慶應義塾大学は3月4日、低タンパク質食が腸内細菌叢の機能を変化させ、宿主のエネルギー代謝に重要な役割を果たす「ベージュ細胞」を誘導することを発見したと発表した。この研究は、同大微生物学・免疫学教室の本田賢也教授(理化学研究所チームディレクター)を中心とする共同研究グループによるもの。研究成果は、「Nature」にオンライン掲載されている。

白色脂肪組織においてエネルギーを消費するベージュ細胞に変化する「褐色化(browning)」は、代謝改善の鍵として注目されている。研究グループは、マウスを用いた実験により、低タンパク質食がベージュ細胞を強力に誘導することを見出し、この現象が無菌マウスでは著しく減弱することから、腸内細菌の存在が必須であることを明らかにした。
研究グループは、低タンパク質食を与えたマウスや、ベージュ脂肪活性が高いヒトの便から褐色化を誘導する細菌群を同定した。その結果、ヒト由来の常在菌のうち、Bilophila、Adlercreutzia、Eubacteriaceae、Romboutsiaの4菌株が責任細菌であることを突き止めた。
これらの4菌株を定着させたマウスに低タンパク質食を与えることで、ベージュ細胞の強力な誘導が再現された。この機序として、特定の細菌が胆汁酸代謝を介して核内受容体FXRを活性化し、その下流で褐色化を誘導する経路と、細菌の産生するアンモニアが肝臓でのFGF21発現を誘導し、血流を介して脂肪組織に作用する2つの経路が同定された。この知見は、特定の食餌と菌株を組み合わせることで、肥満や糖尿病、脂肪肝などの代謝性疾患に対する新たな治療戦略の開発に寄与すると考えられる。
同研究は、腸内細菌が食餌の内容に応答し、その代謝物が臓器間に作用して代謝適応を誘導するという戦略を明らかにしたものである。同成果に基づき、肥満や糖尿病、脂肪肝などの代謝疾患に対する新たな治療法確立の可能性が示された。
「今後、特定の食餌と菌株やその代謝物を組み合わせることや上記の作用経路を模倣するより副作用の少ない肥満・糖尿病、脂肪肝などの代謝疾患治療法の開発が期待される」と、研究グループは述べている。
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・慶応義塾大学 プレスリリース