カネコアヤノ ワンマンショー 2020春
カネコアヤノの中野サンプラザ公演。本来ならば2020年の4月24日に行われるはずだった。
それが新型コロナウイルスの影響で延期を重ねた。それが2021年4月23日に50%以下のキャパにして、1日二回公演に変えて対応することで、ようやく開催された。約1年の延期である。

ライブタイトルは『カネコアヤノ『ワンマンショー 2020春』。去年と同じライブタイトル。何があっても開催するらしい東京オリンピックと同じく、2021年に開催しても数字は2020のまま。
2021年に2020年のライブをやるというケジメをつけるライブだとも思った。2020年をなかったことにはしない。そんな意思を感じる。
前半
バンドメンバーも含めて4人全員が全身黒で統一された衣装。赤や青や黄色などの派手な色の照明はない。暖色のランプのような色だけ。ホールのライブとしては、かなりシンプルなステージである。
演奏もシンプルなバンドサウンドだ。しかしシンプルでも力強い歌と演奏だから、ライブは成立する。むしろこの演奏と歌に無駄な装飾や演出など必要なく、音楽を引き立てる最小限のものだけでいいのだ。
1曲目の『アーケード』が始まった時点で、歌と演奏だけで成立するライブだと実感する。一瞬で心を奪われ圧倒させられる。次の『かみつきたい』で、客席を鋭い眼光で見渡しながら歌う姿にも引き込まれる。
カネコアヤノの歌は力強い。音源での歌い方も良いのだが、ライブだと感情を剥き出しにして叫ぶように歌う。パンクの魂も感じる。聴いていてヒリヒリするしゾクゾクする。
同様にバンドの演奏も素晴らしい。長年同じバンドメンバーで活動しているだけあって、主役にすら感じる時があるほど個性があるし、歌声との相性も抜群だし演奏に唯一無二のグルーヴがある。
演奏スタイルも良い。『天使とスーパーカー』で林 宏敏(Gt) と本村 拓磨(Ba)が向き合って演奏する姿や『星占いと朝』で全員がBob (Dr)方を向いて目を合わせてから演奏する姿を見ると、このメンバーでなければならない意味を感じる。
ひたすら音楽だけで感動させる。だから演出は最小限。2018年以降はMCもほとんどやらなくなった。この日もほぼ喋らずにひたすら演奏を続けた。音楽が最も重要で、音楽さえあえれば良いと思えるライブ。
『朝になって夢から覚めて』『窓辺』とスローテンポの楽曲では、演奏の流れや歌詞の内容に合わせて、歌唱表現を変えていく。1曲の中でドラマを見せられているような感覚だ。
演出や照明は最小限のライブではある。しかしここからは客席の壁や天井にも光が当てられ、会場全体に星空が映し出されているような空間になった。
「カネコアヤノ ワンマンショー 2020春」延期・中野サンプラザ公演にお越しいただいた皆様、スタッフの皆様、Ka na taさん、ありがとうございます。
— カネコ商店(カネコアヤノ スタッフ) (@kanekoayanoinfo) 2021年4月24日
感染防止対策、開催内容変更に伴うアンケート等にもご協力いただき、ありがとうございました。 pic.twitter.com/dC9FJ5KMvv
美しい音楽を美しい空間で聴く感動。そんな空間で聴く〈星が降りてくる夜の話〉という歌詞から始まる『抱擁』は素晴らしかった。この日のライブで特に感動したのがこの曲だ。
後半
本村拓磨がエレキベースからコントラバスに楽器を替え、何かしら叫んでから(何を言っていたかよくわからんかった)激しくソロで演奏を始める。そして『腕の中でしか眠れない猫のようにが始まる。
激しかったのは最初の木村の演奏と謎の叫び声だけ。落ち着いた雰囲気の胸に染み入る名曲が名演で届けられた。この後も落ち着いた楽曲が続く。それでも歌の力強さはある。だから真っ直ぐ胸に突き刺さる。
『孤独と祈り』で〈絵画よりも広いこの世の爆発は祈り〉と歌い『爛漫』で〈わかってたまるか 涙が溢れる〉と歌う声は力強くも切ない感情を感じた。だからしっかりと胸に染み入る。
「中の音の返しを歌以外を全部上げてもらっていいですか?すんません!」
ここまで挨拶すらせずに14曲連続で立て続けに演奏してきたカネコアヤノ。しかしここで少し照れながらスタッフに話しかけ、照れ笑いしながら観客に軽くお辞儀をした。
ここまで良い意味で緊張感ある雰囲気でライブが進んでいた。鋭い眼光で目を見開きながら歌っていた。それに圧倒させられ感動した。しかし彼女が喋ったことで空気が緩んだ。もちろん良い意味で。
緊張の糸が少しだけ解れ、穏やかな空気が流れる。先ほどとは違うステージも客席もリラックスした雰囲気の中で『僕ら花束みたいに寄り添って』で演奏が再開。ミドルテンポの明るい曲。
〈感動している 些細なことで〉という歌詞は、ライブを観ている観客の気持ちを代弁しているように聴こえた。
かつては生で音楽を聴くことは、些細な趣味で楽しみだった。それがコロナ禍で変わってしまった。だから音楽を聴くという些細なことへの感動を、より実感する。
そしてカネコアヤノ自身もライブができるという、今までは当然で些細だったことについて、改めて感動しているのかもしれない。
『光の方へ』は希望に満ちていた。
カネコアヤノがエレキギターを掻き鳴らす弾き語りから曲が始まり、そこにバンドの音が重なっていく。
隙間からこぼれ落ちないように するのは苦しいね だから光の方 光の方へ
カネコアヤノは多くを語らない。メッセージ性のある歌詞を狙って書くことも無い。この歌詞はコロナについて歌ったわけでも無い。しかし魂を込めて音楽を作り奏でている。
だからかこの日の『光の方へ』は、とても力強く希望をくれる音楽に聴こえた。光が見えない世の中に、光の方へ少しだけ導いてくれた気がする。
最後に演奏されたのは『燦々』。太陽が明るく輝く様子を意味する言葉がタイトルの曲。この曲からも希望を感じた。
間違っても別に構わない
次の日も君といれるかがずっと不安で
燦々とした気持ちでいよう
胸が詰まるほど美しいよ ぼくらは
どうしても今の世の中に感じるモヤモヤと重ねてしまう。そのような曲でもないのに。
音楽は聴く環境や、その時の感情によって、受け取り方は変わる。だから自分はこの日の『燦々』に救われたと感じた。
「ありがとう」と一言だけ言ってカネコアヤノはステージを去った。すぐに終演のアナウンスか流れた。1日2回公演だからか、終演時間を早めるためにアンコールなしで終わる予定なのだおるか。
しかしアンコールの手拍子が続く。
ライブのアンコールは「お約束」な要素が強い。ほとんどのライブで定番イベントのように行われる。しかし終演のアナウンスが流れてもアンコールを求める拍手が続くことは、滅多にない。これは「お約束の拍手」ではない。
心の底から感動したからこその拍手だ。もしもアンコールがなかったとしても、感謝や感動を伝えたいという気持ちからの拍手だ。それぐらいに素晴らしいライブだった。
再びステージに出てきたカネコアヤノとバンドメンバー。本編はMC無しで駆け抜けたが、言葉でライブへの想いを語った。
「大変な時期なのに来てくれて嬉しいです。本当に来てくれてありがとうございます。今度やるときは、100%でいっぱいの人が入っている中でやろう。その時もまた来てくださいね。ありがとう!」
ここ数年はほとんどMCを行わないカネコアヤノ。短いながらも自身の思いを赤裸々にMCで伝えようとしたのは、かなり久々のことである。
アンコールは1曲。演奏されたのは『とがる』。
かわる!かわる!
かわってく景色を受け入れろ
カネコアヤノが叫ぶように歌う。最後に全ての想いを込めるように。感情を全て伝えるかように。
やはり『とがる』でも、コロナ禍のことや、今の自分の気持ちを音楽に重ねてしまった。
コロナ禍になってから世の中は大きく変わった。ライブの形も変わった。100%のキャパで行うことが難しくなり、観客は全員マスクを着用し、声を出さず静かに観ている。客席の雰囲気は以前と全く違う。
ステージからみた客席も、今までとは全く違う景色なはずだ。
だから『とがる』のサビは自身に言い聞かせるために、叫ぶように歌ったように感じた。そしてファンに対して音楽で喝を入れ、強く背中を押すような歌声にも聴こえた。
「絶対にまた会おうね」
演奏を終えてステージを後にする前、彼女は笑顔で挨拶をしてステージを後にした。音楽で力強く背中を押してくれたのに、最後の言葉は優しかった。
内容自体は良い意味でいつもと変わらない、キレッキレで最高でロックなカネコアヤノのライブだった。しかしいつも以上に、音楽を生で聴く意味や価値を感じさせてくれるライブでもあった。
かなりとがってるカネコアヤノの音楽は、光の方へ連れていってくれる。
カネコアヤノ『ワンマンショー 2020春』@中野サンプラザ 第一部
■セットリスト
1.アーケード
2.かみつきたい
3.天使とスーパーカー
4.星占いと朝
5.栄えた街の
6.ごあいさつ
7.セゾン
8.朝になって夢から覚めて
9.窓辺
10.りぼんのてほどき
11.抱擁
12.腕の中でしか眠れない猫のように
13.孤独と祈
14.爛漫
15.僕ら花束みたいに寄り添って
16.光の方へ
17.愛のままを
18.燦々
EN1.とがる
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- アーティスト:カネコアヤノ
- 発売日: 2021/04/14
- メディア: CD
