
SHISHAMOにとって初のバンド主催の対バンツアー『SHISHAMO NO OMANEKI TOUR!!! 〜開国2022〜』が開幕した。
その初日は東京スカパラダイスオーケストラとの対バン。
世代も音楽性も全く違う2組。ファン層もあまり被ってはいないようだ。
しかし両者ともに対バンする意味や価値があるライブを繰り広げ、対バンだからこその最高の時間を作り出すライブでもあった。
東京スカパラダイスオーケストラ
SEに『多重露光』のインストバージョンが使われる中、勢いよく登場した先攻の東京スカパラダイスオーケストラ。
開口一番に「SHISHAMO!開国おめでとーー!」と加藤隆志(Gt)が叫び、ライブがスタート。「開国おめでとう!」と言われた日本人は約170年ぶりだろうし、言った人間の登場もペリー以来だろう。
1曲目はSEと同じ『多重露光』。SEの音源から生演奏に切り替わるような演出だ。
やはり生演奏だと迫力が違う。ステージを最大限に使い動き回り煽るパフォーマンスも圧巻だ。
今回はSHISHAMOが主催した対バンライブ。だからか会場はSHISHAMOファンが大半に見えた。スカパラのライブを初めて観る人が多かっただろうし、楽曲自体もほとんど知らない人もいたと思う。
だからか普段のスカパラのライブは始まった瞬間に湧き上がるような盛り上がりになるのに、今日は序盤はそこまで盛り上がってはいなかった。最初はジッとステージを見ている客が多かった。
それはスカパラがアウェイというわけではない。
SHISHAMOファンがスカパラの演奏やパフォーマンスの1つひとつに、驚き衝撃を受け興奮しているからこその空気感だ。圧倒されているからこそ、無闇に動けないのだ。
だからジワジワと熱量が伝わり、少しずつ盛り上がっていく感じだ。スカパラの音楽がしっかりSHISHAMOファンに響いている証拠である。
2曲目に谷中敦(Bsx)が「横浜!みんなで行くぞ!」と煽った『DOWN BEAT』が演奏された時には、すっかりといつも通りのスカパラのライブになっていた。
曲を知っているかどうかなど関係なく、音に合わせてみんな踊って盛り上がっている。
SHISHAMOにお招きいただいて光栄に思っています。開国1発目の相手で責任を感じますが、それを背負った上で盛り上げていきますよ。
戦うように楽しんでくれ!
谷中の短めのMCを挟んで披露されたのは、茂木欣一(Dr)が歌う『銀河と迷路』。
メロディアスな歌と心地よい演奏によって、身体を揺らす客席。スカパラは音楽で盛り上げるだけではなく、音楽で気持ちよく酔わせてくれる。
『STORM RIDER』はスカパラのカッコよさを伝えるパフォーマンスでもあった。
赤い照明に照らされて加藤がギターを、谷中がサックスをソロで弾く演奏からスタートした楽曲。それを観て興奮し腕を上げる前方の客席。手拍子も自然と巻き起こっていた。
今回のチケットは対バン相手が発表される前にも販売がされていた。
つまり前方の座席にはSHISHAMOだけを楽しみにして来た人がほとんど。それでもスカパラが最高のライブをやるから、前方も盛り上がっているのだろう。
『SKA ME CRAZY』は、特にSHISHAMOファンを驚かせていたようだ。
NARGOが1人で光る鍵盤ハーモニカを曲始まりで吹いた時、その楽器が光ったことに思わず「おお!」声を漏らしてしまう客席。
ここまで客席からの声出しは禁止のルールは全員が守って楽しんでいたが、初めて観た演出に思わず声が出てしまったようだ。新鮮な気持ちで楽しんでいるからこその反応だ。
「もっともっと楽しもうぜ!」という煽りから全員の演奏が重なった時は、ワンマンのような盛り上がりになった。ここにいる全員がスカパラのファンになってしまったような雰囲気だ。
スカパラの曲を知らない人が多いかもしれないけど、それなのにみんな自由に踊ってくれて嬉しいです。SHISHAMOが開国した日に楽しくライブできて最高です!
最新シングルの『キミニサチアレ』を、今日ライブで初めて演奏します。
この曲はウエディングソングですが、今日は開国したSHISHAMOに幸あれと言う気持ちで歌います。
みんなの中には「僕のSHISHAMOが、私のSHISHAMOが、開国なんてしなくていい!」と思っている人がいるかもしれません。
でも開国して広い世界を知ることは素晴らしいことです。
なぜか吐息を混ぜたイケボで語りかけるようにMCをする茂木。SHISHAMOファンにセクシーアピールをしている。
そんなセクシーボイスで茂木が歌った『キミニサチアレ』。楽曲のコンセプト通りにハッピーな楽曲だ。会場が多幸感で満たされた。
スカパラは9名の演奏が重なることで生まれるグルーヴが魅力的なバンドではあるが、メンバー各自の演奏を切り取ったとしても素晴らしい。楽曲によってはメンバー個人の演奏をフィーチャーした楽曲もある。
沖祐市のピアノソロ始まる『水琴窟』は、沖の演奏がフィーチャーされたパフォーマンスだった。
彼の美しい旋律のピアノがスカパラに華やかさを加えているのだと、ライブで聴くとより実感する。
ここでSHISHAMOファンにとって嬉しいサプライズがあった。
谷中の「スペシャルゲストを呼びます!」と紹介から、宮崎朝子がゲストボーカルとして登場したのだ。
歌われたのは『美しく燃える森』。原曲は奥田民生がゲストボーカルとして参加している楽曲だ。
そんな楽曲を大人っぽい赤い衣装を来て、スタンドマイクで歌う朝子。普段のバンドで着ることがないタイプの衣装だし、楽器を弾かずに歌うことも珍しい。
そんな普段とは違う状況での歌唱だからか、いつもよりも艶のある声色で歌っている。それに色気を感じる。
彼女のイメージとは違う楽曲ではあったし、スカパラホーンズに囲まれて終始照れ笑いしていたが、しっかりと歌いこなしていた。
この日だけのコラボによって、ボーカリスト宮崎朝子の新しい魅力が引き出された。
ラストは『Paradise Has NO BORDER』。
GAMO(Tsx)が「この会場で一番盛り上がってるのはどこだ!?」と言ってメンバーを引き連れてステージを歩き回る。
その煽りを受けて腕を上げたり拍手したりと、この日1番と思うほどに盛り上がる客席。GAMOが思わず「SHISHAMOファン、凄いな......!」と驚くほどの盛り上がりだ。
対バンライブは今まで聴いてこなかった音楽やアーティストとの出会いの場でもある。
会場の雰囲気から察するに、スカパラを初めて聴いたお客さんが大半だった。世代も音楽性も全く違うのだから仕方がない。
しかし最後には物凄い盛り上がりになっていた。この日をきっかけにスカパラを好きになった人がたくさんいると思う。
この対バンはまさに「新しい音楽との出会いの場」になっていた。
■セットリスト
1.多重露光
2.DOWN BEAT
3.銀河と迷路
4.STORM RIDER
5.SKA ME CRAZY
6.君にサチアレ
7.水琴窟
8.美しく燃える森 with 宮崎朝子
9.Paradise Has NO BORDER
SHISHAMO
やはりSHISHAMOのファンが多いのだろう。出てきた瞬間から会場が盛り上がっている。
しかしメンバーは少し緊張した面持ちだ。もしくはスカパラの最高のライブを観て、いつも以上に気合が入っているからだろうか。
それでも演奏はいつも通りにキレッキレのロックサウンド。カラフルな照明に包まれながら『ひっちゃかめっちゃか』で勢いよくライブをスタート。
客席の反応もワンマンと変わらない。スカパラファンも一瞬で巻き込んでしまったように思う。
最新アルバム収録曲の『中毒』では骨太なロックを鳴らしてから、やはり緊張した様子で最初のMCを行うメンバー。
「初めましての方もよろしくお願いします。今日はお越しいただきありがとうございます」と丁寧に畏まった挨拶をする宮崎朝子。普段と様子が違う。
宮崎「今回が初の対バンツアーで、なぜライブタイトルが開国なのかというと、SHISHAMOは他者との関わりが希薄で対バンをあまりしてこなかったからなんです」
吉川「いや、希薄というよりも他者との関わりがない!」
宮崎「それはマズイと思って、一時開国しました。大変なご時世ですが、無事にスカパラの皆さんと初日を迎えられて嬉しいです」
デビュー10年目にして初めて対バンツアーを行った理由について語るメンバー。しかし「一時開国」とまた鎖国することを匂わせる宮崎朝子。簡単には人に心を許さないようだ。
宮崎「リリースしたばかりの新曲をやりたいの!あ、やりたいです」
松岡「やりたいのwww」
宮崎「新曲をやりたいです(笑)さっきのスカパラとのコラボの緊張をまど引きずっちゃってるの!」
緊張を引きずるどころが、さらに緊張し空回りする宮崎朝子。しかしやはり演奏が始まれば、緊張しているとは思えない凄みを見せつける。
歪んだ音色のギターリフが印象的な楽曲。ゴリゴリのベースと力強いドラムも良い。3人の演奏力が際立つ新曲だ。客席の反応も上々。これは新しいライブ定番曲になる予感がする。
次に演奏された『かわいい』は、ここ最近のライブではほぼ毎回演奏されている。最新アルバム収録曲だが、すでにライブ定番曲になったのだろう。
切ない歌詞と疾走感ある演奏とポップなメロディ。SHISHAMOの個性と魅力が詰まっている。そんな楽曲と演奏に魅了される客席。
吉川「さっき朝子がスカパラとコラボしてましたけど、凄くよかったよ/////」
宮崎「なんで吉川が照れてんだよ!」
吉川「わたしも朝子の緊張が伝わって引きずってるの!」
宮崎「コラボは緊張はしたんですけど、凄く楽しませてもらいました。あとSHISHAMOのグッズを身につけたお客さんがスカパラの曲で踊ってるのを見たら感動しちゃいました」
吉川「対バンツアーってこういうことなんだって思って泣きそうになっちゃった。開国してよかったなあと」
宮崎「スカパラにはずっと憧れていて、以前SHISHAMOでヘッドセットをつけてライブをやったことがあるんですけど、それはステージや花道を歩いてライブをするスカパラを観て憧れたからやったんです」
吉川「でも鼻息が入って、ずっとズー!ズー!ていう雑音が入っちゃったんだよね......」
宮崎「だからもうやりません。スカパラみたいにカッコよくやりたかったのに......」
どうやらスカパラへの憧れがあるから、初の対バンツアーに呼んだらしい。音楽性は違うものの、影響は受けているようだ。
ヘッドセットをつけたライブは、さいたまスーパーアリーナ公演のことである。
自分は当日ライブに参加したが、たしかに鼻息が荒かった。宮崎朝子の鼻息は、特に大きな音で会場全体に響き渡っていた。
次に披露されたのはリリース前の新曲『春に迷い込んで』。ミドルテンポでピアノの美しい旋律と、バンドの力強い演奏が組み合わさった楽曲だ。
ピンク色の照明に包まれる中、桜の花びらの形をした白い照明が壁に映し出される。
その光が桜が舞うように下へと降りていく。楽曲の世界観を表現した演出で、感動が増幅される。そんな照明演出も素晴らしかった。
前半は骨太なロックサウンドやアップテンポの楽曲が中心に披露されたが、SHISHAMOはミドルテンポの切ない楽曲も良い。
朝子がアコースティックギターに持ち替えて披露された『夏の恋人』では、真っ赤な照明に包まれながら繊細な演奏を響かせた。盛り上がっていた客席もステージに集中して聴きっている。
季節外れの楽曲ではあるが『春に迷い込んで』の後に演奏されたので、まるで音楽によって季節の移り変わり表現しているのかもしれない。
恋人と別れる直前の出来事を歌った『夏の恋人』の後に演奏された『夢で逢う』も、歌に込められた物語の流れを意識しても曲順なのだろう。
〈恋という魔物から抜け出して〉というフレーズから始まる、失恋後の話をテーマにした楽曲だからだ。
まるで1人の女性の物語を辿るような曲順に、感情移入して感動してしまう。しかしこの曲は後半で雰囲気が変わる。中盤で長めのジャムセッションがあるのだ。
松岡のベースソロから吉川の重い音が重なり、朝子のギターソロが始まる。そんなロックバンドとしてのキレッキレな演奏には痺れてしまう。
SHISHAMOはただただ切ないラブソングや失恋ソングを歌うバンドではない。音楽の軸にはロックがあるのだ。
松岡「私はスカパラ先輩とは関係なく、シンプルに緊張しています。今年の初ライブなんですよ!」
吉川「3月だけど、あけましておめでとうございます!」
松岡「でもスカパラ先輩がカッコイイライブをやっていたたので、頑張らなきゃと思いました!」
宮崎「頑張らなきゃと思いましたって、感想が小学生なんだけどwww」
松岡「でもお客さんを目の前にしたら安心して、不思議とリラックスしてライブが出来てます」
吉川「そりゃあ、あんたはジャージ着てステージに立つぐらいだからリラックスしているでしょうよ!スカパラ先輩はスーツでキメてステージに立ってるのに」
宮崎「それにしても、今日は平日の月曜日だよね?それなのにお客さんにこんなに来てもらって。普通の人は月曜日にライブに来ないでしょ?」
吉川「急にお客さんをディスらないで!」
緊張もほぐれてきたのか、自由奔放に喋り、客のディスまでし始めた3人。しかしここからは後半戦。畳がけるような演奏が続く。
イントロから大きな音の手拍子が鳴り響いた『妄想サマー』と『きっとあの漫画のせい』でいっきにラストスパートをかける。
どちらもゴリゴリのロックサウンドながらもポップさも兼ね備えた楽曲。SHISHAMOの真骨頂といえるサウンドで盛り上げていく。
ラストは『明日はない』。
衝動的な演奏をかき鳴らしてステージを去る3人。スカパラファンにとっては、SHISHAMOはポップで可愛らしい音楽をやるバンドだと思っている人もいたかもしれない。
しかしそんなイメージをぶち壊すようなロックな演奏をしていた。これがSHISHAMOである。きっとスカパラファンにも衝撃を与える名演だったと思う。
アンコールの手拍子が鳴り響く中、ステージに大量の楽器が運ばれていく。どうやらスカパラの機材のようだ。アンコールでコラボをやることを匂わせる。
再登場したSHISHAMOの3人。
「これで3人で演奏するってなったら、お客さんもなんでだよって思いますよねw」「スカパラ先輩の楽器を出してみただけみたいなw」と笑い合ってから、改めて対バン相手のスカパラを紹介し呼び出した。
谷中「SHISHAMOの初の対バンツアーの初日に呼んでもらえて、本当に光栄です」
宮崎「でも呼んだ側なのに、特にお持て成しもしてなくて申し訳ないです......。それなのにライブをやってもらって......」
谷中「いや、何もしなくていいんですよw ライブをやらせてもらうだけでいいんですw」
先ほどは「月曜に普通ライブに来ないでしょ?」と客をディスっていた朝子だが、スカパラが出てくると再び緊張して照れ始めた。客にも照れてくれ。
総勢12名がステージに集まる姿は圧巻だ。そんな豪華な布陣で演奏されたのは『明日も』。SHISHAMOの代表曲だ。
スカパラホーンズの演奏が映える選曲だ。原曲でもホーンが使われているので、それの再現とも言える。
ドラム2台とベース2本にパーカッションが加えられたリズム隊の音も迫力がある。ツインギターのSHISHAMO楽曲も新鮮だし、ピアノの旋律は楽曲を華やかに彩ってくれる。
スカパラはSHISHAMOに寄り添った演奏というよりも、自らの個性をぶつけるような演奏だ。だからこそこの2組が共に演奏する意味がある。
中盤ではスカパラホーンズのソロプレイと加藤と朝子のギターソロが披露された。これもこの日でなければ観れない演奏だ。
やはり朝子は照れ笑いしながらギターを弾いている。客にも照れてくれ。
ミラーボールが回ったりと、演出もステージに負けじと豪華になったいく。客席もこの日1番と思えるほどの盛り上がりになっている。
多くのバンドが対バンライブを行っている。ワンマンよりも対バンが多いアーティストも多い。その中には「この組み合わせに意味はあるのか?」と思ってしまうこともある。
自身が主催になったことはないものの、主催者に呼ばれての対バンの経験はあるSHISHAMO。その際はに1曲目を対バン相手の楽曲をカバーすることが恒例だった。
おそらくSHISHAMOは対バンにも意味や価値を求めていて、ワンマンでは起こりえない化学反応や奇跡を対バンに求めているのだと思う。
だから今まで対バンを積極的に行わなかったのだろう。リスペクトする相手以外との対バンは断っていたのかもしれない。
スカパラとの対バンは「対バンする意味と価値」があった。SHISHAMOが開国する必要性を、ファンにしっかりと伝える最高のライブだった。
ワンマンライブのSHISHAMOは、全ての演奏を終えたエンディングのSEとしてThe ピーズ『東の窓』をいつも流している。
しかし今日はスカパラの『メモリー・バンド』を流していた。
ただ対バンしたからと適当に選んで流したのではなく、スカパラのことの理解しているからこその選曲に思う。そうでなければ『メモリー・バンド』を流さない。
ペリーによって開国した日本も、スカパラによって開国したSHISHAMOも、どちらも開国する意味と価値があった。
■セットリスト
01.ひっちゃかめっちゃか
02.中毒
03.狙うは君のど真ん中
04.かわいい
05.春に迷い込んで
06.夏の恋人
07.夢で逢う
08.妄想サマー
09.きっとあの漫画のせい
10.明日はない
EN1.明日も with 東京スカパラダイスオーケストラ
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