「アイドルとしてはできないことをやりたい」
グループアイドルはももクロに限らずメンバーがソロ活動で歌を歌うことは珍しくはない。例えばAKBグループでもソロでCD出している人もいるわけじゃないですか。歌が上手いと言われている山本彩とか。先日発売してアルバムも3万枚売れたらしいですよ。すごい。ライブもNHKホールとか埋めるらしいんですよ。すごい。
ところで、ももいろクローバーZの緑担当の有安杏果がソロのアーティストとしてフルアルバムをリリースしまして。これも山本彩に負けず劣らずに売れてるみたいなんですよ。ちなみにこのアルバムのインタビューでは「アイドルではできないことをやりたい」とも語っていました。
でもこれは有安杏果に限らずなのだけど、ももクロメンバーのソロでの活動を求めている人は上記で挙げた山本彩よりも多いんじゃないかなとも思ったりするわけです。それぞれのメンバーがソロでライブをやるとアリーナ規模を満員にする。先日の佐々木彩夏も両国国技館を完売させたし、有安杏果は平日の武道館も完売させたらしいです。
なぜももクロのメンバーはソロでもアリーナ規模の会場を埋めることができるのだろうか?なぜ有安杏果のアルバムはソロでも売れているのだろうか?
今回、有安杏果の初のソロアルバム『ココロノオト』を聴いてみたが、なんとなく理由が分かったような気がする。そしてこの作品は有安杏果が語っていたように「アイドルではできないこと」を行った作品なのか答えもわかった気がする。
全14曲を1曲ずつ感想を述べていこかと思う。
01.心の旋律
作詞:有安杏果
作曲:武部 聡志
編曲:武部 聡志
シンプルなピアノの音に合わて歌われる有安杏果の歌が心地よい。ストリングスの音もJ-POPにありがちなとってつけたよう演奏ではなく、凝っている。サビのベースラインの動き方が面白い。
作曲は武部聡志なんですね。超一流で超ベテランのミュージシャンですよ。様々なコンサートやテレビの歌番組の音楽監督を行っている人。編曲が凝っていることも納得。
そして作詞は有安杏果。今作ではももクロでは行っていない自身での作詞も行っている曲が複数ある。そして、この詞がとても良いんですよ。
いや、とても青臭いし、しっかりとした歌詞かというとプロの作詞家にはかなわないとは思うんですよ。でも彼女だからこそ出せたフレーズや言葉がある歌詞だなと思う。
例えば”もうすぐ空はピンク色”というフレーズ。これは他の作詞家だったらオレンジ色にすると思うんですよ。だってピンク色になる時間なんてないじゃないですか。おかしいんですよ。
”変幻自在な空に憧れ”というフレーズも独特。変幻自在という言葉はメロディに乗せにくいと思うんです。でもこれをサビに持ってきた。プロの作詞家だったら”変わり続ける空”と歌いやすく意味も分かりやすいフレーズにするのではと思う。”変幻自在”というフレーズは素人ぽさも出るがそれが個性にもなっている。
02.Catch up
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果・KAMI
編曲:OSTER project
有安杏果が日本芸術大学での同級生といっしょに作った曲らしいです。日芸に通ってたんですね。余談ですが自分のいとこも日芸に通っていて有安杏果よりも1学年上だったんですよ。なんでお前は友達にならなかったのかと。面識もなかったのかと。友達になって紹介し欲しかったと。
で、この曲なんですがギターが印象的なフレーズをたくさん弾いているんですよ。でも、それが主張しているわけではない。目立ちすぎない程度の面白いフレーズで曲のバランスとしてとても良いなと思います。
あとピアノ基本的にシンプルなんですが、歌の息継ぎの合間で突然目立つ音を入れてくるのがとてもぐっときます。どことなくジャズっぽさを感じます。
03.ハムスター
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果
編曲:Jin Nakamura
有安杏果が初めて作曲した曲らしいです。ギャッチーでポップなメロディ。ちょっと切なさも感じる。大人が手も加えているんだろうけど初めてでこれだけ作れるのはすごいですよ。
この曲は様々な音が鳴っています。楽器の音も様々な楽器が使われていると思うんですが、打ち込みの音も使われている。それなのにそれぞれの音がぶつかっていない。ごちゃごちゃした印象でも豪華な印象とも違う印象になっている。常に音が変わっていくから聴いていて飽きない。
編曲が面白いと感じる楽曲。
04.ペダル
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果
編曲:本間 昭光
この曲も作曲を有安杏果が行っていいる。編曲はデビュー当初のポルノグラフィティのプロデュースでも有名な本間昭光。
ミドルテンポのシンプルなJ-POPと言う感じ。1曲目から3曲目までは凝った編曲が多かったけども、これは変わったことや面白いことを編曲でしているわけではなさそう。
でも、だからこそ歌の良さが引き立っているのかなとも思う。
05.feel a heartbeat
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果・多保孝一
編曲:Jin Nakamura
この曲は作曲を元Superflyの多保孝一と共作している楽曲。編曲は3曲目のハムスターと同様にJin Nakamura。
これも編曲が自分にどストライクなんですよ。いろいろな音が使われているけどもそれぞれ邪魔していない感じとか。
あとサビのドラムの音が良いんですよ。2ビートなんだけど、音が良い。ドラムの音がめっちゃ自分好みなんですよ。あとどことなくアレンジにフジファブリックぽさを感じたりもする。
関連記事:フジファブリックの志村正彦を最後に観たライブについて - オトニッチ-
06.Another story
作詞:有安杏果
作曲:宮崎誠
編曲:宮崎誠
ロックチューンですね。アニソンに使われそうな感じのロックチューン。ノリが良いからライブで盛り上がりそう。久々にかっこいいと思えるギターのパワーコードを聴きました。
作曲を担当した宮崎誠さん、自分は知らなかったんですけど多くのアニソンやアニメ音楽を手掛けているんですね。
07.Drive Drive
作詞:川上洋平([Alexandros])
作曲:川上洋平([Alexandros])
編曲:横山裕章
ドロスの川上洋平の提供作品です。聴いてみると、なるほどと言う感じ。アレキサンドロスっぽいメロディと歌詞だなと思う。編曲は曽我部恵一ともいっしょにバンドをやっていた経験もある横山裕章。どことなく辺境もドロスを意識している部分があるようにも感じた。
有安杏果に合わせようとして作詞作曲したわけではなさそうなので、聴いていて違和感も感じたけども、これはこれで悪くはない。
08.裸
作詞:小谷美紗子
作曲:小谷美紗子
編曲:小谷美紗子
これは完全に小谷美佐子です。聴いた瞬間に小谷です。ピアノとか完全に美紗子です。歌声までそう聞こえてきます。これは小谷美佐子ファンは聴くべき曲ですよ。
ものすごく小谷美佐子の個性が際立っているのだけども曲がとても良い。女性歌手ならだれが歌っても名曲になりそう。自分が小谷美紗子を好きだということもあるかもしれないけど、この曲めちゃくちゃ好きです。
アルバムの中でもいい意味で異彩を放っている曲。
09.愛されたくて
作詞:渡和久(風味堂)
作曲:渡和久(風味堂)
編曲:渡和久(風味堂)
最近はレキシのサポートメンバーとしてもお馴染みの風味堂のフロントマンの渡和久が提供している作品。風味堂に”愛してる”という曲があるのだけども関連はあるのかな?
関連記事:岡崎体育の感情のピクセルが叩かれてレキシのKATOKUが叩かれない理由 - オトニッチ-
ジャズやビッグバンドを感じさせるようなアレンジとメロディ。聴いていて楽しくなってくる。これも風味堂ぽさを感じるし、あえてそうしているのかなとも思ったりする。
10.遠吠え
作詞:渡和久(風味堂)
作曲:渡和久(風味堂)
編曲:長谷川智樹
こちらも9曲目に引き続き風味堂の渡和久提供の楽曲。しかし編曲は長谷川智樹が行っているので9曲目とは違う雰囲気になっている。
メロディとアレンジに歌謡曲的要素を感じる。ピアノがお洒落。サビのギターのカッティングもかっこいい。でもピアノの音が一番印象には残る。Aメロのベースラインが良いです。ももクロの時とは違い大人っぽさも感じる曲と歌い方。
11.小さな勇気
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果
編曲:河野伸
約7分のミドルテンポのバラード。編曲はドラマや映画の劇半やCM曲を多く作っている河野伸。
ストリングスやピアノの音やアコースティックギターなどアンプラグドの楽器の音がメインで使われている曲。演奏自体は歌を引き立てることに徹しているようでシンプル。ドラムとかめっちゃシンプルだよ。でも安定したリズムで心地よい。
12.TRAVEL FANTASISTA
作詞:藤原聡(Official髭男dism)
作曲:藤原聡(Official髭男dism)
編曲:藤原聡(Official髭男dism)
これも完全にOfficial髭男dismですね。作った人がメンバーだから当たり前なんだけどさ。でも、この曲が有安杏果の声にとても合っている。有安杏果が歌うからこそ曲のポップさが引き立っているようにも感じる。
壮大なバラードの後に少しBPM速めのポップスが来るとアルバムとしても中だるみしないから良いね。
13.色えんぴつ
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果
編曲:Yaffle
これはファンの間でも評価が分かれそうな曲です。アイドルの曲とは思えないです。ダウナーです。闇を感じます。個人的には大好物な感じの曲です。
まずメロディも歌詞も暗いです。アレンジもそれに合わせるように暗いです。よくアイドルでこれをやったなって感じに。でも編曲がなかなか面白いんですよね。特に打ち込みの音が。
暗い曲も気にならない人は好きになるんじゃないかなと思う曲。
14.ヒカリの声
作詞:有安杏果
作曲:有安杏果
編曲:鈴木 "DAICHI" 秀行
アルバムラストを飾る曲。どんな感じにアルバムを閉めてくれるのかと思ったら、さわやかでポップな曲だった。
文句のつけようがないポップスとしての完成度。有安杏果はソングライターとしてキャッチーなメロディを作る才能があるのではとも感じる曲。このメロディのポップさを生かすような編曲が素晴らしい。
最後の曲だからと感動的なバラードなどにせず良い意味で何も考えずにBGMにできるような曲にしたことで、アルバム全体の印象を何度も聴きたい作品に感じられるようになっている。
1曲1曲の完成度だけでなく、アルバム全体としての流れもこだわっているアルバムなのだと感じさせるラストソングだ。
やっぱりアイドルのアルバムだった
全体の感想としては、それぞれの楽曲のクオリティが高く、ポップスのアルバムと聴いても素晴らしい作品だと感じた。まあ、それもそのはずですよ。ベテランミュージシャンや実力派ミュージシャンを楽曲提供者にふんだんに使っているわけだし。これだけそろえて悪い作品になるわけがない。
そして、有安杏果が語っていた「アイドルではできないこともやってみたい」という話だが、『ココロノオト』ではアイドルではできないことはできていたのかという部分。
これに関してはできていたと断言できる。しかし、それでも歌手のアルバムではなくアイドルのアルバムだろうなとは感じる。この作品を最も楽しめるリスナーはももクロファンや有安杏果のファンだと思うんですよ。それはどういうことかと言うと、この作品ではももクロでは触れることができい有安杏果の魅力が詰まっているのです。聴けば聴くほど有安杏果という存在の魅力を強く感じるわけです。
歌手のアルバムを聴いた後に最も残る感想は歌声や楽曲についてだと思う。『ココロノオト』を聴いても同じように歌声の良さや楽曲の良さを感じる。しかしそれと同じぐらい有安杏果の存在が気になってしまうのだ。
それはアイドルとしての有安杏果を知っているからかもしれないが、彼女が作詞作曲したのならばそれを書いた有安杏果の心境がとても気になってしまうし、自分で作曲した苦労や頑張りに感動してしまう。
関連記事:ペンライトもコールもない方がアイドルは輝く?エビ中の生バンドライブ『ちゅうおん』で感じたこと - オトニッチ
有安杏果の『ココロノオト』は本人が言うようにアイドルではできないことをしっかり実践できている。有安杏果や関わったミュージシャンやスタッフの力で素晴らしいアルバムになっている。しかし、上記に挙げた私立恵比寿中学の記事の内容と同様に、「アイドルとしては異質なこと」をすることでよりアイドルとしての有安杏果の魅力が際立ったのだ。それはアイドルとしての有安杏果の能力の高さや魅力の強さによるものだと思う。なぜ有安杏果がももクロのメンバーとして大きなステージに立ち続けられるのかを実感させられたような気がする。
今作はクオリティの高いポップスのアルバムであると同時に、有安杏果のアイドル性をまじまじと感じることができるアイドルのアルバムでもある。
つまり、『ココロノオト』は全ての音楽ファンにおすすめしたい名盤ですよという話です。ちなみにアルバムを購入した人にだけわかる、少しうれしいサプライズもあったりしますよ。特にライブアルバムもセットになっている初回盤Bがおすすめです。
