慶應義塾大学は2月18日、室内温熱環境が子どもの活動量に与える影響について実測研究を行ったと発表した。この研究は、パナソニック ホームズ株式会社と同大の伊香賀俊治名誉教授、川久保俊准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Indoor Environments」に掲載されている。

世界保健機関(WHO)は、子どもに対し「1日あたり少なくとも60分の中~高強度の身体活動」を推奨している。しかし近年、子どもの活動量は世界的に減少傾向にあり、肥満や2型糖尿病、心血管疾患リスクの増加など、長期的な健康リスクが懸念されている。特に日本では、冬季の低温や部屋間の温度差が活動量低下の一因とされ、住宅内の温熱環境の改善が重要な課題となっている。
このような課題認識のもと、近年では医学と建築学分野が連携し、住環境が健康に及ぼす影響を科学的に明らかにする研究が活発化している。こうした学際的研究の蓄積が進むことで、将来的にはWHOなどによる新たな健康基準策定に向けたデータやエビデンスとして活用されていくことも期待される。
2022年に公表した同大とパナソニック ホームズの調査結果では、全館空調を備えた住宅への転居者は、活動意欲の改善率が有意に高いことを確認している。これらの先行知見を踏まえ、良質な室内温熱環境が実際の活動量に与える影響を評価するため、今回の検証を実施した。
今回の研究では、断熱性能が同水準(断熱等級5・6)の戸建住宅に居住する4~12歳の子ども26人を対象とした。腰部装着型加速度計を装着して、スマートフォンやテレビ視聴などの静止状態から、着替えや洗面といった日常動作、歩行や階段昇降など室内での移動を含む動作を「活動量」として捉え、その活動強度(METs)を測定した。あわせて夏季・冬季の室内温度・湿度を10分間隔で測定し、居室・非居室の温熱環境と活動量の関係を分析した。
搭載した空調設備(全館空調・個別空調)の比較により、室内温熱環境が子どもの活動量に与える影響を検証した結果、冬季に室温が高いほど子どもの活動量が増加し、脱衣所などの非居室を含む住宅全体の温度差が少なく温熱環境が良好な場合は、冬季と夏季の活動量における季節差が小さいことが明らかになった。
この研究成果から、均一な室内温熱環境を実現する全館空調が子どもの健康行動を支え、冬季の活動低下を防ぐ新たな住宅価値となる可能性が示された。
子どもを対象に、実際の生活環境下で活動量を実測する研究は、測定機器の管理や保護者の記録負担によりデータ確保が難しいことから実施例が少なく、国内外でも希少である。
「今後も連携を通じて得られた科学的知見を活かして、室内温熱環境の改善に着目した商品開発を行い、子どもの健康行動や住む人の健康・生活の質向上を目指す。あわせて健康寿命の延伸や生活習慣病予防など社会課題の解決にも貢献できる、快適で安心な住宅を提供していく」と、研究グループは述べている。
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