アイドル楽曲大賞
ここ最近、アイドルが日本の音楽シーンで最も面白いのではと思い始めている。
アイドルは音楽のジャンルではない。バンドと同じように形態の話。そのため、様々な音楽ジャンルの様々な音楽をやっているアイドルがいる。アイドル自体よりも楽曲に惹かれてファンになる人も増えている。
そのため、楽曲に力を入れるアイドルも増えている。むしろ、楽曲が良かったり、個性的でなければ注目もされなくなってきている。アイドルが売れるための最低条件が「楽曲のクオリティ」かもしれない。
そのため、「アイドル楽曲大賞」というアイドルファンが開いているイベントも注目されるのだと思う。
「アイドル楽曲大賞」は毎年年末に全女性アイドルが発表した楽曲をアイドルファンに投票を募って、勝手に順位をつけてみようというイベント。部門ごとに分かれて投票され、結果が開示される。
・メジャーアイドル楽曲部門
・インディーズ/地方アイドル楽曲部門
・アイドル部門
・推し箱部門
上記の4つの部門に分かれて結果が開示される。個人的にその結果について語りたいなあと思う。文句があるわけではない。ただ、受賞した作品が本当にいい作品なのかを自分で確かめたかった。投票は1人で複数投票することも不可能ではない。そのため一部の組織票などでランキングが変動していないのだろうかと思ったからだ。
この記事では楽曲部門の結果に触れつつ、自分が選ばれた楽曲や結果について個人的な見解で好き勝手に語ってみた。
メジャーアイドル楽曲部門
1位 New Stranger / sora tob sakana
2位 夜明けBrand New Days (farewell and beginning) / ベイビーレイズJAPAN
3位 Lighthouse / sora tob sakana
4位 自由へ道連れ / 私立恵比寿中学
5位 暗闇 / STU48
6位 メロンソーダ / 夢みるアドレセンス
7位 kissはあげない / 東京女子流
8位 シンクロニシティ / 乃木坂46
9位 Lightpool / sora tob sakana
10位 タピオカミルクティー / わーすた
1位から10位まででsora tob sakanaの楽曲が3曲ランクインしている。オサカナのオタク投票頑張ったんだな。
これらの受賞曲について個人的な感想を書いてみた。なお、複数曲が受賞していアイドルの楽曲は最も上位の曲のみに触れる。
1位 sora tob sakana / New Stranger
作詞・作曲 照井順政
グループにとって新境地と言える楽曲に思う。アニメ『ハイスコアガール』の主題歌であるためか、歌詞がアニメの内容に沿ったような内容。それでいてグループの個性も消えていない。イントロですぐにオサカナの楽曲だと気づくような作品。
演奏はテクニカルでぶっ飛んだことをしていて玄人好みなのに、キャッチーに感じる。
プロデュースしているハイスイノナサの照井順政はマニアックなポストロックを行なっているミュージシャン。
しかし、アイドルプロデュースするようになってからポップスを作るセンスが急上昇してるように思う。もしくはメンバーの歌声がマニアックな曲にキャッチーさを加えているのだろうか。
とにかく、アニメ主題歌としてもしっかり成立している上に、グループの個性も生かしている完成度の高い名曲。
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2位 夜明けBrand New Days(farewell and beginning)
作詞・作曲 堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)
2018年に解散したベイビーレイズJAPANの代表曲のセルフカバー。女性アイドルのファンなら殆どの人が知っているであろう楽曲。これを2018年のアイドル楽曲とすることは違うようにも思ったが、「解散」という出来事によって楽曲に意味がさらに加わったようにも思う。
夢見てたステージも 思い出に変わってく
駆け足の季節を 僕たちは
何度つまずいて 何度擦りむいて
青春って後になって呼ぶんだろうか
活動していた時は前向きで希望を歌っているように感じたフレーズも、解散してしまってからは懐かしんでいるようなフレーズに聞こえてくる。それが楽曲により深みを増しているようにも思う。
そういう意味では「2018年に生まれた楽曲」と呼んでも良いのかもしれない。
そして、この楽曲はギターサウンドが特徴的だが、隠し味のように入っているピアノの演奏が肝だと思う。注目して聞いて欲しい。
4位 自由へ道連れ / 私立恵比寿中学
作詞・作曲 椎名林檎
もしかしたら2018年で最もアイドルファン以外のリスナーに聴かれた楽曲がエビ中の自由へ道連れであり、アイドルに対する価値観や偏見をぶち壊してくれたのではとも思う。
椎名林檎のトリビュートアルバムにアイドルで唯一参加したエビ中の椎名林檎のカバー曲。
カバー曲だが制作には手を抜いていない。演奏陣には白根賢一と高桑圭の元GREAT3のメンバーがリズム隊を担当し、二千花の野村洋一郎がギターと編曲を行なっている。
椎名林檎のツアーにも参加した皆川真人もキーボードを弾き、椎名林檎と深い関わりのある亀田誠治と頻繁に仕事を行っている高山徹がエンジニアをしている。
原曲のロックサウンドを生かしつつもアイドルとして掛け声を入れたりセリフを入れたり、アイドルがカバーする理由に説得力を感じるような編曲と歌唱。
この曲を聴いて「道連れされちゃった」人も多いはず。
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5位 暗闇 / STU48
作詞 秋元康
作曲 aokado
Aメロは吉田拓郎などの70年代フォークを感じるようなメロディ。しかし、編曲は現代の王道J-POP。その組み合わせが面白い。
ピアノの音やサビでのストリングスの音が印象的ではあるが、二番のサビの後のギターソロこそこの曲の最も盛り上がるポイントではと思う。全ての楽器の音に見せ場がある。
夜よ 僕を詩人にするな
綺麗事では終わりたくない
サビはメロディはシンプルで歌詞を綺麗に乗せているが、上記のフレーズの「終わりたくない」という部分だけ字余りで、メロディに無理やり乗せている。それが聴き流されず印象に残るような工夫にも思う。
タイトルは『暗闇』だが歌詞の内容は希望も感じる。暗闇のことを歌っているようで、実際は光について歌っている歌詞が独特。
個人的には1位の楽曲。
6位 メロンソーダ / 夢みるアドレセンス
作詞・作曲 ムツムロアキラ(ハンブレッダーズ)
編曲 江口亮(Stereo Fabrication of Youth)
若手ロックバンドのハンブレッダーズのムツムロアキラが初めて外部に楽曲提供したのが夢アドのメロンソーダ。編曲はステファブの江口亮。どちらもギターロックバンドのフロントマン。
そんな2人が組んで夢アドのために楽曲を作ると、意外にも正統派アイドルソングと言えるサウンドとメロディになるのが面白い。しかし、演奏をよ聴くと歪んだギターやドラムの音はロックな演奏。それが聴く都度に魅力が増すようなスルメのような曲。
サビの最後の「メロンソーダ」というフレーズの部分でリズムが変わるのも印象的。キャッチーなサビの後に曲名でもある「メロンソーダ」というフレーズが違うリズムで歌われるので、自然とタイトルも覚えてしまうような工夫がされている。
歌詞も独特。「アイドルがアイドルとして恋をしている様子」を歌っている。このようなテーマで歌うアイドルは今までいなかったかと思う。しかも、「アイドルだって辞めちゃうかも」とまで歌っている。アイドルソングとしては、かなり尖っている。
正統派アイドルソングと見せかけて、実は2018年で最も攻めた作りのアイドルソングかもしれない。
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7位 Kissはあげない/東京女子流
作詞 米田浩貴
作曲 宮野弦士
アイドルソングといえば、アイドルの歌声が主役であることが多い。アイドルの歌声を引き立てるためのバックトラックの作り方や曲の構成がされていることが殆ど。それが一般的だしファンもそれを求めているはずだ。
しかし、この楽曲は歌声よりもバックトラックが気になってしまう。バックの演奏を引き立てるために歌があると思えるほどに。
ギターのリフが印象的。最初のイントロからずっとリフがなり続け、歌が始まってもリフは続く。サビになるとリフが止まり、シンセサイザーの音が主役になる。その曲展開が気持ちいい。
アイドルソングとしては珍しい曲の構成の作品。
8位 シンクロニシティ / 乃木坂46
作詞 秋元康
作曲 シライシ紗トリ
シンセサイザーのリフに言葉を詰め込んだような三連符のメロディの歌が乗る。静かに始まり耳をすませて聴いていくうちに、だんだん盛り上がっている曲展開に耳が離せなくなる。
この曲は盛り上げるポイントと落ち着かせるポイントを交互にくるような編曲に思う。Aメロが終わると音が大きくなり、Bメロでは落ち着き、サビでは最も盛り上がる。 曲の構成は一般的なJーPOPに多い構成だが、編曲やメロディの変化で独特な聴こえ方がする。
きっと 誰だって 誰だってあるだろう
ふいに気づいたら泣いていること
理由なんて何も思い当たらずに 涙がこぼれる
それは そばにいる そばにいる誰かのせい
言葉を交わしていなくても
心が勝手に共鳴するんだ 愛を分け合って
サビが印象的で一度聴くと覚えてしまうことにも工夫がされている。「誰だって誰だって」や「そばにいる そばにいる」と同じ言葉をテンポよく繰り返すことでノリやすさも生まれ、同じ言葉が繰り返されることで印象に残りやすくなる。
超人気トップアイドルの楽曲だけあって、かなり考えて作り込まれているように思う。
10位 タピオカミルクティー / わーすた
作詞 SHIROSE(WHITE JAM)
作曲 SHIROSE(WHITE JAM)、Taiki Kudo(Da-iCE)
歌詞はアイドルらしいかわいらしさ。バックトラックは80年代のディスコミュージックに現代のシティポップをハイブリッドさせたような感じのおしゃれさ。その組み合わせが面白い。
今までのわーすたならば可愛らしい歌詞だったらもっとポップな方向やヘンテコな方向の楽曲になっていたのではと思う。
最初と中盤に入ってくる歪んだギターの音もアクセントになっているので聴いていて飽きない。
インディーズ/地方アイドル楽曲部門
1位 ライブ・ライフ / フィロソフィーのダンス
2位 リンドバーグ / 桜エビ~ず
3位 イッツ・マイ・ターン / フィロソフィーのダンス
4位 キミなんだから / Task have Fun
5位 チャプチャパ / 26時のマスカレイド
6位 Jubilee / amiinA
7位 灼熱とアイスクリーム / 桜エビ~ず
8位 blue moon. / tipToe.
9位 ダンス・ファウンダー (リ・ボーカル & シングル・ミックス) / フィロソフィーのダンス
10位 黄昏のダイアリー / RYUTist
1位から10位まででフィロソフィーのダンスの楽曲が3曲ランクインし、桜エビ〜ずの楽曲が2曲ランクインしている。フィロノスと桜エビのオタク投票頑張ったんだな。
これらの受賞曲について個人的な感想を書いてみた。なお、複数曲が受賞していアイドルの楽曲は最も上位の曲のみに触れる。
1位 ライブ・ライフ / フィロソフィーのダンス
作詞:ヤマモトショウ
作曲・編曲:宮野弦士
アイドルの楽曲の楽しみ方はパターンになっていることが多い。例えば振りコピをしたり、コールをしたりなど、ファンが決まった動きをして楽しむような。
しかし、この曲はそういった楽しみ方とは違う楽しみ方ができそうな曲。
聴いていて自然と体が動いてしまう。楽曲としては目新しさはない。80年代リバイバルなディスコナンバー。しかし、作り込まれている。音数は絞っているが、使われている音の全てに無駄がない。必要最低限な音を使っているとも言えるし、絶対に必要な音だけで構成されている隙のない楽曲。
だからこそ自由に音に身を任せて楽しめるような曲。
この楽曲はメジャー部門で7位だった東京女子流『kissはあげない』と同じく宮野弦士の作曲作品。
2位 リンドバーグ / 桜エビ~ず
作詞・作曲:浅見北斗(Have a Nice Day!)
編曲:高野勲
桜エビ〜ずについては記事を以前書いている。今年発表された楽曲はどれもクオリティが高いのだ。
その中でもHave a Nice Day!が楽曲提供をした「リンドバーグ」は桜エビ〜ずの代表曲になるような名曲だと思う。
「リンドバーグ」については別の記事に書いているのでそちらを読んでほしい。
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4位 キミなんだから / Task have Fun
作詞・作曲:GUCCHO
ポップで可愛らしい曲かと思いきや、演奏はスカっぽさやジャズっぽさもある。バックの演奏がしっかりしていると思う。
特にサビうねるようなベースラインはサビの乗りやすさを高める理由になっていたり、Aメロの2本のエレキギターの絡み方も音に厚みを加えている。
ドラムのリズムパターンも面白い。サビではシンプルな2ビートなのにそれ以外の部分では複雑に叩いていたり、癖のある変わったリズムパターンになっている。
作り込まれているからそこ安心して聞けるクオリティのアイドルソングになっているのだと思う。
5位 チャプチャパ / 26時のマスカレイド
作詞・作曲・編曲 koma'n
アイドルの王道夏ソングな曲。
この楽曲の面白い部分は、80年代のアイドル歌謡ぽい編曲と現代のAKBなどの正統派アイドルぽい編曲が混ざってい部分だ。使われている打ち込みの音は80年代の歌謡曲に使われているような音が多い。それに平成のJ-POPの王道的な編曲のエレキギターやホーンの音が加わる。
様々な世代にとって「王道のいい曲」と思わせるような、世代を問わずに多くの人に興味を持ってもらえるアイドルソングになっている。
6位 Jubilee / amiinA
作詞・作曲:松本素生(GOING UNDER GROUND)
この楽曲は静と騒の対比が面白い。
サビでは音数が多く様々な音を使っている。聴きなれない音も使われているので聴いていて新鮮だ。しかし、それ以外の部分では音数が絞っている。必要最低限の音で楽曲を構成しているようだ。それによってサビでの盛り上がりを表現しているのだと思う。
特にサビ以外の部分でのドラムのリズムパターンが凝っている。音数が少なくても貧相に感じない理由はリズムパターンが独特だからではと思う。
サビで一気に盛り上がる楽曲に感じるが、歌のキーはあまり上下しない。歌で盛り上げる場合はキーが上がることが多いのだが、この曲はそれを感じない。
メンバーがもっとも良い声で歌えるキーに合わせて、演奏で楽曲の盛り上がりを表現するように工夫しているように思う。
8位 blue moon. / tipToe.
作詞・作曲・編曲:aoi kanata
ドビュッシーをオマージュしたようなピアノの音が印象的。特に間奏の後半の間奏部分は意識をしているように思う。
この楽曲はアイドルの歌声も楽器の一つにしているように感じる。歌が主役ではなく、楽曲自体が主役で、歌も楽曲を引き立てせる要素の1つにしているように思う。
楽曲の3分25秒を超えたあたりのコーラスワークの凝り方は歌を聴くというよりも声も楽器の一つとしてとらえているように感じる。その後にきちんと歌うサビがくるので、よりサビの歌のメロディの良さが引き立つ。
ダウナーな雰囲気の楽曲もアイドルソングとしては珍しい。アイドルソングを作るというよりも、表現したい楽曲の世界観があり、それにアイドルの歌声やダンスが必要だったように思える。そんな完成度が高いけども、不思議な楽曲。
10位 黄昏のダイアリー / RYUTist
作詞 清浦夏実(TWEEDEES)
作曲・編曲 沖井礼二(TWEEDEES、元cymbals)、北川勝利
作詞作曲は自身もユニットとしてアーティスト活動をしているTWEEDEESの2人が参加している。そのためキャッチーなメロディのアイドルそんぐなのに、音作りが上品で落ちつていて、ごちゃごちゃしていない。cymbalsを知っている人ならば音から
その雰囲気を感じるのではないだろうか。
ポップスとしてクオリティの高い作品になっているようにも思う。しかし、アイドルグループだからこそできる表現も取り入れられている。
それはボーカルのかけあいだ。Aメロでの歌を繋ぐようにかけあうボーカルや、大サビの盛り上げるような展開のかけあいは1人のボーカリストではできない。複数の人数がいるからできることだ。
それによって「ポップスとして名曲」というだけでなく「アイドルソングとしても名曲」になっている。
全体の感想
複数曲ランクインしているアイドルもいる。個人的に良い曲を今年リリースしたのにランクインしていないと思うアイドルもいた。
しかし、上位にランクインした楽曲を聴くと、どれも素晴らしい。アイドルソングとしても、ポップスとしても完成度が高い。
メジャー部門は王道のアイドルソングの型をなぞりつつもそれぞれ個性のある楽曲に仕上がっている。
インディーズ。地方部門は実験的だったり、アイドルソングという枠を超えて面白いことをやろうとしているように感じた。
つまり、アイドル楽曲大賞の受賞曲は個人的には特に文句のつけようのない妥当なランキングに思う。そして、アイドルだからと偏見を持っていたりバカにしている人にこそ聴いて欲しいと感じた。
バンドやボーカルユニットなどと同じように、アイドルは音楽を表現する形の1つでしかすぎないのだ。それが納得できる受賞曲の数々ではないだろうか。
でも、個人的に面白いと思うランキングはBase Ball Bearの小出祐介の個人的アイドルソングランキングだ。よりマニアックで偏ってはいるけども、こちらもチェックして欲しい。
こんプロありがとうございました!今日発表した各年間ベストのまとめです! #こんプロ pic.twitter.com/39H3FvMXYL
— Base Ball Bear 小出祐介 (@Base_Ball_Bear_) January 4, 2019
