弘前大学は3月2日、運動習慣に、認知機能や対人行動を改善する作用があることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域の馬道夏奈大学院生、古川智範准教授、山田順子教授(研究当時、現青森中央短期大学学長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Physiology & Behavior」に掲載されている。

社会的孤立ストレスとは、仲間と接する機会を奪われた状態が続くことで生じるストレスを指す。研究グループは今回、「友達や仲間との交流が少ないことが若者に悪影響を与える」という社会的な背景に基づき、社会的孤立ストレスによって引き起こされる行動に対し、運動習慣(自発的運動)がどのような効果をもたらすのか、また、そのメカニズムの解明を目指した。
研究では、幼少期から単独飼育された雄マウス(ストレス群)を、通常飼育されたマウス(対照群)と比較した。その結果、ストレス群は、多動、やる気・意欲の低下、認識・記憶力の低下、そして他のマウスに対する過剰な接近や攻撃的・回避的な行動といった、複数の行動異常を示した。
ストレス群のマウスに3週間、自由に回し車で運動する機会を与えた結果、運動したグループでは認識・記憶能力の低下が改善した。また、他のマウスに対する過剰な接近行動が減り、逃避行動も減少傾向が見られた。一方、抗精神病薬ルラシドンは、過剰な接近や攻撃的な行動は減らしたが、記憶力の低下や逃避行動については改善が見られなかった。
この結果は、運動習慣が、特定の受容体に作用する薬物治療(ルラシドン)だけではカバーしきれない幅広い症状を改善できる可能性を示している。
ルラシドンが特定の脳内受容体(ドパミンやセロトニン受容体)に直接作用するのに対し、運動は、脳の神経細胞の成長を助ける「神経栄養因子」の分泌を促したり、ストレスに対する脳全体の調整機能を高めたりするなど、より広範囲な脳の適応メカニズムを活性化させている可能性が示唆される。
運動は、社会的ストレスに起因する精神的課題に対し、副作用のリスクが少なく、誰でも手軽に始められる科学的根拠に基づいた介入手段だ。
「本研究は、特に社会的孤立の影響を受けやすい青少年や高齢層に対する、新しいメンタルヘルス対策(運動療法)の確立に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。
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・弘前大学 プレスリリース