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家族・友人とのつながりの強さ、生物学的な個人差がどの程度関与しているのかに着目

東北大学は3月2日、日本の一般住民6万人以上を対象に、遺伝情報を用いた大規模な解析を行い、社会的孤立と関連する遺伝的特徴が見出され、脳や神経の働きと関係することが知られている遺伝子の関与が示唆されたと発表した。この研究は、同大東北メディカル・メガバンク機構分子疫学分野の栗山進一教授らと京都大学、岩手医科大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Psychiatry」にオンライン掲載されている。


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同じ職場や同じ地域、似たような生活条件に置かれていても、他者とのつながりを自然に広げていく人がいる一方で、周囲との距離が徐々に離れていく人もいる。これまで、社会的孤立は、家庭環境や職場環境、地域社会の特性など、主に社会的・環境的な要因によって説明されてきた。しかし、同じ環境にあっても他者とのつながり方に個人差が見られることから、研究グループは、社会的孤立という現象そのものに、生まれつきの生物学的な個人差がどの程度関与しているのかという点に着目した。特に、精神疾患や神経発達に関連する疾患では、対人関係の困難さがしばしば観察されることから、社会的孤立と生物学的要因との関連が示唆されている。

6万人以上の一般住民対象、社会的孤立は主観的感情ではなく「実際のつながり」を指標

研究グループは、東北メディカル・メガバンク計画による日本人一般住民のデータ基盤を活用し、6万人以上の参加者の情報を用いて解析を行った。特定の患者集団に偏らない大規模なデータを活用することにより、社会全体に広く関わる社会的孤立の特性を検討することが可能となった。

社会的孤立に関する研究では、これまで「孤独感」や「寂しさ」といった主観的な感情が指標として用いられることが少なくない。しかし、こうした感情は、その時々の気分や心理状態の影響を受けやすく、必ずしもヒトを取り巻く社会環境そのものを反映しているとは限らない。今回の研究ではこの点を重視し、気分の落ち込みとしての「寂しさ」ではなく、実際にヒトと会う・話す・支え合うといった行動や環境としての社会的孤立に着目した。つまり、「どう感じているか」ではなく、「どのような人間関係の中に置かれているか」を測定することを目的とした。

国際的指標LSNS-6により客観的評価、「つながりの種類」は3つに分類し解析

具体的には、国際的に妥当性と信頼性が確認されている6項目の質問票Lubben Social Network Scale(LSNS-6)を用い、「月に1回以上やり取りする親族や友人は何人いるか」「困ったときに頼れる相手が何人いるか」など、実際に存在する社会的つながりの数やその機能を評価した。この尺度は、主観的な感情よりも、生活環境や社会構造に近い側面を捉えることが特徴である。

この質問票から、1)全体のつながり(家族+友人)、2)家族のつながり、3)友人のつながり、という3つの指標を作成した。全体のつながりは家族および友人項目の合計得点で構成され、後者2つはそれぞれの下位項目に基づく指標である。これにより「社会的孤立」を一つの状態として捉えるのではなく、どの関係性においてつながりが弱くなっているのかを区別して解析することが可能となった。

26%が全体のつながりで孤立状態、家族より友人のつながりが弱い傾向

社会的孤立は、既存研究に基づき、LSNS-6合計12点以下、各下位指標6点以下をカットオフとして定義した。解析対象者の平均年齢は約59歳で、女性が約65%を占めていた。社会的孤立は、全体のつながりで約26%、家族のつながりで約15%、友人のつながりで約34%に認められた(重複を含む)。この結果は、社会的孤立が一般集団の中に一定割合存在し、家族関係と友人関係では孤立の現れ方が異なることを示している。

GWAS実施、全体・友人のつながりとそれぞれ関連するゲノム領域を特定

次に、質問票に回答した人の遺伝情報を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。これは、あらかじめ特定の遺伝子を想定するのではなく、遺伝情報全体を対象に、「社会的孤立と一緒に現れやすい場所」がないかを網羅的に探索する方法であり、研究者の先入観に左右されず、思いがけない手がかりを見出すことが可能となる。さらに、解析の信頼性を高めるために、複数の集団で同じ解析を独立に行う、年齢や性別などの影響を統計的に調整する、偶然による結果を排除するため、非常に厳しい判定基準を用いる、といった手順も踏んでいる。

最後に、それぞれの集団の結果を統合し、一貫して認められる関連のみを抽出した。遺伝情報を用いた解析の結果、研究グループは2つのゲノム領域で、統計学的に有意な関連を見出した。「全体のつながり」と関連していたのは、ACADSBとHMX3の近傍の領域、「友人のつながり」と関連していたのは、LINC02315とLRFN5の近傍の領域だった。これらのゲノム領域が社会的孤立のすべての側面に同じように関与していたわけではない点が重要である。研究グループはこの結果を、社会的孤立が単一の特性ではなく、家族関係や友人関係といった関係性の種類ごとに、異なる背景を持つ可能性を示すものと解釈している。

脳や神経系の働きに関与する遺伝子、生物学的な背景の一部であることを示唆

社会的孤立と関連が見られたゲノム領域の周辺には、脳や神経系の働きに関与することが知られている遺伝子が含まれていた。このことは、社会的孤立という一見すると社会的な現象が、脳の働きとも無関係ではない可能性を示唆している。

例えばHMX3は、神経細胞の発達や分化に関わる転写因子として知られており、特に脳の形成過程や神経系の発達において重要な役割を果たすと考えられている。またLRFN5は、脳内で神経細胞同士が情報をやり取りする接点であるシナプスの形成や機能の維持に関わる遺伝子であり、これまでの研究では、気分の落ち込みや発達特性など、精神・神経系の性質との関連が報告されてきた。

ただし、今回見つかった遺伝子は、「人付き合いが得意かどうか」や「孤立するかどうか」を一意的に決めるものではない。むしろ、他者と関わる際の感じ方や行動の土台となる脳の働きに関係する生物学的な背景のごく一部に過ぎないと考えられる。

遺伝の寄与は全体約4%・家族約2%・友人約4%にとどまる

推定された遺伝の寄与は、全体のつながりで約4%、家族のつながりで約2%、友人のつながりで約4%にとどまった。これは、社会的孤立に見られる個人差の大部分が、遺伝以外の要因によって説明されることを意味する。実際には、生活環境や健康状態、職業、ライフイベント、地域社会の構造など、さまざまな社会的・環境的要因が、社会的孤立の形成により大きな役割を果たしていると考えられる。一方で、社会的孤立が社会環境だけでなく、生物学的な個人差とも重なり合って形成されている可能性、およびその個人差が関係性の種類ごとに異なる可能性を示した点で、今回の結果は重要な手がかりを提供している。

日本人データとして初、社会的要因の中で個人差が生じる背景として説明可能

今回の研究は、日本人の一般住民を対象に、行動や環境としての社会的孤立を国際的に妥当性が確認された客観的な指標を用いて評価し、その遺伝的背景を大規模に検証した、東アジアで初めての研究である。これまで主に主観的な孤独感を扱ってきた研究とは異なる重要な特徴を持つ。

ヒトの遺伝的特徴は集団によって分布が異なり、日本では家族の結びつきや日常的な人間関係の在り方にも独自の特徴がある。主に欧米人集団で行われてきた社会的孤立の遺伝研究に対し、日本人集団のデータを利用した研究からの知見に新たな視点を加え、社会的孤立をより多角的かつ普遍的に理解するうえで重要な意義を持つ。

一方で、社会的孤立は、家族構造や地域社会、働き方などの社会的要因が強く関与する現象であることも広く知られている。今回の研究はその理解を否定するものではなく、そうした社会的要因が作用する前提のもとで、個人差が生じる背景の一部に、生物学的な要因も重なっている可能性を示したものである。

孤立リスクが高い人のサポートや、健康悪化予防・緩和研究の発展に期待

研究成果は、社会的孤立という社会現象に、生物学的背景が部分的に関与し得ることを示した出発点である。今後、今回同定したゲノム領域が、脳や神経系のどの細胞や機能とどのように関係するのかを明らかにする必要がある。また、社会的孤立と精神的健康、身体疾患との関連を、遺伝情報を手がかりに因果的に検討することで、孤立が健康に及ぼす影響の理解が進むと考えられる。

一方、社会的には、遺伝的背景と環境要因を組み合わせることで、孤立のリスクが高い人を早期に見つけ出し、その人の特性(家族関係が希薄になりやすいのか、友人関係を作りづらいのかなど)に合わせたきめ細やかなサポートを行うための科学的根拠となることが期待される。「今後は、環境改善や社会的支援と生物学的理解を結びつけ、孤立による健康悪化を予防・緩和する実証的研究へと発展させることが求められる」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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