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腸や肺で免疫調節機能が広く知られる共生細菌、胃における役割は未解明

理化学研究所は2月18日、胃の特定の共生細菌が免疫応答を介してピロリ菌感染から胃を守る仕組みを発見したと発表した。この研究は、同研究所生命医科学研究センター 空間免疫制御理研ECL研究ユニットの佐藤尚子理研ECL研究ユニットリーダー(開拓研究所 佐藤空間免疫制御理研ECL研究ユニット 理研ECL研究ユニットリーダー)、脳神経科学研究センター 動物資源開発支援ユニットの重野佑布子技師らの研究グループによるもの。研究成果は「Mucosal Immunology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
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ヒトの体の粘膜は、外界から侵入する病原体を防ぐ重要な防御ラインであり、腸や肺では共生細菌が免疫機能を調節していることが広く知られている。しかし、強い酸性環境を持つ胃は長年「細菌がほとんど存在しない臓器」と考えられてきたため、免疫と共生細菌の関係についての研究はほとんど進んでいなかった。1980年代にピロリ菌が発見されて以降、胃の免疫研究は主に胃がんに焦点が当てられてきた。一方で、胃がどのようにして過剰な炎症を抑えながら粘膜を守っているのか、特に共生細菌との関係性や共生細菌そのものによる免疫応答への影響の仕組みは十分に解明されていなかった。

近年の研究により、胃にも少数ながら共生細菌が存在することがわかってきたが、その機能的な役割は不明なままであった。また、胃を免疫臓器と捉えて免疫応答を解析している報告が限られており、胃特有の細菌叢と誘導される免疫制御機構を明らかにすることは、長年の課題とされてきた。

常在細菌のうちS24-7科菌に着目、ウレアーゼ産生により胃酸を中和するYL27を同定

こうした背景の下、研究グループは、胃に定着する特定の常在細菌が、病原菌とは異なる形で免疫応答を調節し、胃粘膜の恒常性維持に関与しているのではないかと考え、今回の研究に取り組んだ。

まず、以前研究グループが報告した、胃の2型自然リンパ球(ILC2)を誘導する可能性がある菌のS24-7科菌に着目し、共生細菌の単離を試みた。その結果、マウスの胃に常在する共生細菌の単離に成功した。さらに、S24-7科に属する菌であるS86とYL27を用いて、それぞれの菌のみを保有するマウス(ノトバイオートマウス)を作製し、胃における免疫応答を解析した。

胃は強い酸性環境を持つため、細菌の定着や免疫応答の解析が難しい臓器であるが、今回の研究では単離した細菌の全ゲノム配列を解析し、胃内で共生可能な機能の推定を行った。その結果、S86はウレアーゼを産生しない一方、YL27はウレアーゼをコードする配列を持ち、タンパク質として産生することで胃酸を中和し、胃に定着することが確認された。

線維芽細胞が共生細菌由来代謝物を感知しIL-33産生、ILC2を介し粘膜防御を発揮

YL27が胃で定着することを確認したので、このYL27を定着させたノトバイオートマウスを使い、単一細胞RNA解析やフローサイトメトリー解析などの免疫学的手法を組み合わせ、胃組織を構成する多様な細胞の遺伝子発現や機能を網羅的に解析した。その結果、胃の線維芽細胞が、共生細菌由来の代謝物を感知してILC2を活性化させるサイトカインIL-33を大量に産生することを突き止めた。

さらに、このIL-33によってILC2からのIL-13産生が誘導され、胃上皮に発現しているIL-13受容体を介して粘膜防御機能を高めることが明らかになった。この仕組みにより、胃は過剰な炎症を起こすことなく、防御機能を維持していると考えられる。

共生細菌により誘導される免疫応答がピロリ菌の胃内定着を抑制

また、ピロリ菌感染モデルを用いた解析から、この共生細菌によって誘導される免疫応答が、ピロリ菌の胃内定着を抑制し、胃粘膜を保護することも示された。今回の研究は、胃の免疫が病原菌への反応だけでなく、常在細菌との相互作用によって精密に制御されていることを示す新たな知見である。

新たな免疫制御経路を解明、穏やかに免疫調節する介入にもつながると期待

今回の研究の新規性は、これまでほとんど注目されてこなかった「胃に常在する細菌」が、免疫細胞だけでなく線維芽細胞を介して免疫応答を制御し、胃粘膜を守っていることを明らかにした点にある。胃の免疫は病原菌への反応が中心と考えられてきたが、今回の研究は、共生細菌との共存によって胃の防御機構が能動的に維持され、ピロリ菌感染からの防御に働くことを示した。

この発見により、胃の健康を「病原菌を排除する」という発想だけでなく、「共生細菌と免疫のバランスを整える」という新しい視点で捉えることが可能になる。将来的には、胃の免疫状態を調節することで、ピロリ菌感染による胃炎や粘膜障害の進行を抑えるといった、新たな予防・管理戦略につながる可能性がある。今回の研究は、胃が単に殺菌・貯蔵を行う臓器ではなく、共生細菌と免疫が協調して働く「生きた防御システム」であるということをより強める科学的エビデンスのひとつである。

応用研究として、今回明らかになった免疫制御経路を基に、将来的にはヨーグルトや健康補助食品としてYL27を取ることで、胃の免疫機能を穏やかに調節する新しい介入法の検討が可能になると考えられる。「具体的な医療応用や実用化にはさらなる検証が必要であり、数年~十数年程度の基礎・応用研究の積み重ねが不可欠であるが、今回の研究はその第一歩となる成果である」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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