BEAT CRUSADERSを聴きたくなった
自然すぎて最初気付かなかった
— ク ボ タ マ サ ヒ コ (@KUBOTA_MASAHIKO) 2020年6月12日
イモさん🤣 https://t.co/vZexOVaDTi
このツイートを観てからBEAT CRUSADERSを無性に聴きたくなって、ずっとヘビーローテーションしている。どうやらビークルを改めて聴きたくなった人は自分だけではなさそうだ。
政府がまとめたガイドラインでは「出演者と客の間を2メートル空けること」、「店が狭く2メートルを確保できない場合は、フェイスシールドを着用する」、「客同士は1メートルのソーシャルディスタンス」などの内容が盛り込まれている。
政府が新型コロナ対策で作成したライブハウスの営業に関する新基準の中に「フェイスシールドを着用する」という部分がある。これでビークルを思い浮かべた人が多かったようだ。
テレビの音楽番組ではお面をつけて演奏をしていたし、メディアに登場するときはお面の姿だった。ライブ中はお面を外して演奏していたが、多くの人が「お面をしているロックバンド」というイメージをビークルに対して持っているのだと思う。そのため「フェイスガード」という言葉からビークルを想像したのだろう。
BEAT CRUSADERSは2010年に解散した。今年で解散から10年目である。
人気バンドではあったが国民的ヒット曲があるわけでもない。それなのにいまだに話題になる。リアルタイムで活動を知らない人もビークルの存在を知っていることも多い。しかし「伝説のバンド」として扱われることは少ないと思う。
それは楽曲やバンドが魅力的でありながらも、伝説になることをあえて避けるような活動だったからだ。
メロコアに分類されるビークル
BEAT CRUSADERSはパンク・メロコアに分類されることが多い。
当時はメロコアバンドがヒットチャートの上位にランクインすることもあった。そのようなバンドと交流が深かったことと、英語詞で歌うこともありメロコアに分類されたのだと思う。ファンもメロコアを聴く層が多かったように思う。
しかしビークルは「メロコア・パンク」の王道からは外れている。パンク・メロコアが音楽性の軸にあることは確かだが、音色はポップで華やか。個人的には「メロコアやパンクの衝動を持ったJ-POP」だと思っている。
メロコアはアップテンポでシンプルな演奏が特徴的で縦ノリで激しい楽曲が多い。しかしビーーくるは横ノリの曲も多いし、演奏は複雑で凝っている。
メジャーデビュー曲『HIT IN THE USA』からしても音作りは繊細だ。コーラスワークや2本のエレキギターのハーモニーは美しい。パワーコードに頼りがちな一般的なメロコアと違い様々なフレーズを弾いている。クラップの音の入れ方やドラムのリズムパターンの変化も複雑で凝っている。
ほとんどの楽曲でシンセサイザーの音が入っていること音も印象的だ。これがバンドの演奏において最も大きな個性になっている。
テレビアニメ『BLEACH』の主題歌にもなった人気曲『TONIGHT,TONIGHT,TONIGHT』では特にシセサイザーの音を効果的に使っている。サビで奏でるシンセサイザーのメロディは歌のメロディと同じぐらいに印象的で楽曲の要になっている。
しかし楽曲の持つ熱量やノリはパンク・メロコアに近い。ポップなサウンドなのにパンクの尖った雰囲気を感じる。バンドの軸はパンクでありながらも、80年代のニューウェイブの音楽性を取り入れたことが理由だろう。
シンセポップの影響
シンセポップは1970年代から80年代にかけてブームになったジャンルの一つだ。ロックに電子音楽を取り入れたクラフトワークの影響を受けた音楽ではあるが、よりポップでキャッチーなサウンドになっている。
そしてロックでありながらシンセサイザーの音が印象的に使われていることが大きな特徴だ。a-haやペットショップボーイズが代表的なアーティストである。
シンセポップはニューウェイブと呼ばれるジャンルの一種だ。複雑な演奏や洗練されて作り込まれた音楽性が一つの特徴のジャンル。それにビークルは影響を受けているのではと思う。
『GHOST』ではディミニッシュコードやオーギュメントコードを使用したコード進行にすることで音の響きや曲の印象を独特なものにするようにこだわっていた。 2本のエレキギターは違うフレーズを複雑に組み合わせることで個性的なハーモニーを作っているし、そこにシンセの音が重なることでより深みのある演奏になっている。『SOLDIERS IN MY SOUL』でグランドピアノを使用して演奏していることもパンク・メロコアとしては珍しい。
ニューウェイブは70年代前半に大きなムーブメントになっていたパンクロックへのカウンター的な音楽として70年代後半に生まれた。シンプルな演奏と楽曲構成のパンクとは真逆とも言えるジャンルだ。
パンク・メロコアとニューウェイブに当てはまるシンセポップと真逆のものを組み合わせて一つにし、ロックとしてもJ-POPとしても成立させたことがビークルの凄さに思う。
幅広い音楽性のビークル
ビークルは自身の音楽性とはジャンルが違うアーティストとコラボレーションをしていた。そこではバンドとしての音楽性の幅広さを見せていた。
髙橋瞳とコラボレーションした『珈琲ミルク』ではフレンチポップを感じる編曲だった。つじあやのとコラボレーションした『ありえないくらい奇跡』ではアコースティックで優しい編曲になっている。
しかしバンドの持っている熱量やや勢いはそのまま。そして個性もしっかりと感じる。
その個性はYOUR SONG IS GOODやASPARAGUSなどバンドとコラボレーションした時にはさらに色濃く出ている。
バンドとコラボレーションする時は自らの軸となる音楽性や個性をコラボ相手にぶつけているように感じる。まるでバンド同士で勝負しているようなコラボ。それでいてコラボ相手の個性もしっかり反映させている。
パンクの精神や音楽性を損なうことなく、様々なジャンルを取り入れて自身のものにしている部分も凄みを感じる。
しかし個人的に最もすごいと思う部分は他にある。
英語詞のメロコアでJ-POPに食い込んだビークル
ミュージックステーションなどの音楽番組にも積極的に出演していたし、マツモトキヨシのCMに出演もしていた。2000年代はロックバンドがテレビに出ることをバンドは避けていたし、ファンも積極的なメディア出演を「ダサい」と思っている風潮があった。「ブラウン管で評価されたくない」と言っているバンドもいた。オーイエヘイアハン。
しかしビークルは積極的にテレビなどのメディアに出演した。お面を被っているルックスのインパクトもあり爪痕も残していた。
ロックバンドとしてJ-POPシーンに食い込もうとして成功したように思う。パンクやメロコアが好きな人以外も聴いている人はいたし、アニメ主題歌になったことで子どものファンも多かった。
しかしルックスのインパクトだけで人気を獲得したわけではなく、様々な音楽性を取り込んでJ-POPとしても評価される音楽を作っていたことが人気を獲得した最大の理由に思う。キャラクターだけで売っているイロモノではなかった。
英語詞だけで歌うロックバンドがJ-POPとして受け入れられたことも珍しかった。ゴダイゴなど前例はあったが、全曲英語詞でJ-POPに食い込んだロックバンドはいなかったのではと思う。今は少しづつ変わってきているが、ビークルの影響が少なからずあるかもしれない。
受け入れられた大きな理由は英語をカタカナで歌う発音と、サビが簡単でわかりやすい英語詞であることに思う。
ビークルの発音や歌詞はネイティブでない日本人でも歌いやすいし意味もわかりやすい。それでいてキャッチーなメロディのサビだから覚えやすい。それらの特徴がJ-POPと相性が良く受け入れられたのだ。
しかしそれのビークルの実績や凄さはほとんど注目されない。どうしてもルックスやライブでの「お○んコール」などイロモノ的な要素が面白がられる。楽曲はなんとなく受け入れられてファンを増やした。
複雑なことや難しいことや新しいことをやっているのに、ポップなキャラクターとキャッチーなメロディで、あえて難しいことから目線を逸らさせるようにしてJ-POPシーンに食い込んだ。そして爪痕を残した。
凄いことを簡単には気づかせないようにする粋な部分と戦略的な部分が、BEAT CRUSADERSの最も凄い部分だと思う。

