約7ヶ月ぶりのライブ
ネクライトーキーのライブが開演する前に、ギターの朝日による注意事項を告げるアナウンスが流れた。
コロナ禍になる前よりも、ずっと注意事項が多く、長いアナウンスだった。
今日だけでなく、これからもライブを続けていくためにもご協力をお願いします
注意事項を告げた後の、この言葉が印象的だった。
このご時世でライブをやる意味や想いがこもった言葉である。観客はそれを真剣に聞いていた。
そのため会場に集まった人は全員、注意すべき内容や意味、この時期にライブを成功させるために観客がやるべきことを、しっかり理解した上でライブを楽しんでいたと思う。

バンドも観客も制限がかかった中でも、心の底から音楽を楽しもうとしていた。
だからネクライトーキーの初の日比谷野外音楽堂で行われた『ゴーゴートーキーズ!2020野外音楽堂編』は最高のライブになったのだ。
自主制作盤しか出していない頃から自分はネクライトーキーのライブには行っていて、何度もライブを観ていた。
その中でも今日がベストアクトと言えるほどに素晴らしかった。演奏だけでなく、お客さんの空気感も含めてベストに思う。
前半
「ようこそ!」という掛け声が印象的な登場SEと共にメンバーが登場。ステージ後方に「ネ」と書かれたライブ幕が少しずつ上昇していく。
普段のライブならば観客から大きな歓声が湧き上がるタイミング。ネクライトーキーのライブは、ファンからの声援や掛け声が多いライブだった。
しかし今日は誰も声を出さない。
今日のライブを成功させるために、これからもライブを安全にライブを実施させるために、感染症対策のルールをしっかり守っている。
その代わりいつも以上に大きくて盛大な拍手をバンドに贈っていた。
それはSEの時だけではない。演奏中や演奏を終えた後の拍手も長かった。色々と制限をされている中で、ロックバンドのライブを成立させるために観客も考えて行動していた。
バンドはいつものライブと同じように演奏をする。落ち着いた演奏をしようとする感じなどない。
集まったファンを信用しているのだと思う。どんな状況下でも成立するライブをやり遂げることに自信があるのかもしれない。
『虫がいる』『夢見るドブネズミ』と最新アルバム『ZOO』からアップテンポな楽曲を続ける。それに対して観客は声援の代わりに拳や手拍子で応える。
「ネクライトーキーです!よろしく!」とボーカルのもっさが叫んでから『めっちゃかわいいうた』へ。
かわいいというよりもカッコいいキレッキレの演奏。
〈臨兵闘者皆陣烈〉というフレーズは普段ならファンも一緒に叫んでいるが今日は誰も叫ばない。その代わり拳をあげて応える。
そして『音楽が嫌いな女の子』とアップテンポの楽曲を続ける。序盤からクライマックスかと思うような熱量と盛り上がりだ。
「お久しぶりです。忘れてるかもしれないけれど、ネクライトーキーです。よろしく」
コロナ禍になってからは初めて客前に立つからこそのMC。忘れているはずがないし、忘れられないからみんなライブに来たのだ。それを伝えるように温かな拍手が贈られる。
久々のMCで緊張しているのか、メンバー同士の会話もぎこちない。
ベースの藤田が「久しぶりなのに、もっと話さなくていいの?」ともっさに尋ねるが、早く音楽を鳴らしたいという気持ちと久々のMCの照れ臭さからか「もう、やりましょう」と応えて早々と演奏の準備をする。
バンドとしてはまだ未音源の楽曲『壊れぬハートが欲しいのだ』でライブを再開。
フジファブリックの影響を強く感じる『タイフー』へと間髪入れずに続け、個性で溢れた演奏で魅了する。勢いだけでなく独特なフレーズを組み合わせた演奏もバンドの強みだ。
真夏のピークが去って秋になった近頃。秋の放課後について歌ったフレーズがある『放課後の記憶』はこの時期に野外で聴くと、シチュエーションとベストマッチで最高だ。ミドルテンポの落ち着いた演奏が秋風と合わさると心地よい。
ドラムに合わせてキーボードの中村郁香が手拍子を煽る。会場全体が手拍子の大きな音で包まれる。
手拍子に合わせて始まったのは『だけじゃないBABY』。客席全体が気持ちよさそうに体を横に揺らすようなリズム。間奏では藤田も手拍子を煽ったりと、バンドと客席との一体感がより強まっていく。
もっさがしみじみと「虫の声がするのがいいね」とつぶやき曲が始まる。次の曲は『夏の暮れに』。
うだるような暑さも 五月蝿い蝉の声も
気がついたら終わっていた(ネクライトーキー / 夏の暮れに)
虫の声が聞こえるといいつつも、虫の声が聞こえなくなったことを最初のフレーズで歌う。
それでも夏の終わりの野外で聴くからこそ映える楽曲。薄暗く野外ステージを明るく美しい照明が照らす。
『夕暮れ先生』を叫ぶように歌い、荒々しくロックな演奏で届ける。薄暗い空がどんどん暗くなる。すっかり夜だ。
夕暮れ先生もいなくなってしまったであろう夜。疾走感ある楽曲だが、シチュエーションも重なり切なさが増す。
ミドルテンポながら重低音響く重い音が響く。説明もなしに新曲を披露した。
観客の反応が先ほどまでと違い驚いた様子になるが、すぐに全員が自然と音に身を任せる。新曲は今までのネクライトーキーにありそうでなかったタイプの、奥田民生が歌っていそうなミドルテンポの渋いロックだ。
後半
もっさがゆっくりと朝日に近づいていく。そしてギターの音量つまみを少しづつあげていく。ギターの音が少しづつ大きくなる。
次の曲は『許せ!服部』。ライブの定番曲で毎回音源とは違うアレンジで演奏される曲だ。
前半は音源通りに演奏したが、1番を歌い終わってから朝日が「騒ぐな!」と叫びコロナ禍だからこその煽り方で客席を盛り上げる。
それを合図にBPMは早くなり演奏も疾走感を増す。観客のノリもどんどん激しくなる。
中盤でもっさはギターを置き「CD」「ライブ」と書かれたパネルを裏から持ってきた。
そのパネルを旗揚げゲームのように、交互に上げ下げをする。「CD」のパネルが上がれば音源通りの演奏を行い「ライブ」のパネルが上がれば、ライブアレンジで演奏をする。
パネルが上下するタイミングはもっさのさじ加減で決まる。どのタイミングで変わるかはわからない。
それでもバンドは乱れることなくパネルに書かれた通りの演奏をする。演奏の凄さに対して観客は歓声の代わりに盛大な拍手で応える。
中村がショルダーキーボードを持って前に出てきてキーボードソロを披露。それに対して掛け合いをするように藤田がベースソロを弾く。
二人のソロが交互に続く。それに対して観客はさらに盛大な拍手をする。
そしてカズマ・タケイのドラムソロへと続く。さらに観客は興奮し拍手の音が大きくなる。メンバーの演奏力の高さをこれでもかと見せつけられるパフォーマンスだ。
ドラムソロが終わるとまた全員でのセッションへ。ドラム以外のメンバーが台の上に乗って演奏する。各自の演奏力があるだけでなく、5人が組み合わさった時に唯一無二の演奏になるし、魅せ方にも拘っているのだ。
曲の後半に進むにつれ、どんどんテンションの高い演奏になり、テンションか高いまま演奏が終わる。盛り上がりについてはハイライトといえる演奏だ。
「最初のころはあんなに長いと思っていた服部も、今ではこれが普通の長さか」ともっさが苦笑いしながら話す。
ライブをやるごとに進化していった楽曲。だんだんと演奏時間も長くなっているのかもしれない。
「服部は音源通りにライブでやったことはないからない。でも家で聴くなら音源のアレンジがベストだと思う」と話す朝日。ライブでは特に重要な曲であることがわかるエピソードだ。
朝日が「ぽんぽこ族の族長もっさ」と謎の紹介をして、強引に『ぽんぽこ節』へと繋げる。
演奏は可愛らしいのにボーカルはエモーショナル。
もっさが最も叫ぶ楽曲だ。特に〈人の分際で偉そうに〉というフレーズを叫ぶ声には鳥肌が立つ。
紫の妖艶な照明に包まれながら『渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進』を芯のある演奏でしっとりと届けた。
演奏を終えると少しの間が空く。会場が静まり返る。虫の声と車が走る音が遠くから聞こえる。
その音をゆっくりとかき消すように中村がピアノを奏でる。それに合わせて丁寧にもっさが歌う。
次の曲は『深夜とコンビニ』。切ないロックバラード。
さきほどまで盛り上がっていた観客も静かに聴き入る。秋風に乗った優しい演奏が日比谷公園に響く。
演奏を終えると切ない余韻まで丁寧に扱うように長い間を空ける。
そしてピコピコした電子音の演奏が始まる。ポップで明るいミドルテンポの曲。でもメロディは切ない。聴いたことない曲だ。またもや説明もなしに新曲が始まった。
こちらも今までにないタイプの音色の楽曲。コロナの影響でライブができなかった時期は、新曲を続々と作っていたのかもしれない。
「今日は会場に来るまでは時間がかかったのに、ライブは時間がすぎるのは圧倒いう間やな」
名残惜しそうにもっさが語る。もうすぐライブが終わることを示唆するように。
「色々あったけど、生きて音楽やれているから良しとしましょう。今日はありがとうございます」
朝日の言葉を聞いて、様々なことを考えてしまった。
コロナ禍のこと。ライブに来た自分の判断について。午前中に亡くなったニュースが流れた俳優のこと。などなど。
明日にだって 明日があって
諦めの悪い僕らが笑うのさ(ネクライトーキー / 明日にだって)
『明日にだって』のサビで叫ぶもっさ。魂を込めて歌っているように聴こえた。
その歌声や演奏が胸に突き刺さる。ネクライトーキーの歌は希望にあふれた曲ばかりではないけれど、確実にリスナーに力をくれる音楽だ。
「こんがらがった!」ともっさが叫び『こんがらがった』へ。
ラストスパートをかけるように盛り上がりが加速する。サビで手拍子する観客。生のライブだからこその一体感。そして海外でバズった『北上のススメ』でさらに盛り上げた。
「今日はありがとうございました!」ともっさが挨拶してから、最後にに演奏されたのは『朝焼けの中で』。
いつも以上に伸びやかなもっさの歌声が、都会の空を突き抜けていく。演奏とそれに合わせた観客の手拍子が、日比谷公園を包み込む。
生きてるふりを続けていく途中で
君がいるならマシと思うから
朝焼けの中(ネクライトーキー / 朝焼けの中で)
なぜか今日は『朝焼けの中で』の歌詞が、よりいっそう胸に響く。音楽に救われた気持ちになった。
「ありがとうございました」とやりきった表情で挨拶するもっさ。
そしてステージを後にするメンバー。盛大な拍手がバンドに贈られる。そしてすぐにアンコールを求める手拍子が発生した。
アンコール
アンコールに応えて再びステージに現れたメンバー。
「大阪と東京の野音でライブをやって一段楽と思いきや、12月からツアーをやります!」と話しライブハウスでのワンマンツアーを行うことを伝える。
今まで通りにライブを行うことが、まだまだ難しい世の中。それでもネクライトーキーは歩みを止めずにライブを行おうとしている。音楽を鳴らし続けようとしている。
きっとファンのことを信用しているからこそ決断したことだ。
ライブツアーの発表がされても声援も歓声も出さず、盛大な拍手が巻き起こっていた。ファンもこの状況下で今日だけでなく将来的にも、ライブを成立させるための行動を考えている。
「初のアニメタイアップ」と紹介してから、新曲『誰がためにCHAKAPOKOは鳴る』を披露。サビでひたすら〈チャカポコ〉と繰り返すユーモア溢れた楽曲。
本来なら客席とのコールアンドレスポンスで盛り上がるであろう曲かもしれない。しかし今日は拳をあげてファンは応える。
ライブ初披露ながら、今後キラーチューンになると思えるような盛り上がりだ。
「5、4、3、2、1、ファイヤー!」とMVと同じカウントをしてから代表曲『オシャレ大作戦』を間髪入れずに続ける。
サビでは〈日比谷でヘヘイヘイ〉と歌詞を変えて歌う。それに拍手で応える観客。
「最後の曲です!」と言ってライブの最後に毎回演奏している『遠吠えのサンセット』へ。最高のライブが終わってしまう。
「みんな、今日は来てくれて、本当にありがとう!」
間奏でもっさが笑顔で話した言葉。コロナ禍だからこそ想いがこもっていて、重い言葉に聞こえる。
今までのように気軽にライブに行こうと思える人が少なくなってしまったかもしれない。
この日だって悩んだ末にライブに行く決断をした人もいるはずだ。逆にライブに行かない選択をしたファンもいたと思う。
目の前でバンドが演奏してくれることは当たり前ではない。音楽を鳴らしてくれることは普通のことではない。特別で貴重なことだ。それはコロナによって、より強く感じることになった。
しかしバンドがライブを行うことが当然で、好きな音楽を気軽に聴きに行ける世の中が普通と思えるような世の中になって欲しいと思う。
去年まではライブはもっと身近なものだったのに、特別なことになってしまった。時には恐怖を感じるものになってしまった。
でもネクライトーキーのライブを観ていると、ライブが当然に行われて、安心してみんなが楽しめる世の中は必ず戻ってくると確信を持てた。
バンドは今まで通りに最高のロックンロールを鳴らしてくれる。様々な制限ができてしまったものの、それでも成立させるために全員が協力して、今まで通りに心の底から音楽を楽しむファンがいる。
この信頼関係があれば、ライブは今後も続いていくだろうし、音楽は鳴り止まないはずだ。
日比谷野外音楽堂で行われたネクライトーキーのライブは、バンドとファンの信頼関係を感じるものだった。だから最高のライブになったし、コロナ禍でもロックバンドはライブをやれることを証明できた。
そんな余韻に浸っていると、涙は見せない主義だけど、夕暮れではなくネクライトーキーの音楽が目に染みるぜ。
2020.9/27 ネクライトーキー@日比谷野外音楽堂「ゴーゴートーキーズ!2020野外音楽堂編」@日比谷野外音楽堂
▪️セットリスト
1.虫がいる
2.夢みるドブネズミ
3.めっちゃかわいいうた
4.音楽が嫌いな女の子
5.壊れぬハートが欲しいのだ
6.タイフー!
7.放課後の記憶
8.だけじゃないBABY
9.夏の暮れに
10.夕暮れ先生
11.新曲
12.許せ!服部
13.ぽんぽこ節
14.渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進
15.深夜とコンビニ
16.新曲
17.明日にだって
18.こんがらがった!
19.北上のススメ
20.朝焼けの中で
EN1.誰がためにCHAKAPOKOは鳴る
EN2.オシャレ大作戦
EN3.遠吠えのサンセット
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