小山田壮平弾き語りライブ
中野サンプラザで行われた小山田壮の平弾き語りライブ。

コロナ禍いうこともあり、開演前の客席は緊張で張り詰めた空気になっていた。全員マスクをしているし、開演前だからとおしゃべりをしている人もいない。全員がじっとライブの開始を待っていた。
感染症対策を徹底しキャパを半分以下に減らしながらも、ライブ再び開催され始めている。自分もいくつかのライブに行ったが、どの会場も開演前の雰囲気は以前とは違う緊張感がある。
それはライブへの期待によるものだけではなく、不要不急の外出をしたことへの罪悪感や、来てしまったことが正しいか間違いかと自問自答、行きたくても行けない人への申し訳なさ、その他の不安や恐怖などによる緊張だ。
音楽やライブが好きな人ほど持ってしまう感情かもしれない。それでもライブへ足を運ぶのは、音楽に救いを求めているからだろう。少なくとも自分はそうだ。
しかし小山田壮平が1曲目の『革命』で<革命を起こすんだ 夢を見るんだと誰もが今夜祈るんけは>と歌い出した時、「救われた」と思った。緊張が一瞬で解けた。
力強い歌声は良いライブにするための宣言のように聴こえたし、祈りのようにも聴こえた。
そんな名演に客席から盛大な拍手が贈られる。開演前の緊張が解け、ライブという非日常を楽しめる日常の空気に、たった1曲で変えてしまった。
前半
次に演奏されたのは『NOW PLAVING』。ギターをかき鳴らしながら颯爽と演奏する。
そして音源でも印象的なエレキギターのリフをアコギで再現しながら『OH MY GOD』を披露。
ステージは特別なセットも装飾もなく、アコースティックギターが2本だけ置かれているだけでシンプル。
そこで演奏される優しくも力強い弾き語りは、日常に音楽を生で楽しむ時間が戻ってきたことを感じさせてくれる。
表現をする場所があることはありがたいです。思いっきり今日はやろうと思います。
最初のMCではライブをやれることへの感謝と喜びと意気込みを語っていた。
その後に演奏された『旅に出るならどこまでも』は、音源よりもブルースを感じる演奏でクール。
曲の後半ではピックを投げ捨てて指引きに変わった。その瞬間がたまらなくカッコ良くて痺れる。
そんなクールな演奏の後には『ベースマン』を優しい歌声とギターで表現した。
弾き語りではあるが、様々な方向性の楽曲を聴かせてくれる。
〈昨日も今日も明日も明後日も風と共にいくだけさ」〉という歌詞が、このご時世だとより胸に響いてしまう。
いつもは酔っ払いながらツイキャスをやって醜態をさらしていますが、ライブでは飲まずに好青年としてライブをやっています
冗談で言ったMCなのだろうが、スベってしまい会場が不思議な雰囲気になった。
感染症対策で歓声を出したり大声で笑うこともできないので拍手で応える客席。さらに不思議な雰囲気になる。
「面白いことを話したいけど、それはできないので歌います」と言ってから、『ローヌの岸辺』を優しいアルペジオのギターと丁寧な歌声で演奏した。彼は面白いことを喋ろうとするよも、音楽で気持ちを伝えることの方が向いていると思う。
そして『雨の散歩道』とスローテンポの楽曲を続ける。前半の勢いある演奏とは違い、しっとりと聴かせる楽曲が続く。
穏やかな余韻を残す曲を続けたかと思いきや、次はギターをかき鳴らしながら『スランプは底無し』を演奏。激しい演奏で圧倒させた。
かと思いきや、次はミドルテンポの『彼女がタバコをやめない理由』。今度は温かい気持ちにさせてくれる演奏。
小山田壮平は弾き語りでも様々なタイプの演奏を聞かせてくれるのだ。だからライブが中だるみすることはないし、感情が揺れ動かされ続けてずっと集中して聴いてしまう。
「韓国語で1曲」とつぶやいてから『投げキッスをあげるよ」を韓国語で歌った。小山田壮平の弟が翻訳したらしい。
andymoriは何度か韓国でライブをやったことがある。
小山田壮平自身も韓国や東京で会って遊ぶ韓国人の友人がいることを過去のブログに書いている。(2012年8月|Blog|andymori official site)
自分は韓国語は全くわからない。それでも熱のこもった演奏と歌声にはグッときたし胸に響いた。ステージ後方の電飾は点灯し、それが夜空に輝く星空のように見えた。
まるで夜の野外で小山田壮平の音楽を聴いている気分になった。
音楽に国境はないのだと改めて思う。政治の問題など様々なことがあって歪みあうこともあるが、それでも音楽は国境を超える。
後半
この日のライブで最も熱量を感じたのは『teen's』だ。
優しい歌声とギターで始まった曲だが、後半に進むに連れ少しづつ演奏が激しくなり、感情的に叫ぶような歌に変化していく。ギターのストロークも激しくなっていく。
こんなバカな気持ちを歌にしたら笑うだろう
なんて弱い奴だと相手にされないだろう
(andymori / teen's)
特に最後のフレーズは魂を振り絞るように歌っていた。その歌声が胸に刺さった。歌い終わりにはやり切ったように、「ありがとう」とボソっとつぶやいたのが印象的だった。
『Life is Party』からは希望を感じた。この日のこの歌に力をもらった人が、会場にはたくさんいたと思う。
あの日の空は言うさ
あの日の空は言うさ
いつか悲しみは消えるよって(andymori / Life is Party)
コロナ禍で様々な感情が渦巻いている世の中。悲しみが消えることを願ってしまう。
音源と同じ印象的なイントロを弾いてから『Sunrise&Sunset』を続けた。爽やかなメロディと力強い歌声。この演奏にも希望を感じてしまう。
コロナ禍ではあるけれども気をつけながらたまに飲みには行っているんです。自分は飲むと気さくな人間になります。パリピみたいにウェイウェイしています。自分は非常に社交的でコミュニケーションが上手い人間です。
しどろもどろになりながら話すのでMCの内容に説得力はない。そのためか「素面だと使い物にならなくなってしまう。素面でも人と話せるようになりたい」と言い訳をしていた。
それに対してなぜか拍手を贈る客席。「今も酒を欲しています。いつも際限なく飲んでしまう」とアルコール中毒を疑う発言をするので、少し心配になる。
お酒の味がまだわからなかった頃に作った曲です
そう言ってからandymoriの1stアルバムに収録されていた『ハッピーエンド』をしっとりと歌い、次に未発表曲のバラード『コーラとあの子の思い出』を続けた。
夕暮れの井の頭公園でコーラの空き缶蹴飛ばして
もうダメかもしれないと こぼした君の横顔 すごく綺麗で(andymori / ハッピーエンド)
『ハッピーエンド』の歌詞から察すると、この2曲は繋がっているのかもしれない。
だから1曲1曲で完結しているのではない。セットリストの流れに物語性があるので、別個で聴くよりも感動してしまう。
『君の愛する歌』『16』『あの日の約束通りに』とミドルテンポの切ない楽曲が続く。その心地よいリズムと美しいメロディが胸に沁みる。
演出は控えめのライブではあるが、ライブの後半はグッとくる演出が増えた。
『ハッピーエンド』では雲をイメージした絵が描かれた幕が現れた。
陽が暮れる前の曇り空のような少し暗い照明。それによって夕暮れの井の頭公園で『ハッピーエンド』を聴いている気持ちになる。
『16』では雲が流れるような照明が後方の幕に映された。そして青い照明が客席を照らしていた。
空がこんなに青すぎるとなにもかも捨ててしまいたくなる
空がこんなに青すぎるとこのまま眠ってしまいたい(andymori / 16)
まるで歌詞に込められた情景や想いを演出で表現しているようだった。
最後に演奏されたのは『夕暮れのハイ』。音源よりもスローテンポで歌詞を噛みしめるように歌っていた。
ステージと客席をオレンジに染める照明。夕暮れ空の下で『夕暮れのハイ』を聴いている気分になって、シチュエーションも相まって胸に沁みる。
空の移り変わりを表現した演出によって、小山田壮平の音楽が自分の日常に溶け込んでいくような気持ちになった。
アンコール
アンコールで出てきた小山田壮平。「ありがとうございます」と一言だけ話してから、すぐに演奏を始めた。
演奏されたのは『1984』。
音源はトランペットの音が印象的な楽曲。しかし今日はアルペジオでシンプルに演奏していた。
〈赤い太陽 5時のサイレン 6時の一番星〉を表現するかのようにオレンジの照明がステージを照らす。客席上のミラーボールが周ると、星が散らばっているように見える美しい光が会場全体に広がる。そんな美しい照明が会場を彩る。
曲の後半でギターを弾くのをやめた。そしてギターのボディをリズム楽器のように叩き、リズムを刻みながら歌った。
ファンファーレと熱狂 赤い太陽
5時のサイレン 6時の一番星(andymori / 1984)
サビを小さな声で何度も歌っていた。
コロナ禍の前は合唱を求める部分だったのかもしれない。しかし客席は誰も歌わない。でも会場が一つになっているように思った。
「全員が音楽に耳を傾けて同じ気持ちで感動している」という意味では、ものすごい一体感があった。
その後の『ゆうちゃん』を疾走感ある演奏で多幸感に満たされた空間も一体感があった。一緒に歌わなくても、一緒に叫ばなくても、音楽で繋がることはできるし、音楽で感動することはできるのだ。
「ライブができて幸せです。今日は美味しいビールが飲めそうです。来年もライブをやりたいので、またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました」
最後の挨拶をしてから演奏されたのは『サイン』。
映画のエンドロールのように、今日のライブを流れを総括するような余韻を感じる演奏だ。
忘れないでいてね 忘れないでいるよ
この心の歌を
そしていつか「やっぱそうだったね」って
僕がサインを送るから(小山田壮平 / サイン)
この歌のこのフレーズが、小山田壮平がライブで伝えたいことなのかと感じた。
彼の音楽は「心の歌」に思う。そして自分はこの日のライブを忘れないだろう。
ライブは非日常な空間だが、日常ともつながっている。音楽は日常に流れているものなのだから。だからライブも以前は日常の一部だった。
それがコロナによってライブが中止になったりと、音楽のライブが日常とは繋がらなくなってしまった。ライブを開催すること自体が不可能で夢の話に思う時期もあった。
小山田壮平の優しい歌声には親近感がある。そして空をイメージした照明や後方の幕は、日常と音楽が繋がっていることを表現していたのかもしれない。
音楽は日常にそっと寄り添ってくれるということを、ライブで伝えようとしていたのかもしれない。
少しづつライブは再開され始めているが、12月以降は新型コロナの感染者が増え始めた影響で、中止や延期になるライブがまた増えてきた。以前のようにライブが行われるのは、自分たちが想像する以上に遠い未来かもしれない。
それでも音楽は日常と繋がっていることは変わらない。CDはいつでも再生できるし配信ライブもある。今のところ有観客ライブも対策や工夫をしながら実施してくれる。
小山田壮平のライブを生で観れるのが、次はいつになるのかはわからない。しばらくは観れないかもしれない。
それでも音楽と日常は繋がっているのだと、また再び会えることに希望を持つことはできるのだと、音楽によって教えてくれるライブだった。
小山田壮平は離れた場所でも、CDの中でも、3メートル隣で夢の続きを鳴らしてくれる音楽をずっと続けてくれるはずだ。
小山田壮平 弾き語りLIVE2020 @中野サンプラザ 2020.12.7
■セットリスト
1.革命
2.NOW PLAYING
3.OH MY GOD
4.旅に出るならどこまでも
5.ベースマン
6.ローヌの岸辺
7.雨の散歩道
8.スランプは底なし
9.彼女がタバコをやめない理由
10.投げキッスをあげるよ(韓国語バージョン)
11.teen's
12.Life Is Party
13.Sunrise&Sunset
14.ハッピーエンド
15.コーラとあの子の思い出は
16.君の愛する歌
17.16
18.あの日の約束通りに
19.夕暮れのハイ
EN1.1984
EN2.ゆうちゃん
EN3.サイン
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- アーティスト:小山田壮平
- 発売日: 2020/08/26
- メディア: CD
