
時速36kmというバンド名だけあって、交通安全の重要性を啓発したいのだろうか。今回彼らが主催する対バンツアーのタイトルは『秋の交通安全運動ツアー』なのだから。
とはいえうっかり我を忘れて交通ルールを破りそうになるライブ内容でもある。対バン相手がネクライトーキーという、熱い組み合わせだからだ。
だがバンドの想いは観客にも伝わっているので、安全の重要性を観客も理解している。だから観客は興奮しつつもルールを守り楽しんでいた。それによってフロアは平和で良い空気が流れつつも、熱気に満ちた良いライブになっていた。
ネクライトーキー
先に登場したのはゲストとして招かれたネクライトーキー。お馴染みのSEからメンバー登場した時の歓声の大きさはワンマンと代わりない。
ドラムの激しい演奏からバンドの轟音が響き『きらいな人』からライブがスタート。やはり盛り上がりもワンマンと代わりなく、会場は物凄い熱気で包まれている。ギターソロの前にもっさが「ギター!」と叫んでから朝日が前方まで出てきてギターソロをかき鳴らす姿には痺れた。
「ネクライトーキーです!よろしく!」と叫ぶようにもっさが挨拶してから『bloom』となだれ込み、さらに勢いを増したパフォーマンスを見せつける。朝日はやはり前方まで出てきて、ギターを掲げながらギターソロをかき鳴らしていた。観客の熱気に比例してメンバーのテンションも上昇しているようだ。『ゆるふわ樹海ガール』ではAメロで自然とフロアから手拍子が響いたりと、ひたすらに良い空気感でライブが進む。
もっさ「はあ、飛ばしすぎた!でも時速36kmとの対バンだから、飛ばしすぎるぐらいの速度でやるべきやな」
朝日「時速36km全然法定速度範囲内やけどな」
藤田「時速36kmでもぶつかったら死ぬやろ!」
朝日「今日は100kmで行こうぜみたいな速度いじりMCやってるバンドって、過去にいました?やろうと思ったけど寒いから止めようと思って」
藤田「今まで速度いじりしたバンドに失礼やろ」
観客の盛り上がりによってか、メンバーも想定を超える勢いで演奏してしまったようだ。しかしMCは演奏と違ってゆるくてほっこりしている。
だが演奏が始まると再び飛ばしすぎな勢いで曲が披露されていく。『服部』でも衝動的な演奏で観客を盛り上げていた。
とはいえネクライトーキーには様々なタイプの楽曲がある。朝日の「楽しんでいきましょう!」という煽りから始まった『悪態なんかついちまうぜ』ではミドルテンポのリズムでポップなメロディを歌う。先ほどまで騒いでいた観客も心地よさそうに揺れていた。
もっさがスポットライトを浴びながらアカペラでサビを歌うアレンジから始まった『ゆうな』では、観客は音に吸い込まれるかのように静かに真剣に聞き入っていた。ネクライトーキーはロックを軸に様々な方向性の音楽を鳴らしているのだ。
逆に朝日がギターを爪弾いてからもっさが曲名を叫んだ『ティーンエイジ・ネクラポップ』では、ポップな演奏を響かせる。観客は手拍子を鳴らしメンバーは飛び跳ねながら演奏をしていた。多幸感に満ちた空間が最高だ。
もっさ「靴紐タイム!」と叫び強制的にえむしへ。どうやらもっさの靴紐が解けたようだ。
朝日「前に時速と対バンしたのも埼玉だった。このまま都内以外の関東近郊のベッドタウンで今後も対バンしようと思います(笑)もっさがカッコつけてチューニングを始めたんでまだ喋ります」
もっさ「カッコつけてるわけやない!それにしても、さっきめっちゃ笑顔の人がいて良かったなあ。こっちもめっちゃ笑顔になっちゃうわ!」
強制的なMCタイムが終了し「ネクライトーキーで1番真っ直ぐな曲です!」ともっさが言ってから演奏が再開。演奏されたのは『ちょうぐにゃぐにゃ』。真っ直ぐな曲と言いつつこの曲を演奏するところが、如何にもネクライトーキーといった感じだ。
朝日が「まだまだ大きい声出してくれますか!?」と叫んでからカウントして始まったのは『オシャレ大作戦』。代表曲だからこそか、時速36kmのファンも騒ぐように盛り上がっていた。盛り上がりのピークはまさにこの曲だった。しっかりと歌詞を〈越谷へヘイヘイ〉と会場の地名に変えていたことにもグッとくる。
この勢いのまま『石ころの気持ち』へと雪崩れ込む。〈うるせえタコが〉というフレーズで朝日が腕を上げたタイミングで観客も一緒に叫んでいた。そんな空間が最高だ。
「最後の曲です!」ともっさが叫んでから演奏されたのは『遠吠えのサンセット』。ネクライトーキーのライブでは最後に演奏されることが定番の曲だ。
フロアはやはりワンマンと変わらない盛り上がりになっている。それを見て間奏で「みんなかっこよお!」と笑顔で言うもっさ。メンバーがいつにも増して楽しそうにえんそうしていたのは、観客の反応がいつにも増して良かったからかもしれない。
まるでワンマンライブが終わった後かのような余韻を残し、メンバーはステージを後にした。
■セットリスト
1.きらいな人
2.bloom
3.ゆるふわ樹海ガール
4.許せ!服部
5.悪態なんかついちまうぜ
6.ゆうな
7.ティーンエイジ・ネクラポップ
8.ちょうぐにゃぐにゃ
9.オシャレ大作戦
10.石ころの気持ち
11.遠吠えのサンセット
時速36km
ネクライトーキーの余韻でまだ熱気が残るステージに、ゆっくりと登場した主催の時速36km,。
この熱気の中で演奏された1曲目は『stars』。スローテンポのロックバラードだ。薄暗い照明の中で、繊細に丁寧に歌い演奏している。観客は吸い込まれるようにステージを見つめていた。あえて落ち着いた曲を最初に選曲することで、自分たちの空気を作ろうとしたのだろう。
完全に時速36kmの空気になったところで「時報36kmです!よろしくお願いします!」とギターボーカルの仲川慎之介が叫び『七月七日通り』へと雪崩れ込む。1曲目とは全く違う衝動的で激しい演奏だ。その熱気はネクライトーキーのライブ中と変わりない。観客は手拍子を鳴らしたり合唱したりと、ワンマンのような盛り上がりだ。
そこから『夕方六時、瀬戸之際』へと続くが、この曲も同様に衝動的な演奏で叫ぶように歌っている。その音からは狂気を感じるほどに尖っている。
ゆっくりとライブを始めたものの、そこからロックバンドとしての凄みを伝えるような演奏にグッとくる。
越谷でのライブは6年ぶりなんです。
当時は全然お客さんもいなくて、ただその経験が今日の300人とのライブを作っていると思います。
よろしくお願いします!
今回の会場への想いを語ってからの 「越谷の平均気温をあげていきましょう!」というオギノテツの言葉から続けて演奏された『動物的な暮らし』も、やはりキレッキレな演奏でロックの衝動を感じるものだった。
しかし長いギターソロがあったりジャムセッションのような魅せる演奏があったりと、勢いだけでなく確固たる技術があることもしっかりと伝わってくる。
「久々の曲を」と告げてから演奏された『ジンライム』は、ミドルテンポのリズムとメロディアスな歌が心地よい。このような楽曲があることも時速36kmの強みなのだろう。
俺は埼玉に俺は住んでいて、ちょうど会場のあるこの辺りで育ちました。
朝日さんは俺の憧れの人なんです。自分の住む場所で憧れの人とやれることが嬉しいです!
この辺りは田舎すぎず都会すぎずといった土地で、高い建物が少ないんです。だから空が開けているんです。そんな空を見て感動した時の気持ちをうたった歌です。
仲川の今回の対バンの実現への喜びが溢れたMCの後に演奏されたのは『ラブソング』。ギターのアルペジオの優しい音色が印象的で、優しく繊細な歌声が耳に残る楽曲だ。越谷で演奏されたからこそ、より楽曲の魅力が引き立ったとも感じる。
俺は朝日さんのことがネクライトーキーを組む前から好きだった。石風呂だったりコンテンポラリーな生活も大好きだった。
朝日さんが新しいバンドとしてネクライトーキーを組むとTwitterで知って悔しかった。俺も朝日さんが俺のために描いた曲を歌いたいって思ったから(笑)
でももっささんが歌うとコンテンポラリーや石風呂とは違う魅力も出て、もっささんが歌わないとダメだったんだなと思って納得しました。
思いが溢れすぎて話のまとめ方がわからなくなった。まだ半分しか言いたいことを言えてないのに!
長尺のMCを仲川がしていたが、内容のほぼ全てが朝日のことだった。朝日への心の底からの深い愛を感じる。本当に尊敬している先輩と対バンができて嬉しいのだろう。
「カバーをやります。ネクライトーキーが上手すぎたからやりづらい(笑)」と仲川が言ったから演奏されたのは『遠吠えのサンセット』。ネクライトーキーのカバーだ。
普段の時速36kmの曲よりもキーが高いからか、より感情的に歌っているように聴こえた。演奏も同様に衝動的で、キーボードが居ない部分をギターのアレンジで補い、時速36kmの色もしっかり入れていた。
MCでは再び朝日の話題に。今回のライブのMCは、9割以上が朝日に関連する話題だった。仲川は朝日に憧れて同じレスポールスペシャルを買った話など、コンテンポラリーな生活の曲をアマチュアの時にコピーした話などをしていた。ちなみにそのコピーバンドにオギノは参加していなかったが、その理由は藤田のように金髪美人ではなかったかららしい。
俺には朝日さんに救われた夜がたくさんあって、俺も誰かを救えないかなと思って書いた曲があります。
一生懸命歌います。
言葉を選ぶように仲川が話してから演奏されたのは『銀河鉄道の夜明け』。始まった瞬間に大きな音の手拍子が鳴り響き、サビではフロアの後ろの方まで拳を上げていた。その景色を見て「今日やれて嬉しかった!ありがとうございます!」と叫ぶ仲川。最高の空気感だ。
本当にネクライトーキーは大好きなバンドで、朝日さんは俺に大きな影響を与えた人なんです。
俺たちが頑張ったから今の俺たちがあるわけだけど、朝日さんは俺を突き動かしてくれた人とも言えるし、あの人のおかげでこうして音楽をやれているとも思っていて、恩を勝手に感じています。
でも恩を返すって言っても朝日さんは困ると思うんですよ。そんなつもりで音楽をやっていないだろうし。
だから恩を返すのではなく、貰った力を燃料にしてあなたたちの前で燃えたいと思います!
改めて仲川が朝日への想いを語ってから、さらに熱量を込めた歌声と演奏で『ここに立つ』を続ける。さらに間髪入れずに弾き語りからバンドの演奏が重なるエモーショナルなアレンジの『ハロー』が演奏された。ライブも後半だからか畳み掛けるような展開だ。
この中に時速を聴いて音楽を始めた人いますか?居たらなんとかして俺たちと同じステージに立ってほしい。
音楽じゃなくてもいいや。学校の試験でも仕事でもなんでもいい。なんならわざわざ伝えてくれなくてもいい。俺たちの音楽によって何か突き動かされた人がいることを願っています。俺が朝日さんからそんな気持ちをもらったように。
でも、ここにこれだけ集まっていると言うことは、きっとそう言う人がいるということだよね?
観客に語りかけるように話してから最後に演奏されたのは『夢をみている』。最初から観客の大合唱が響き、最後に最高の盛り上がりと感動を生み出した。
憧れのバンドと特別な場所で行った対バンだからこその、バンドも観客も特別な熱量を持つライブになっていた。演奏や歌には想いが乗るものなのだと、改めて感じた。
アンコールでも朝日への愛をメンバーは語っていた。今度はオギノがネクライトーキーへの想いを語る。
ネクライトーキーはやられてしまった弱者側の音楽だなと思っていました。弱者に寄り添ってくれるような音楽に聴こえていました。
でも最近はそういうことでもなくて、もしかしたら自分が嫌いだったヤンキーもネクライトーキーを聴いて泣いているかもしれないって思うようになって。
本当はネクライトーキーは誰にでも優しい音楽なんです。心が折れそうな時に誰もを救ってくれる音楽というか。
そんなバンドと自分が心が折れそうな時によくライブをやっていた越谷で一緒にできて嬉しいです。
オギノのネクライトーキー評は的確に感じた。ネクライトーキーのファンと同じようにしっかりと聴いていなければ出てこない言葉だ。
仲川が「この1曲に全て込めます」と告げてから最後に演奏されたのは『クソッタレ共に愛を』。繊細に優しくギターでイントロを弾いたものの、そこから全てを曝け出すように叫ぶように歌い、激しく演奏する。ミドルテンポながらも熱すぎる想いのこもった演奏に観客は圧倒されたのだろう。ステージに集中しつつも興奮しているような、独特な熱気でフロアが包まれていた。
「ありがとう!また!」と仲川が告げてステージを後にするメンバー。彼らにとって特別なバンドと一緒に特別な場所で行われたライブは、やはり特別な感動を与えるものとなっていた。
◾️セットリスト
1.stars
2.七月七日通り
3.夕方六時、瀬戸之際
4.動物的な暮らし
5.ジンライム
6.ラブソング
7.遠吠えのサンセット ※ネクライトーキーカバー
8.銀河鉄道の夜明け
9.ここに立つ
10.ハロー
11.夢を見ている
アンコール
12.クソッタレ共に愛を
