九州大学は3月2日、妊娠中の母親の血中葉酸濃度が低いほど、成長後の子どもに肥満が生じやすく、さらに肝臓や筋肉に脂肪が蓄積しやすくなることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究院OBT研究センターの安河内友世教授、福岡歯科大学口腔医学研究センターの平田雅人客員教授、林慶和講師らの研究グループと、シンガポール国立大学および国立台湾大学の国際共同研究によるもの。研究成果は、「Diabetes Research and Clinical Practice」にオンライン掲載されている。

葉酸は神経管閉鎖障害の予防に不可欠な栄養素であり、日本でも現在、妊娠前から妊娠中にかけて、食事に加えて1日あたり約0.4 mgの追加摂取が推奨されている。しかし、妊娠中の葉酸レベルが子どもの将来の肥満や代謝疾患リスクに及ぼす影響についてはわかっていなかった。
研究グループは、妊娠母体の葉酸不足による産仔の異所性脂肪蓄積の機序を解明した。葉酸は「一炭素代謝」とよばれる重要な代謝経路に関与している。この経路は、アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝や体内のエネルギー利用システムに深く関係しており、特に肝臓で活発に機能する。
動物実験の結果、妊娠中に母体の葉酸が不足すると、産仔の脂肪組織だけでなく肝臓や筋肉においても、一炭素代謝に重要な役割を担うAmd1(アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ1)遺伝子の発現が低下していた。その結果、脂肪酸を代謝してエネルギーに変換するβ酸化が抑制され、各組織で脂肪が燃焼しにくい状態になることがわかった。
さらに今回の研究では、シンガポールの出生コホート(GUSTO)のデータを解析した。その結果、妊娠26週目の母親の血中葉酸濃度が低いほど、子どもが6歳になった時点で肝臓や筋肉に蓄積している脂肪量が多いことが確認された。なお、これらの母親のほとんどは妊娠中に葉酸サプリメントを摂取していた。
今回の研究により、妊娠中に摂取する葉酸の量だけでなく、実際の血中葉酸濃度を適切に維持することが、子どもの将来の代謝健康を維持するために重要である可能性が示された、と研究グループは述べている。
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・九州大学 プレスリリース