順天堂大学は1月28日、同大医学部附属順天堂医院が主体となって企画・実施した医師主導治験「カルボプラチン+パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法」第2相試験(MARBLE試験、国内15施設共同)の結果に基づき、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブが胸腺がんに対して新たに保険適用となったと発表した。この研究は、同大医学部附属順天堂医院の研究グループによるもの。

希少疾患・希少がんは、大規模な臨床試験の実施が困難であり、他のがん腫に比べ治療開発が進まない傾向にある。胸腺上皮性腫瘍も10万人/年あたり0.15例とまれな腫瘍で、胸腺がんはそのうち14.1%を占める希少疾患である。一方で、切除不能進行・再発胸腺がんの予後は良好とは言えず、その治療開発には高いアンメットメディカルニーズが存在する。実際に、今回の治験の対象である胸腺がんは希少疾患であるがゆえに、小規模な前向き試験、もしくは後ろ向き試験の報告があるのみとなっている。そのため、新たな治療法の確立は重要な課題であると考えられている。
順天堂医院は同疾患に対する新規治療法開発の必要性に着目し、国内多施設と連携した医師主導治験(MARBLE試験)を企画・実施した。アテゾリズマブはPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬であり、がん細胞による免疫抑制を解除することで抗腫瘍免疫を回復させ、がんの進行を制御する作用を有する。MARBLE試験は、全国15施設が参加する多施設共同の単群第2相試験として実施された。2022年6月14日~2023年7月6日の期間に48人の患者が登録された。治療プロトコールは、導入療法としてカルボプラチン(AUC 6)、パクリタキセル(200 mg/m²)、アテゾリズマブ(1200 mg)を3週間ごとに最大6サイクル投与し、その後の維持療法としてアテゾリズマブ単剤を3週間ごとに最大2年間投与するものである。試験の主要評価項目は独立中央判定による客観的奏効率(ORR)で、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)や全生存期間などが含まれた。
主要評価項目であるORRは56%(95%信頼区間:41–71%)を達成した。PFSの中央値は9.6か月であり、病勢制御率(DCR)は98%であった。有害事象については、好中球減少症(56%)や白血球減少症(33%)が最も多く報告されたが、これらはコントロール可能な範囲内と評価された。この結果より、アテゾリズマブは2025年3月31日に切除不能な胸腺がんに対する希少疾病用医薬品の指定を厚生労働省より受け、同年5月14日に承認申請が行われ、12月22日に適応が拡大されるに至った。
順天堂医院は臨床研究中核病院として、引き続き、革新的医薬品や医療機器の開発の中心的役割を果たすために、質の高い臨床研究や治験を推進していくとしている。また、今回の研究を通じて構築された多施設連携ネットワークを活用し、引き続き、胸腺がんを含む希少がん領域における臨床研究を推進するとともに、実臨床データの収集・解析、そして、腫瘍組織検体や血液検体を用いたトランスレーショナルリサーチを進めることで、より最適な治療戦略の確立を目指す、と研究グループは述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース