久々に観たメレンゲのライブは『メレンゲ ワンマンライブ』という、シンプルライブタイトルだった。だからどのような内容になるのか予想がつかなかった。
そんなライブはシンプルとは言えないような、少し変わった内容だった。まるで2つのコンセプトを考えて、それを前編と後編で分けているかのように思ったのだ。

開演時間を過ぎて出てきたメレンゲの2人とサポートメンバー。1曲目に演奏されたのは『ソト』。ミドルテンポの落ち着いた楽曲だが、演奏は重厚で迫力がある。メレンゲがロックバンドであることを音で説明しているかのような演奏だ。
「こんばんは!メレンゲです!」と挨拶してから演奏されたのは『ムーンライト』。重厚な演奏に圧倒されていた客席だが、空気がパッと華やかになる。会場の月見ル君想フというライブハウスには、ステージの後ろに大きな満月が掲げられている。そんな会場とベストマッチした選曲だ。

そして「久しぶりにみんなに会えて元気が出ました」と一言だけクボケンジが挨拶して『シンメトリア』を続ける。腕を上げたり手拍子をする観客もたくさんいて、会場の熱気が上昇していることが伝わってきた。
しかしここからは空気が変わる。まるで「重いサウンドや空気の楽曲を演奏する」ことをコンセプトにしているかのような楽曲が続いたからだ。
重厚な演奏が印象的な『ふきのとう』で空気が重くなる。これは悪い意味では無い。全員が演奏に集中し、楽曲に浸っている証拠だ。中盤の長いアウトロのセッションは、サポートメンバーも含めてではあるがロックバンドとしての一体感がある。
そして美しいシンセサイザーの音から『hole』へと続いた。美しいメロディの落ち着いた楽曲だが、こちらも演奏は重厚。心に沁みる演奏でありつつも、同時にロックバンドとして爪痕を残すような演奏だ。
そんなキレのある演奏をしているのにMCは緩い。
クボケンジ「久々のライブです。今年2回しかライブやってないからね。でも、みんなたくさんライブやっても来ないでしょ?」
観客「・・・・・・」
タケシタツヨシ「みんな苦笑いしてるから、来ないですね」
メレンゲファンはシャイで自己主張をあまりしない人が多い。毎月ライブをやっても行くから安心して欲しい。
今回のライブでクボは久々に帽子を被らずにステージに立った。ハゲ疑惑があったが、フサフサだった。本人曰く「ワックスで誤魔化している」らしいが、誤魔化せるならハゲでは無いし、禿げることは悪いことでは無い。安心して欲しい。
クボケンジ「松本素生は禿げてるのかどうなのかよく分からない。本人にも聞けないし。いつも帽子被ってるし」
タケシタツヨシ「俺もそんなナイーブな話はしたことが無い」
クボケンジ「でもいい歳の取り方してるよね。禿げてても似合ってるし。羨ましい......」
GOING UNDER GROUNDの松本素生の頭皮への憧れを語るクボ。しかし人それぞれ頭皮は違う。それぞれほら違うストーリーなのだ。
次に演奏する楽曲について「以前1人で作った曲をバンドでやります。真夜中のイメージの曲です。この曲はメレンゲで録りなおしてMVも撮りたいんです」と語るクボ。
バンドとしての表立った活動は少なくなったし新曲もなかなか発表されないが、もしかしたら今年以降は活動が活発化することを遠回しに伝えているのだろうか。
演奏されたのはクボのソロ曲『highway & castle』。バンドでの演奏になったことによって、ビートの強さが印象的なサウンドへと進化している。ソロのバージョンが進化したような演奏だ。
そして昨年リリースされた『バタフライ』へと続く。こちらはクボのアコースティックギターと松江潤の弾くマンドリンの音色が心地よい。優しく温かいサウンドが、ライブだと生々しさが加えられて響く。
クボが初恋のテサキ名義で発表した『ロンダリング』もバンドサウンドで披露された。原曲の落ち着いた空気感を活かしつつも、バンドの力強さも加えられている。しかし全体的な印象は胸に沁み入るような落ち着いた雰囲気だ。薄暗い照明も楽曲の魅力を引き出していた。
そして山本健太の繊細なピアノの音が際立つ『まぶしい朝』が続く。観客は自然と集中して音楽の世界に入り込んでいる。そんな楽曲を連続で披露することで、いつもと違うライブの空気を作っているように感じた。
そんな流れから明るい印象の楽曲『アルカディア』か続く。ここまで照明も暗く落ち着いた楽曲が多い流れだからこそ、ギャップでよりこの楽曲の魅力が引き立っていた。今回のライブはセットリストをいつも以上にこだわっていたのではないだろうか。
演奏はしっかりしていても、やはりMCは緩い。
クボケンジ「セットリスト、重すぎたね」
タケシタツヨシ「曲を選んでるのはクボさんでしょ」
クボケンジ「でも順番を決めるのはあなたでしょ?」
タケシタツヨシ「だって曲目だけ渡されて決めろって言うから」
ステージ上で公開反省会を始める2人。だが観客は素晴らしいセットリストだと思っているから安心して欲しい。
クボケンジ「リハの時から腰が痛い。ギターって4キロぐらいあるけど、日常生活でこの重さの物を持つことないですから
タケシタツヨシ「でも最近運動してるんでしょ?」
クボケンジ「ジムに行ってます」
観客「えええけええええええええ」
タケシタツヨシ「お客さんが悲鳴に近い声を出してるんだけど」
この日のライブで観客から最も大きな歓声が上がったのは、この瞬間だった。
クボケンジ「後半戦はツヨシさんがライブの最初にやることを拒んでいた曲から!」
タケシタツヨシ「別に拒んではいないよ!」
こんな緩いやり取りから始まった後半戦1曲目は『旅人』。拒んでいたと言われつつも、前方に出て観客を煽っているタケシタ。たしかに拒んではいないように見える。
この楽曲から会場の空気が変わった。熱気は上昇し、一気に盛り上がったのだ。前半は聴かせる曲や落ち着いた雰囲気の楽曲が中心だったが、ここから真逆のモードに変わった。
さらにライブ定番曲『午後の海』を続ける。観客は腕を上げたり手拍子したりと楽しそうだ。クボは中盤でハンドマイクになりステージを練り歩きながら歌ったりと、メンバーもテンションが上がっているように見える。
「夏なので夏の新曲を」と告げてから披露された『アクアカイト』は、特にロックバンドのメレンゲを感じる演奏だ。衝動的な演奏と爆音。それに自然と胸が熱くなってしまう。しかもベテランバンドとは思えない瑞々しさがある。この調子で新曲を作ってアルバムを出して欲しい。
個人的にライブのハイライトは、本編ラストに演奏された『クレーター』だと思う。リリース当時はそれまでのメレンゲのイメージと違い、そこまで好きな楽曲ではなかった。
しかし瑞々しい新曲からこの楽曲が続くと、ロックバンド・メレンゲを強く感じてグッときた。満月がステージ後方に掲げられた会場が、楽曲のイメージと合致していることも最高だった理由だ。
この日、『クレーター』の魅力にようやく自分は気づけたのかもしれない。それぐらいに本編を締めくくるに相応しい素晴らしい演奏である。
このように今回は前半と後半とで、テイストの違う曲を分けてまとめたようなセットリストだった。そういえばかつてフジファブリックが「ダークサイド」と「サニーサイド」と楽曲のテイストを前半と後半とで分けたワンマンライブを行っていた。テイストが違う楽曲でも、軸はバンドの個性が滲み出た音楽だと再認識させられるライブだった。
それを少しだけ彷彿とさせる内容に思う。つまりメレンゲも様々なタイプの楽曲があるが、軸となる部分は共通しているし、揺るがない唯一無二の個性があるということだ。少し珍しいセットリストは、メレンゲの魅力を再認識させるものでもあった。
アンコールは『クラシック』から始まった。跳ねるようなリズムとアコギの優しいサウンドが魅力的なポップな楽曲。中盤にクボはマイクを客席に向けて歌わせたりと、メレンゲとしては珍しい煽りもあった。
ラストは「最後、やり切って帰ります!」と告げてから演奏された『ビスケット』。観客は曲に合わせて気持ちよく手拍子をしている。メンバーも楽しそうだ。
アンコールも1つのコンセプトを表現しているようにも感じた。まるで「メレンゲのハッピーて楽しい曲」をアンコールで披露したように思ったのだ。
メレンゲは活動21年目だ。ベテランと言えるキャリアである。しかしファンでも忘れていたり気づけていなかった魅力がまだあるのかもしれない。それをライブを通して知ったり再認識するともある。今回のライブは特にそのよう内容に感じた。
7月にはメジャー1stアルバム『星の出来事』の収録曲を中心に演奏するライブが開催される。今のメレンゲが当時のアルバム曲をまとめて演奏することで、ファンはまた忘れていたり気づけてなかった魅力に触れることだろう。
ただ自分はこの公演のチケットを、取ることができなかった。チケットは即完だった。7月のライブでは、メレンゲの新しい魅力には気づけない。
ただメレンゲも小さなライブハウスで日曜日の公演なら、プレミアチケットになるということは知ることができた......。
■メレンゲ ワンマンライブ at 月見ル君想フ 2023年6月8日(木) セットリスト
1.ソト
2.ムーンライト
3.シンメトリア
4.ふきのとう
5.hole
6.highway & castle
7.バタフライ
8.ロンダリング
9.まぶしい朝
10.アルカディア
11.旅人
12.午後の海
13.アクアカイト
14.クレーター
EN1.クラシック
EN2..ビスケット