きのこ帝国は人生を捧げてきたバンド
きのこ帝国は人生を捧げてきたバンドです。だから自分たちの決断に後悔はないし、全員が前に進むための決断でした。
日本橋三井ホールで行われた佐藤千亜妃のワンマンライブでのMC。
佐藤千亜妃は言葉を選びながら、ゆっくり話していた。フロアのファンは聞き逃さないようにと、集中して話を聴いていた。
でも1人で音楽をやることはバンドとは活動方法が180度違って、不安になって寝れない夜もありました。今こうして歌えているのは、ここに集まってくれた皆さんのおかげです。ありがとうございます。
5月に活動休止を発表した自身のバンド・きのこ帝国への想いと、ソロ活動とファンへの想いを語っていた。途中言葉に詰まる場面もあった。それでも思いの伝わる言葉だった。
自分の今までの人生があったからこそ生まれた曲です。
思いの丈を話してから『空から落ちる星のように』を演奏し歌った。今回のツアータイトルはこの曲のタイトルを引用している。特別な曲なのだと思う。
ハンドマイクで感情をぶつけるように歌う。その姿は「歌姫」と呼んでも過言ではない佇まい。常にギターを弾きながら歌っていたきのこ帝国では見せていなかった姿だ。
ドラマーのboboを初めとした実力も人気も兼ね備えたミュージシャンをバックバンドに従えている。その演奏にも負けないどころか、彼女の歌声で引っ張っている。
みなさん、今年は楽しかったですか?半分ぐらいしか手が上がってない(笑)でもそうだよね。人生色々あるもんね
歌声を聴きながら中盤のMCを思い出した。 バンドの活動休止を決断し、ソロ活動に専念した佐藤千亜妃。何もかもが思い描いた通りに進められているわけではないのかもしれない。
佐藤千亜妃のワンマンライブはきのこ帝国のライブとは雰囲気は違った。歌の表現法方も違った。しかしバンドとは違う魅力で溢れた、素晴らしいライブだった。
ソロで活動することへの覚悟と想い。それによってソロでも素晴らしいライブを成立させているのだと思う。
きのこ帝国とは違う魅力
きのこ帝国は様々な音楽性を取り入れていたバンドだ。しかし基本はロックを軸にした上で他のジャンルを取り入れ、ロックバンドとして音楽を鳴らしていた。
ソロ活動の軸はロックではない。楽曲ごとに軸を変えているような感じ。元々はきのこ帝国とは違う音楽をやるつもりで、バンドとは違う軸の音楽に挑戦していたように思う。
ライブの前半はR&Bやポップスを軸にした楽曲が多かった。ギターを持たずにハンドマイクでステージを動きながら歌う。
『FAKE/romance』はきのこ帝国にはなかった方向性のポップス。それでも佐藤千亜妃の声は、きのこ帝国の頃と同様に魅力的。客席とコールアンドレスポンスもしながら、ゆっくりと盛り上げていく。
歌唱方法はきのこ帝国とも少し違う。裏声も多様していた。表情も穏やかで笑顔も見せながら歌っていた。彼女の醸し出す雰囲気と楽曲持つ性質が相性が良く、歌声と演奏を音源以上に心地よく感じる。
アコースティックギターを爪弾きながら歌った『lak』は特に心地よく音が胸に沁みいる。そのままエレクトロアレンジが印象的な『Summer Gate』で会場全体をメロウなリズムで包み込む。
『Summer Gate』は今の佐藤千亜妃にとってのキラーチューンだと思う。盛り上げるような曲ではない。かといって感動的なバラードと言うわけでもない。その代わり空気を一瞬で変えてしあうような凄みがある曲に思う。
曲の持つ力もあるが、佐藤千亜妃のボーカリストとしての表現力の高さを感じる曲にも思う。
『Summer Gate』は2018年の楽曲。きのこ帝国の活動中には存在していた楽曲だ。しかしリリース当初のライブでの歌よりも、ずっと表現力豊かで胸に沁みいる歌になっている。佐藤千亜妃のボーカルが進化したことで、楽曲の魅力がより引き立つようになった。
ソロ活動を始めて「不安になって寝れない夜もありました」と語っていた。
苦労もしたし努力もしたのだろう。その結果ボーカリストとしての技術や表現力も上がり、新しい魅力や個性を発揮しているように思う。
ソロ活動によってボーカリストとして一段階レベルが上がった。だから自分は、佐藤千亜妃を歌姫のように感じたのだ。
『キスをする』のようなシンプルながらメロディや歌詞の魅力が引き立つ名曲もある。それをライブでは繊細な歌声で表現していた。「バンド」という括りから外れることで、創る音楽の幅や表現の方法も広がっている。
きのこ帝国は「バンド」であることによって生まれる魅力もあった。佐藤千亜妃のソロ活動はバンドの枠からはみ出たことで生まれる魅力を持っている。
きのこ帝国があったからソロ活動もある
もしもきのこ帝国が活動を続けていたら、きのこ帝国で発表したのかもしれないと思う曲がある。
『大キライ』と『STAR』の2曲だ。この2曲はギターの音が印象的なロック。きのこ帝国で演奏されても違和感を感じないであろう楽曲。
『大キライ』での歌唱には鳥肌がたった。ハンドマイクで感情をぶちまけるように叫び歌っていた。歌に引っ張られるように演奏も激しかった。その迫力に圧倒させられた。
最後にギターをかき鳴らして歌います
宣言してからエレキギターを弾き歌った『STAR』。音源では04 Limited Sazabysが演奏をしている楽曲。ライブでも音源に負けないキレッキレのバンドサウンド。
その2曲を歌っている姿は、歌姫ではなくバンドマンだった。きのこ帝国の時と同じように。
考えることをやめてしまえば
楽になるらしい 本当にそうかな
どうでもいいと諦めそうな夜
鏡に映った自分が見えない
MCではソロ活動の苦悩を話していたが、まるでそのことを歌っているような歌詞。この曲を書いたことで、解放されたのかもしれない。
笑われても 貶されても
胸の奥の火は消えない
夢破れても 叶わなくても
生きてきた証になるんだ
佐藤千亜妃がこれほどストレートな歌詞を書くとは思わなかった。比喩表現や独特な言い回しのフレーズが多いソングライターだから。でも、だからこそ、この真っ直ぐな歌詞が胸に突き刺さる。
「きのこ帝国は人生を捧げたバンド」と話していた。人生を捧げたバンドの延長線に今の活動があるのだと思った。『STAR』の歌詞のようにきのこ帝国の活動が「生きてきた証」になっているのだと思った。
ソロ活動ではきのこ帝国とは違う音楽性の曲が多い。しかしきのこ帝国の活動があったからこそ生まれた曲もある。歌の表現もバンド時代とは変化しているが、それは新しい表現方法を手に入れたという進化でもある。
バンドとソロとでは方向性は違うが、それぞれの活動は繋がっている。バンドでの活動がソロ活動でも生かされている。『大キライ』や『STAR』はバンド活動があったからこそ魅力的な楽曲になった。
残るメンバーがきのこ帝国の活動再開のイメージが湧くまで、それぞれが別の道を歩みます。佐藤千亜妃、あーちゃん、西村コン、谷口滋昭の今後を応援して頂けたら幸いです。
きのこ帝国もいつか活動再開するかもしれない。その時は佐藤千亜妃のソロ活動がバンドにとってプラスの影響を与えるはずだ。
ソロ活動での歌唱はバンド時代よりも繊細で表現力豊か。ハンドマイクで歌う姿には観ていて引きこまれる。ソロ活動で経験したことをきのこ帝国の活動に昇華し、新しい魅力を生み出すと思う。
佐藤千亜妃のソロ活動も続けてほしい。素晴らしいライブをやってくれるし、最高の楽曲が揃っているから。
でもいつかきのこ帝国を再開して欲しい。新曲を聴きたい。もう一度ライブを観たい。すごく好きなバンドだったんだ。
自分はいつまでも待つ。メンバーが人生を捧げたバンドだから、活動を止めた決断に後悔はないのかもしれないけれど、諦めたわけではないと思いたい。
例えばきのこ帝国に憧れた若者のバンドが『Girl meets きのこ帝国』みたいな曲を出すぐらい先の未来でもいい。それまで、日々あなたの帰りを待つ。

佐藤千亜妃 ワンマンライブ「空から落ちる星のように」@日本橋三井ホール
■セットリスト
1.SickSickSick
2.You Make Me Happy
3.FAKE/romance
4.Lovin'You
5.太陽に背いて
6.リナリア
7.lak
8.Summer Gate
9.Spangle
10.Bedtim Eyes
11.大キライ
12.面
13.キスをする
14.空から落ちる星のように
En 1.STAR
↓関連記事↓
