞のFcεRIシグナルは、I型のSMがCD300d3に結合することで促進される一方、セラミドやII型のSMがCD300fに結合することで抑制されることがマウスモデルで証明された。
今回の研究により、生体内に存在する脂質分子(スフィンゴミエリンやセラミド)を識別する免疫受容体のバランスが、マスト細胞の活性化やアナフィラキシーの重症度を直接的にコントロールしているという新たなメカニズムが明らかになった。これまで不明であったCD300d3の役割が解明されたことで、FcεRIシグナルの全容解明が大きく前進したことになる。
「今後、CD300が二重結合や炭素数のわずかに異なる脂質を識別する分子メカニズムの解明を進めながら、マウスとヒトのCD300による脂質認識機構の全貌解明を目指す。同時に、CD300を標的とするアレルギー・炎症性疾患の予防・治療薬の開発を進める。さらに、今回の研究にとどまらず、生体内の細胞外脂質による免疫制御機構の解明が進み、免疫疾患に対する創薬につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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