今が旬のバンドの話題作
2019年のKing Gnuの勢いは凄かった。たった1年で日本の音楽シーンの中心に喰い込んできた。Mステや紅白白歌合戦に出演し誰もが知る存在になった。
今最も注目されているバンドの1つになったKing Gnu。このタイミングで最新アルバムをリリースした。
『CEREMONY』というアルバム。2018年に発表したヒット曲も収録した話題作。
「今が旬のバンドの話題作」として扱われるであろう作品。これからKing Gnuが「売れ続けるか」「一発屋扱いされるか」が決まるアルバムとも言える。
このアルバムの評価はかなり重要に思う。多くの人に期待もされているのでハードルも上がっている。
その高いハードルを簡単に飛び越えやがった。期待を超えてきた。期待に120%応えるような素晴らしいアルバムだった。
12曲収録で37分と短めのアルバムだが、内容は濃い。短くとも満足度は高い。それでいて何度も聴きたくなる。聴きどころがたくさんあるのだ。
『CEREMONY』は二面性を持ったアルバムだとも思う。「J-POPのアルバム」と「ロックバンドのアルバム」としての二面性。それなのに1つの作品としてまとまっている。
そして「話題だから聴いてみた」「通勤や通学の暇つぶしに音楽を聴く」というライトリスナーを音楽の沼に沈めるようなアルバムにも思った。
とにかくこのアルバム、すごい。
「J-POP」として文句のつけようのない前半
このアルバムは二部構成になっているように感じる。1曲目のインスト曲『開会式』から5曲目の『幕間』までが一部で、それ以降が二部になっているように思う。前半と後半で楽曲の雰囲気が違うのだ。
前半は「J-POPのド真ん中」を狙ったような楽曲が多い。歌中心の曲が多いのだ。
『どろん』はAメロ→Bメロ→サビと王道のJ-POPの楽曲構成と同じ。そのため普段はテレビで流れるヒット曲ばかり聴いている人にも馴染みやすい構成。
実質アルバムの1曲目である『どろん』。1曲目は視聴した人を作品の世界に引き込む必要がある。これはあえて「王道J-POPの構成」をすることで多くのリスナーを引き込もうとしているのだと思う。
この構成は『CEREMONY』にも収録されている大ヒット曲『白日』も同じ構成だ。メジャーデビュー後の初シングルでドラマ主題歌だった『白日』。この曲も一発で多くの人を引き込もうとした目的もあるのだと思う。
『どろん』から『Teenage Forever』の流れも見事に思う。この曲も求心力が強い。どこがサビなのかわからないぐらいに全ての歌メロがキャッチーなのだ。
サビが複数あるとも言えるような構成。聴いていると無意識に「ティティティティティティ♪」と歌いそうになるキャッチーさ。TT兄弟の好感度が上がる。
『ユーモア』は打ち込みの音が目立つR&B。アルバム内では異質な曲でもあるが、メロディは他の曲と同様にキャッチー。この曲によって普段はバンドを聴かない層もKing Gnuの魅力を感じるのではと思う。
前半の4曲だけでも様々な方向性の楽曲がある。別のジャンルの4曲が集まったとも思える。
しかしこの4曲には共通点があるのだ。
前半4曲の共通点
『どろん』から『白日』までの前半4曲は、全て「歌」から曲が始まる。最初のイントロがない。
インストよりも歌モノが好きな音楽リスナーは多いと思う。オリコンやビルボードのランキング上位は歌モノばかり。歌を求める人が多いのだ。
イントロなしで歌から始まることで、インパクトを与えることができる。多くの音楽リスナーが好きな歌をすぐに聴かせることができる。そのため曲を聴いてもらいやすくなる。
『どろん』から『ユーモア』までは間奏もほどんどない。常に歌やボーカルのフェイクがあったりと、人の声が入り続けている。
『白日』のみ間奏があるが、これは他の曲が3分台の短さに対して『白日』は4分を超えるからだと思う。曲の展開を変化させて飽きさせないための工夫だ。
つまり前半は「歌」に自然と注目してしまう曲が並んでいるということだ。 J-POPとして大衆に向けて刺さる音楽を目指しているように感じる。2019年にファンになった人たちの期待に応えるであろう曲が並んでいる。
しかし後半は、前半とは違う印象の曲が並んでいる。
「ロックバンド」として文句のつけようのない後半
インタールド曲の『幕間』を挟んで始まる後半。ここからは前半とは違う系統の楽曲が続く。
前半はイントロなしで歌から始まる曲ばかりだったが、後半は『飛行艇』から最後の『壇上』まで全曲イントロがある。前半は『白日』以外は間奏がなかったが、後半は全曲間奏がある。
後半は「歌」よりも「演奏」の魅力が際立つ楽曲が並んでいるのだ。
『飛行艇』はAメロからサビに行く構成。洋楽で多くみられるヴァース・コーラス形式だ。リズムも一定で大な展開はない。BPMも遅い。シンプルな構成だからか演奏の魅力が際立つ。
しかしメロディはキャッチー。サビの歌詞のフレーズは頭に残る。洋楽的な作りでありながら、J-POPの要素を取り入れている。
次に続く『小さな惑星』は『飛行艇』とは違い複雑な構成。リズムパターンも独特。『飛行艇』から続くことで、King Gnuの演奏の表現方法の幅広さをより感じる。
後半で1曲だけ系統が違う曲がある。配信限定シングルにもなった『傘』だ。
この曲はAメロ→Bメロ→サビの構成。Bメロが三連符で少しづつ盛り上げていく展開も「王道J-POP的」とも言える。アルバム前半の歌中心の楽曲の並びに入れても違和感はない。
しかしこの曲も歌以上に演奏を魅力的に感じる。前半のJ-POP的な楽曲とは違いイントロも間奏もある。そのイントロや間奏の演奏も印象的だ。
中盤の間奏ではサビの歌メロと同じメロディをギターが弾いてる。そのためサビのメロディが頭から離れない。演奏が強いからこそ歌を演奏でサポートしているように思う。
アルバムの前半と後半では目的が違うように感じるが、共通している部分はある。
歌のメロディがキャッチーな部分だ。歌謡曲やJ-POPを感じるような音階が上下するメロディ。サビの歌詞の当てはめ方も心地よい。
複雑なことをしたとしても、難解な音楽にはしない。複雑なこともわかりやすい音楽に変えてしまう。多くの人が気になってしまうフックがある。だから紅白歌合戦にも出場できたのだ。
J-POPに喰い込むのではなくJ-POPを作っていく存在
『CEREMONY』はJ-POPのアルバムとしてもロックバンドのアルバムとしても素晴らしい名盤に思う。音楽ファンは完成度の高い楽曲に唸ってしまう。普段は音楽を聴かない人も音楽の沼に沈めてしまう。そんな作品に思う。
「話題だから聴いてみよう」「通勤や通学の暇つぶしに音楽聴く」
このような人たちを「歌」の魅力を際立たせた前半で引き込む。「白日だけじゃなくて良い曲がある」と思わせる。
「演奏」の魅力を際立たせた後半で刺激を与える。キャッチーな歌メロは前半同様なので聴きやすいが、歌以外の魅力も気付きやすくなっている後半。「歌だけじゃなくて演奏もかっこいい」と思わせる。
King Gnuは「音楽の素晴らしさ」を伝えてくれるバンドに思う。『CEREMONY』は特にそのような作品で、音楽にあまり興味がなかったり熱心に聴かない人たちに音楽の魅力を全力で伝えてくれている作品に思う。
実質アルバム最後の曲である『壇上』。常田のみで歌うピアノが印象的なバラード。この曲からはスタジアム規模で鳴らされている光景が目に浮かぶような壮大な楽曲。むしろアリーナ以上の規模でなければ似合わない曲にも思う。そして今のKing Gnuにはそれだけ多くの人を魅了する力を持っている。
このような曲をメジャーデビュー2年目のバンドが出すということに、これからの日本の音楽シーンを背負っていくという覚悟すら感じる。
2020年以降のKing Gnuは「J-POPシーンに喰い込んでヒット曲を出したロックバンド」ではなく「新しいJ-POPシーンを作るロックバンド」になるはずだ。『壇上』を聴き、確信する。
そして改めて、井口理の去年のツイートを思い出す。下のツイートに貼り付けられた動画を見て欲しい。
— 井口理 (@Satoru_191) 2019年1月20日
この動画は「新しいJ-POPシーン作るとはどういうことなのか」ということが伝わる動画だ。そもそもバンド名に「ヌー」という言葉が入っている時点で気づくべきだったのだ。
最初から「そっちの」ファンを獲得することを狙っていたのだ。しかも「キング」までつけている。最初から「そっちでも」カリスマになることを狙っていたのだ。

2020年以降のKing Gnuは、動物にも好かれるロックバンドとして、さらなる大ヒットを飛ばすことだろう。
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