やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)
東京ガーデンシアターで行われた、ずっと真夜中でいいのに。のライブ。初のアリーナワンマン2デイズ。

開演前からシュールな空気が会場内に満ちていた。
ステージセットは「ZUTOMAYO MART」と書かれたファミ○ーマートに似た看板と、コンビニの形をした廃墟のようにボロボロな建物。
不思議な世界観でシュール。SEは突風が吹くような轟音が流れていて、それもシュール。
開演時間になるとバンドメンバーは初期のLUNA SEAみたいなルックスで登場した。戸惑いながら拍手をする客席。
↑初期のLUNASEA
そしてバンドだけでハードロック調のセッションを始める。戸惑いつつも再び拍手をする客席。
初期のLUNA SEAみたいなルックスのキーボードの村山潤が、ファミ○ーマートの入店音を演奏すると、建物のセットからACAねが出てくる。
シュールな登場方法。動揺しつつも拍手をする客席。もう、ずっとシュール。
今回のツアーは『過酷な砂漠のコンビニに集まる田舎のヤンキー』がテーマです。
地元でコンビニの前にヤンキーがたむろしているのが当時怖かったんでけど、服装にもこだわって自転車も改造したりと、今しかできないことをやっている姿に憧れていました。
その憧れを表現しようとした結果が、これです。
ACAねの最初のMCもシュールだった。常人には理解が難しい。客席は反応に困っているようだった。
笑うところなのだろうか。しかしコロナ禍で感染症対策が徹底して開催しているライブ。声を出すことが禁止されているので、笑い声も出すわけにはいかない。
笑う代わりに拍手で応える客席。このMCに盛大な拍手が贈られる。シュールな空気感。しかしこれでシュールなコンセプトの理由は判明した。
ボーカルのACAねも何故か一緒に拍手する。自身のトークとコンセプトへの自画自賛だろうか。シュールさが加速する。
前半
このシュールさも狙っていることなのだろう。
あまりのシュールさに感情がぐちゃぐちゃになりつつも、ステージから目が離せなくなる。最初からしっかりと世界観を構築できているということだ。
音楽以外の部分が全てシュールだからこそ、音楽の凄みが際立っていたとも言える。バンドが演奏し始めた瞬間に、ACAねが歌い始めた瞬間に、空気が変わった。
その空気はシュールなものではない。全員が音楽に圧倒させられているような空気感だ。
1曲目の『K BOMBER』から5曲目の『マイノリティ脈絡』までメドレーのように曲間なしで歌と演奏をつなげていく。音を浴びせるような、叩きつけるような演奏と歌。
バンドメンバーの動き一つひとつが計算されているかと思うぐらいに美しくてクール。ACAねは全身で歌っているかのように身体でも動かし歌う。
『低血ボルト』ではギターをかき鳴らすACAね。バンドはツインピアノで弾き倒す。
『マイノリティ脈絡』ではテレビドラムも加わる。
他のバンドではライブで使われることが珍しい楽器だ。この音が加わることでより楽曲の音が個性的になる。珍しい楽器ということもあり、音だけでな見た目も印象的だ。
他にもオープンリール式のテープレコーダーを楽器として使用していた。演奏しているのはOpen Reel Ensembleというグループらしい。
彼らの演奏によって演奏が他とは違う個性的なものになるだけでなく、観たことがない楽器の演奏が新鮮に感じ、よりステージに引き込まれる。
「新曲を」と紹介してから『勘ぐれい』へと続ける。ミドルテンポの演奏と歌が心地よい。ベースのスラップ奏法とテレビドラムによって独特ながら心地良いビートになっていた。
次の曲は美しいメロディと切ない歌詞を繊細に歌う『マリンブルーの庭園』。タイトル通りにマリンブルーの幻想的な照明に照らされるステージが綺麗だ。
この曲の後半ではまた見慣れない楽器が登場した。扇風機の形をした楽器だ。
それをACAねがギターのように抱えて演奏する。エレクトリックファンという名前の楽器らしい。
歪んだギターのような音だが、ギターとも違う不思議な音。この楽器はずとまよ以外で使っていアーティストを見たことがない。
楽器にもこだわることで、ずとまよにしか出せない音と世界観を構築しているのだろう。
ACAねが建物の上に登り「しゃもじ用意」とささやいてから『雲丹と栗』の演奏が始まる。

客席がグッズのしゃもじを叩いたり、手拍子をする。ここまでひたすら歌と演奏に圧倒させられたが、これは観客参加型の曲。ライブならではの一体感が生まれる。
ヤンキーの格好をしたバンドメンバーがアイドルのように可愛らしく揺れたり踊ったりしている。ステージに設置された大砲のボタンをACAねが押して、そこからリング状の煙が大量に飛び出る。
演奏の凄さで忘れていたが、やはり今回のライブコンセプトはシュールだ。
前半全
後半
ACAねがマイクスタンドの横に置いてあるパソコンのキーボードを打つ。その音がスピーカーから流れる。こんなものまで楽器にして音楽に取り込んでしまう。
そんな演出から始まったのは『Ham』。
美しいピアノの旋律が印象的なミドルテンポの楽曲。会場を切ない雰囲気で満たした後は、バンドのグルーヴを強く感じる『サターン』を演奏した。
サビでのオーケストラヒットを多用する演奏がクール。後半には長めのバンドセッションが行われた。それを聴きながらACAねは緩いダンスを踊っていた。
ずとまよはACAねのソロユニットということにはなっているが、ライブを見るとバンドと呼んだ方が正しいのではと思うほどに、演奏から一体感を感じる。
ステージの上にミラーボールが出てきて、演奏に合わせて回り始めた。曲は『MILABO』。
会場全体をミラーボールの光が会場全体を照らす。それを観て手拍子をする客席。再び客席とメンバーが一つになるような一体感が生まれた。
「みんな元気そうで嬉しいです。ご飯は食べましたか?お風呂には入りましたか?髪は切りましたか?わたしは週に4回ラーメンを食べています。」
音楽が凄すぎて忘れていたが、ACAねのMCはシュールだった。
観客は声を出せないので、彼女の全ての言葉に拍手で応える。「週に4回ラーメン食べています」と言って盛大な拍手が鳴り響く。何故か本人も一緒に拍手をしていた。ラーメンをたくさん食べたことへの自画自賛だろうか。シュール。
そんなシュールなMCの後に歌われたのは、まさかのバラード。『Dear Mr「F」』である。
椅子に座ったACAねがピアノの旋律に合わせて繊細な表現で歌う。シュールなMCの雰囲気を一瞬で塗り替えた。
そしてテレビドラムのリズムに合わせてポエトリーリーディングをする『眩しいDNAだけ』へと繋げる。後半に向かって盛り上がっていく演奏が印象的だ。
曲間なしで代表曲『秒針を噛む』が始まる。この曲ではACAねもギターをかき鳴らす。
最後のサビ前には〈このまま奪って隠して忘れたい〉をコールアンドレスポンスすることがライブのお約束だった。
しかしこのご時世だから声を出すことができない。そのため〈奪って隠して忘れたい〉の部分を観客に手拍子をさせるという演出に変更されていた。
アリーナということもあり4階席から階数で順番に手拍子をさせたかったのだろう。「一番上」「その下の階」と煽っていたが、上手く伝わらなかったのか常に全体が手拍子してしまっていた。
ACAねは心が折れたのか、途中で諦めて「みんなで」と早めに切り上げた。少しかわいそうだけど、少しかわいい。そして、シュール。
しかしその悔しさと切なさを歌に込めたのだろうか、その後の感情を振り絞るような叫びはとんでもない声量だった。圧倒させられて鳥肌が立つ。その姿はシュールではなくクール。
ACAねが指揮者のように腕を振り、バンドメンバーがそれに合わせて笛を吹く。
ヤンキー菅田のメンバーは、笛の演奏を途中で失敗してやり直したりと、その姿は可愛らしくもシュール。そんな空気を作り出してから『正義』演奏。
オープンリールを演奏する両脇の2人は「正義」と書かれたビニール傘を広げたりと、音だけでなくパフォーマンスでも盛り上げる。ライブの後半に向けて客席の雰囲気もどんどん温まっていく。
そのまま畳がけるように『脳裏上のクラッカー』へ。イントロが鳴ると客席から大きな音の手拍子が巻き起こる。
しかしACAねが途中で演奏を止めた。そして「言い忘れました」と言って喋り出した。
「こういう状況なのに会えて嬉しいです。来たかったけど諦めた人がいることも、家族や周りの人に止められて来れなかった人がいることも、Twitterでツイートしている人がいたので知っています。今日会えた人も、来れなかった人も仲間です」
震える声で話していた。感極まっているようだった。
そして曲名を叫んでから『脳裏上のクラッカー』が再び始まる。彼女の想いに心を打たれたからか、さらに手拍子の音が大きくなっていた。
中盤にはバンドがソロプレイで演奏を繋ぐ。今回はハードロック調の激しいソロプレイだ。
ACAねもエレクトリックファンを再び掲げて弾き倒す。そして叫ぶように、魂を込めるように感情的に歌う。
彼女はめちゃくちゃ歌唱力が高い。歌が乱れることは滅多にない。それれもこの曲の時だけは、少しだけ声がかすれていた。
それに胸が打たれた。歌は技術も大切ではあるが、想いが伝わるかどうかが最も大切なのだと改めて思う。
アンコール
アンコールに応えて再びステージに登場したずっと真夜中でいいのに。
ACAねの繊細な歌声から演奏がはじまる『暗く黒く』からアンコールをスタート。
映画『さんかく窓の外側は夜』の主題歌になる新曲だ。後半につれ展開が目まぐるしく変わるプログレ的な演奏が衝撃的。
「色々と制限がある中で、ライブに来ることを選んでくれたことが嬉しいです。改めてライブをやることは当たり前じゃないと思いました。どんな形でもライブは続けていきたいと思います」
「約束のネバーランドには影響を強く受けていたので、主題歌を作れて嬉しいです」と話してから、映画『約束のネバーランド』の主題歌になる新曲『正しくなれない』を演奏した。
「最後の曲です!ありがとう!」
そう言って最後に演奏されたのは『お勉強しといてよ』。<ヤンキーヤンキーだ>という歌詞がある通り、今回のツアータイトルの由来にもなった楽曲。
キャッチーなメロディなのに、演奏は複で難解な楽曲。そのバランスが個性的で魅力的。ライブだとより演奏と歌声の凄さが際立つ。
ACAねは『お勉強しといてよ』を歌っている時、何度も間奏で「ありがとう」と言っていた。ライブ中は何度もファンのことを「仲間のドクロ」と呼んでいた。
コロナ禍でも集まってくれるファンが居たことや、ライブができることが当たり前でないこと、人前で歌って演奏できる喜びを噛み締めていたのかもしれない。
ステージを去る時にACAねが呟いた「またね」という言葉。
それは今までなら何気ない一言だったのかもしれないが、今では特別な言葉になってしまった。
特別な意味を持つ言葉になったことが、良いことなのか悪いことなのかはわからない。
でも希望を与えてくれる言葉であることは確かだ。
終演後にスクリーンにはバンドメンバーを紹介する映像が流れた。映像の最後にはACAねのメッセージが映された。
そこには「ライブをやるべきか、やっても良いのか」について何度も悩んだ末に、行うことを決断したということと、「次に会う時まで健康でいようね」とも書かれていた。
それはこれからも生で音楽を聴ける環境を守るためにも、感染症対策を徹底していこうというメッセージでもあるはずだ。
世間的に音楽は生活に必要がないものである。なくても困らない人の方が世の中には多い。
だから国難の時は真っ先に規制されてしまう。規制が解除されて再開されるのは他の業種も比べると最も遅い。
だから音楽を愛する人こそ、感染症対策を徹底しなければならないし、健康で居続ける必要がある。
音楽は楽しいしライブも危険ではないことを、受け取る側の自分たちも証明しなければならない。ライブが観れることは当たり前ではないし、いつ奪われてもおかしくないのだ。
ずっと真夜中でいいのに。のライブが、問題なく行われる世界がずっと続けばいいのに。
そう思いながら音楽やライブと向き合いたい。

ずっと真夜中でいいのに。 やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編) @東京ガーデンシアター
■セットリスト
1.JK BOMBER
2.こんなこと騒動
3.勘冴えて悔しいわ
4.低血ボルト
5.マイノリティ脈絡
6.勘ぐれい
7.マリンブルーの庭園
8.雲丹と栗
9.Ham
10.サターン
11.MILABO
12.Dear Mr「F」
13.眩しいDNAだけ
14.秒針を噛む
15.正義
16.脳裏上のクラッカー
EN1.暗く黒く
EN2.正しくなれない(29日のみ)
EN3.お勉強しといてよ
- アーティスト:ずっと真夜中でいいのに。
- 発売日: 2021/02/10
- メディア: CD


