Cody・Lee(李)はライブの登場SEで、フジファブリックの楽曲を使うことが多い。過去には『Magic』や『ペダル』を使っていた。
しかし恵比寿リキッドルームで行われた過去最大規模のワンマンライブでは、フジファブリックではないインストの楽曲を使っていた。自分が過去に観たライブとは違う。
これは『~2018.08.20-2022.03.14~』と思わせぶりなライブタイトルになっていることも含めて、今回が特別なライブであることを示しているのだろうか。

チケットはソールドアウトし、満員に埋まった会場で壮大な拍手に招かれながら登場するメンバー。客席は期待に満ちていて、始まる前から熱気に満ちていた。この空気感も自分が過去に観たライブとは違う。
自分は約1年振りに観るのだが、その間にバンドを取り巻く環境が変わったのだろう。これは必然的に特別なライブになってしまう空気感だ。
「Cody・Lee(李)です!よろしく!」と高橋響が挨拶してライブがスタート。1曲目は『drizzle』。
間奏で高橋が力毅を指さして「今までで1番凄いギターソロ!」と叫ぶと、身体も音も暴れるような衝動的なギターソロを響かせた。今回のライブへの気合いが伝わる演奏だ。
そのまま『トゥートルズ』へとなだれ込む。ダンスミュージックとロックを融合させたサウンドとリズムでフロアを踊らせる。
最大キャパのワンマンだからだろうか。序盤は確かめるように、ゆっくりと空気を作る演奏や楽曲が続いた。
『キャスパー』ではギターを置き、ハンドマイクで歌う高橋とスタンドマイクで唄う尾崎リノ。打ち込みど同期させた、ミドルテンポの心地よい演奏に合わせ、ゆったりと歌っていた。
続く『s.o.r.a.』もゆったりとしたメロディとリズムの楽曲。
メンバーの後ろにある豆電球の装飾が点灯し、それが星のように美しく輝く。〈もう少しだけ星〉というフレーズがある楽曲の世界観を、演出で表現しているのだろう。
若手バンドは勢いで突き抜けようとするライブをやることもある。しかしCody・Lee (李)は着実な演奏で、しっかりと音楽を届けている。
技術を持った上で、そこに本人たちだけの個性を加えた音楽を作っているのだ。だから落ち着いた楽曲を続けても聴き手を魅了できるのだ。
リキッドルーム、ドラムの原ちゃんがやりたいと言っていたんですよね。夢が叶ったね!
今回はCody・Lee(李)の今までの活動の総集編的な内容になると思います。
高橋による短めのMCを挟んでから披露したのは『東京』。
クセになるメロディと高橋と尾崎の歌声のハーモニーが心地よい楽曲。やはり演奏が上手い。こちらもミドルテンポの楽曲だが、しっかりと聴かせて心地よく踊らせてくれる。
とはいえフロアの熱気も少しずつ上昇している。『異星人と熱帯夜』では、フロアの空気が少しだけ明るく彩られたように感じた。
映画の主題歌だったこともあり、この曲を期待していた人も多いのだろうか。激しく盛り上がることはないが、そんな喜びに満ちた雰囲気になっている。
この楽曲は尾崎リノがアコースティックギターの弾き語りでサビを歌い、そこからバンドの演奏が重なるライブアレンジになっていた。
このアレンジによって、楽曲の求心力がより強まった。ライブによって楽曲は進化するのだ。
高橋「今日は力仕事をしてからライブをやっています。パワー系バンドのCody・Lee(李)です。今日もパワー系ライブをやります!」
客席「ふふ......(失笑)」
高橋「......皆さん、ワクワクしてますか?皆さん!一緒にワクワクしましょう!」
音楽はスベらないのに、MCでは滑るCody・Lee (李)。
しかし演奏はやはり一流である。ライブが中盤に入ると、アップテンポのロックナンバー『WKWK』で空気を一瞬で変えた。
演奏が激しくなり高橋と力がお立ち台に登って客席を煽る。急激に熱量が上昇するフロア。ファンも手拍子したり腕を上げたりと前半とは違う楽しみ方をする。
高橋による「ベース!ニシマケイ!」という紹介からのベースソロで始まった『悶々』で、さらに熱気を帯びるフロア。手拍子の音も大きくなる。
このバンドは音楽性が幅広い。だからこそ演奏の力や楽曲の魅力で、会場の空気を自由自在に操ってしまうのだ。
そういえばフジファブリックも音楽性が幅広く、様々な方向性の楽曲を演奏する。その都度に会場の空気を変えてしまうバンドだ。
Cody・Lee (李)はフジファブリックからの影響を公言している。高橋響は公言どころか、大ファンであることを積極的にアピールしている。
だからか彼らの音楽性も幅広く、音楽によって自由自在に空気を操れるバンドになれたのかもしれない。
ここで原汰輝によるライブグッズの紹介がされた。
Tシャツやタオルなどを順番に紹介する原。しかしアクリルキーチェーンを紹介した際は「原さんを譲るので力さんのキーチェーンをくださいとツイートして募集しているのをエゴサで見つけました。ゾッとしましたね.......。原が出てゴメン......」と切なげな表情で語る原。
きっと原のファンも会場には少なからずいると思うから、元気を出して欲しい。
そんな原の切ない感情を放置して「しばらくやっていない曲をやります。夏を感じてください」と言って次の楽曲の紹介をする高橋。
演奏されたのは『江ノ島電鉄』。
活動初期に作られた、ポップなメロディと爽やかな歌詞が印象的な楽曲だ。ロックを軸にしているバンドではあるが、その上でポップにも振り切れることも彼らの魅力である。
久々な楽曲が演奏されるサプライズではあったが、ここでさらなるサプライズとして新曲が披露された。
「新曲をやります」と言って演奏された瞬間に、会場からどよめきと拍手が響いた。新曲を期待しているファンが多いことは、勢いがあるバンドだからこその反応だ。
新曲は重低音響くミドルテンポのロックだったが、メロディは美しかった。その組み合わせに惹きつけられる。
「雪」という言葉が歌詞に入っていたので、おそらく冬の歌なのかもしれない。正式なリリースが楽しみだ。
そこから続いた『LOVE SONG』は、新曲と親和性があるサウンドとメロディに感じる。こちらも重低音響くミドルテンポのロックだからだ。「どうすれば楽曲が魅力的になるか」を徹底的に考えてセットリストを組んでいるのだろう。
今日は自転車で家からここまで来ました。そんなことを言ったら特定班に特定されますか?家から10キロいないなら自転車で移動しますよ。
今日の気温は自分が上京した時と同じような感じがします。今日の匂いは僕が上京した時の匂いです。たくさん嗅いでください!
音楽はスベらないのに、やはりMCは少しスベる高橋響。なぜか自ら特定班に自宅のヒントを与えている。さらには匂いフェチには嬉しい情報まで提供していた。
しかし演奏は一流である。一瞬でMCでスベった空気を塗り替えてしまう。
「上京してから作った曲を歌います」と言ってから披露された『春』で、春の陽気のように温かな空気を作り出した。
尾崎が1番を歌い高橋が2番を歌う楽曲構成は、歌の主人公とヒロインの感情や歌詞の物語をより深く伝える仕掛けに思う。
特にライブで聴くと、その感情描写の表現がダイレクトに伝わってきて切なくなる。
そこから『しろくならない』を続けるのだから、切ない気持ちがより強まってしまう。この二曲は続けて聴くと、1つ物語を辿っている気持ちになるからだ。
『春』はヒロインがポストに別れの手紙と合鍵を入れて、それを主人公が読む物語だ。
それに対して『しろくならない』は想いが残っている恋人に主人公が手紙を書いている歌詞である。
この2曲がライブで続けて演奏されることで、一つの物語として繋がった。
音楽は1曲ごとに感動することも多い。しかし曲順や流れによってその感動が何倍にも増幅されたり、新しい感情が生まれることもある。このセットリストは、まさに感動が何倍にも増大する流れだった。
「忘れられない日になりました!」と挨拶してから演奏されたのは『我爱你』。これが本編最後の楽曲である。
再び熱気に満ちるフロア。黄色いスポット照明が客席までも照らし、ステージ後方の「李」と書かれたオブジェが青や赤に点滅する。演出も演奏と同様に盛り上げようとしている。
最高の演奏をして本編を締めくくった5人。もはやリキッドルームではなく、Zeppクラスでやるべきと思えるライブ内容だった。
すぐにアンコールの拍手が巻き起こり、再登場した5人は、全員が笑顔で良い表情をしていた。最高のライブをやった手応えがあるのだろう。
高橋「曲数が多くで大変だったからリハは2回に分けたんですけど、実際にステージに立ったらあっという間ですね。それにしてもギターソロが多い。ギターソロに耐えられるお客さんは凄い。自分は飽きるからギターソロなんて聴いてられない。
力毅「作ったのはあなたでしょうが」
本編のMCではスベりまくっていたが、アンコールでは少しだけウケた。良かった。少し面白かった。
さらに「バンドが先に進む為の発表があります」と続ける高橋。
そしてCody・Lee(李)がメジャーデビューすることと、5月にアルバムをリリースし全国ツアーを行うことを発表した。その瞬間に喜びに満ちた盛大な拍手が会場に鳴り響く。
そしてメンバーが1人ずつ、メジャーデビューについて想うことを語っていった。
ニシマは「自分もリキッドルームでやることが夢の一つだったし、そこでメジャーデビューを発表できるとは」感慨深そうに語り、原は「この5人ならメジャーデビューは必然でしょう」と自信に満ちた表情で話し「バンドを続けてこれたのは母親のおかげです」と感謝を伝えた。
ファンの知らない場所では、様々な葛藤や家族の支えがあったのかもしれない。
「趣味みたいに楽しんでやっていたのに、メジャーデビューできるなんて夢のようです。信じられないです。だから今日の24時を過ぎるまで信じません」と笑う尾崎との姿も印象的だった。
力の「バンドを始めるきっかけは解散して見れなくなったバンドがきっかけでした。おこがましいですが、自分たちがメジャーデビューして、解散した憧れのバンドができなかったことも成し遂げたいです」と語る姿は頼もしかった。
この5人ならもっと凄い景色を見せてくれる予感がする。
そして高橋は「読みたい文章があるんです」と言って中学時代の卒業文集を取り出し、本人が書いた「将来の夢」についての文章を朗読した。
僕はバンドを組んでソニーからメジャーデビューします。ソニーからデビューする理由は、大好きなフジファブリックが所属しているからです。
デビューするために地方ライブを地道に続けてファンを増やしていきます。僕は必ず音楽をやって、夢を叶えます。
文章を読み終わると、客席から温かな拍手が鳴り響いた。その音を浴びながら「夢が叶った!夢って、叶うんだな!」と笑顔で叫ぶ高橋。
そして「今までは自分のためだけに音楽をやっていました。でもここからは支えてくれた人への恩返しの想いも込めて続けていきます」と宣言した。それに対しても盛大な拍手が贈られる。
多幸感に満ちた空気の中で披露されたのは『世田谷代田』。
インディーズとしては最後のリリースとなる楽曲で、ポップで可愛らしいメロディと温かな演奏が印象的な楽曲だ。未来の話を語ってから新曲を披露するのが良い。最新のバンドの姿が最もカッコいいことを示したいのかもしれない。
「故郷の歌をやります」と高橋が言うと、ピアノの演奏が流れ『桜町』が始まった。壮大な演奏のロックバラードだ。
ライブの後半に相応しい感動的な演奏である。それをジッと集中して聴くフロア。彼らの想いをしっかりと受け取ろうとしているように見える。
このまま感動的にライブが終わるのかと思いきや、照明が暗くなりパンクバンドかのような激しい爆音が会場に響く。高橋と力が前方まで出てきて客席を煽り『When I was cityboy』が最後に演奏された。
残りの体力を全て出し切るように激しく演奏し動き回るメンバーと、叫ぶように歌う高橋。
フロアも負けじと腕を上げたり身体を激しく動かしている。ファンも同じように全てを出し切ろうとしている。
バンドをやっていて辛いこともありました!でも!バンドを続けてよかったと!たった今思っています!
曲中に高橋は、歌わずにバンドへの想いを叫ぶように語っていた。
リキッドルームを完売させ、メジャーデビューも決まった、さらに大きなキャパでのワンマンも決まっている。辛かったことも報われたと思ったのだろう。
高橋の言葉を聞いて、フジファブリックの志村正彦が地元山梨県で凱旋公演をした時のMCを思い出した。
プロミュージシャンを目指すことって、楽しそうにやってるように見えますけど、実はそれだけではなかったりします。喜びを感じる時なんて、何かを成し遂げた一瞬だけです。
普通の大人になりたくなかったから音楽を始めたのに、それを不安視してる自分がいて。
なりたくなかった普通の大人になっていく人たちがすごい幸せそうで、そういう人たちを羨ましく思うようになってきて、また不安なったりして。今日はライブできたからいいんですけど、音楽をやってきた9年間っていうのは、「楽しい」だけではなかったんですね。
そういう気持ちを全部含めて、出会いや別れがあって、今日という日があります。
今日ライブができて、これまでのことが報われたかなと思っています。
高橋の言葉と志村の言葉に重なるものを感じた。
フジファブリックに憧れてコピーバンドをしていた少年は、憧れのミュージシャンと同じ悩みと喜びを感じるまでに、多くの人に認められ、多くの人に愛されて、前に進んだのだと思った。
高橋が「これからもよろしくお願いします!」と笑顔で言ってから、ステージを去ったCody・Lee (李)。
メジャーデビューはゴールではなくスタートかもしれない。しかし彼らの今までの経験が報われた一つの結果だとも思う。
恵比寿リキッドルームでのワンマンは素晴らしいライブだった。これからもっと大きな場所で、多くの人に響くロックを鳴らすのだと確信した。そんな未来が今から楽しみで仕方がない。
自分が彼らのライブを初めてみたのは、2019年のBAYCAMPだ。当時はオープニングアクトとしての、短い時間での演奏だった。
正直なところ、今と比べると演奏もライブの魅せ方も下手だった。それでも惹きつけられるものがあっで、これからが楽しみなバンドだとも思った。
フジファブリックのフォロワーバンドは少なくないが、それらは刺激的なサウンドや個性的な編曲に影響を受けているパターンが大半である。
それに対してCody・Lee (李)はフジファブリックの抒情的でメロディアスな部分や、文脈を読ませる歌詞などにも影響を受けているようだ。もっと深いフジファブリックの根っこの部分からの影響があると感じた。
その上で自分たちの音楽として昇華させて、個性を生み出しているのがCody・Lee(李)である。
だから2019年当時の上手いとは言えない彼らでも、自分は惹かれたのだ。
自分がフジファブリックのファンだから好感を持ったわけではない。フジファブリックのファンならば応援しようと思ったわけでもない。
彼らの音楽に惹かれたのだ。カッコいいバンドだと思ったから曲を聴いてライブに足を運んだのだ。
今ではリキッドルームでも小さいと思えるほどの人気と実力を手に入れた。しかもまだまだ伸び代がある。COdy・Lee (李)、めちゃくちゃ凄いバンドになりつつあるぞ。
今年さらに人気は上昇するだろうし、来年には驚くほどの飛躍をしているかもしれない。
そして近いうちに、彼らの憧れのバンドと人気も実力も並ぶ日がくるだろう。
その時は平等の立場として行われる、Cody・Lee (李)とフジファブリックによる対バンライブを観てみたい。


■Cody・Lee(李) IN LIQUIDROOM ~2018.08.20-2022.03.14~ セットリスト
1.drizzle
2.トゥートルズ
3.キャスパー
4.s.o.r.a.
5.東京
6.異星人と熱帯夜
7.WKWK
8.悶々
9.江ノ島電鉄
10.新曲
11.ラブソング
12.春
13.しろくならない
14.我爱你
EN1.世田谷代田
EN2.桜町
EN3.When I was cityboy
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