東京都医学総合研究所は3月4日、いじめを受けた経験が思春期の心の不調につながるメカニズムの一端として、「終末糖化産物(AGEs)」のひとつである「ペントシジン」が関与している可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所社会健康医学研究センター 心の健康ユニットの宮下光弘客員研究員と、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所 行動医学研究部の成田瑞精神機能研究室長らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Psychiatry」電子版に掲載されている。

思春期におけるいじめ被害の経験は、その後の人生において深刻かつ長期的な心身の不調を引き起こすことが知られている。しかし、どのような生物学的メカニズムを介して心の不調につながるのかについては十分に解明されていなかった。
近年、慢性的なストレスが体内で炎症や代謝の変化を引き起こし、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。研究グループは、糖とタンパク質や脂質などが非酵素的に反応して生じる終末糖化産物(AGEs)の代表格である「ペントシジン」に着目。いじめ被害の経験がその後の心の不調につながるプロセスに、ペントシジンがどの程度関与しているかを検証した。
同研究では、大規模思春期コホート研究「東京ティーンコホート(Tokyo Teen Cohort; TTC)」の参加者データを利用した。具体的には、12歳時点での「いじめ被害の経験」、14歳時点での「尿中ペントシジン濃度」、16歳時点での「抑うつ症状」および「精神病体験」のデータを用い、因果媒介分析(Causal Mediation Analysis; CMA)を実施した。
その結果、いじめ被害を経験した子どもは、その後に尿中ペントシジン濃度が高くなることが判明。その上昇が、抑うつ症状や精神病体験の増加と関連していることが確認された。
解析の結果、いじめ被害と精神症状との関連のうち、抑うつ症状については「約19%」、精神病体験については「約28%」が、ペントシジンを介して説明される可能性が示された。この関連は男女別に解析した場合でも同様に認められ、性別によらないメカニズムであることが確認された。
同研究は、いじめという思春期の深刻な社会ストレスが、ペントシジンの増加という体内の生物学的な変化を伴って、その後の心の不調につながるというメカニズムの一端を世界に先駆けて示したものである。
「思春期のいじめ被害を防ぐことは将来の心の健康を育むうえで重要であるとともに、いじめ被害を経験した場合であっても、ペントシジンのような生物学的指標を活用することで、その後の心の不調リスクを早期に把握し、より効果的な予防や支援につなげられる可能性が期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)
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