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先端巨大症、患者の約9割に認められる「手」の変化に着目

神戸大学は2月27日、プライバシーへの配慮として指紋や手相が見えない形での「手の画像」から疾患を拾い上げるAIモデルの開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の小川渉特命教授、大町侑香氏(大学院生)、西尾瑞穂特命准教授、福岡秀規講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
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先端巨大症は、顔や手足など体の先端部分が緩徐に肥大する指定難病(難病番号77)である。主な原因は脳の下垂体腫瘍からの成長ホルモン(GH)過剰分泌にある。未治療のまま経過すると、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患、がんなどの合併症を惹起し、寿命が10年短縮することが知られている。同症は進行が緩徐であるため本人や家族が気づきにくい。一方で、過剰なGHは全身に作用し、頭痛、月経異常、関節変形、咬合不全、心不全など多彩な症状を呈するため、患者が受診する診療科は多岐にわたる。有病率は10万人あたり4~24人と希少疾患であり、診断までに10年以上を要することも珍しくない。その間にQOL(生活の質)は低下し、発見が遅れると治療後も不可逆的な変化として残るものも少なくない。

近年、顔画像から診断を支援するAIの研究が報告されているが、プライバシーへの懸念から社会実装には至っていない。そこで研究グループは、患者の約9割に認められるとされる「手」の変化に着目した。握り拳時に爪が手のひらで覆い隠せない徴候「fist sign(フィストサイン)」は、顔画像よりも個人特定のリスクが低く、かつ特徴的な所見が得られる。同研究では、手の甲と握り拳の写真を用いて先端巨大症を検出する、全く新しい疾患スクリーニングツールの開発に取り組んだ。

合計1万1,480枚の手画像から大規模データセットを構築

18歳以上の成人を対象に、各専門施設で診断された先端巨大症群317人と対照群399人、合計716人を登録した。それぞれから「指を伸ばした手の甲」と「握り拳(親指を外側に出す)」の2種類の画像を撮影し、合計1万1,480枚の手画像からなる大規模データセットを構築した。

感度89%、特異度91%、ROC-AUC 0.96、内分泌専門医と同等もしくは上回る識別性能

画像解析には深層学習モデル「ResNet-50」を基盤とし、独自に改良を施したモデルを用いた。AIの診断性能は感度89%、特異度91%、ROC-AUC 0.96であり、内分泌専門医と同等もしくはそれを上回る識別性能を達成した。

今後、多疾患対応モデルの開発も

同技術は、プライバシーに配慮したスクリーニング手法として幅広い社会実装が期待される。健康診断・人間ドックでの活用では、企業健診などの場で手の写真を撮影するだけで形態異常を拾い上げることができれば、無症状あるいは軽症段階での早期発見が可能になる。早期治療は合併症リスクを低減し、高額な薬剤の長期的使用を回避できるため、医療費削減の面でも意義が大きい。一般診療・地域医療での支援では、非専門医が「手の形態への違和感」を覚えた際、簡便なAIチェックを導入することで、専門医への紹介の要否を的確に判断できるようになる。これは地域における効率的な病診連携を促進し、医療格差の低減にも寄与する。スマートフォンアプリによる自己チェックでは、将来的に、患者自身が自宅で撮影した写真をもとに受診を促すアラートを出すアプリの開発を目指す。「指輪が入りにくくなった」といった不安に対し、適切な医療機関受診へのきっかけを提供する。他疾患への応用では、先端巨大症に加え、手の形態や爪に異常を認める他疾患(関節リウマチ、肺がん、変形性関節症、貧血、クッシング症候群、強皮症など)への同時並行的な診断モデル導入を検討している。今後、多疾患対応モデルの開発を進め、「手に異常が出る病気」を見逃さない社会インフラの整備を目指していく、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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