自分たちで作詞作曲をしなかったアルバム
氣志團は自分たちで作詞作曲ができるバンドだ。
ずっと自分たちで曲を作って活動してきた。
しかし、今回発売したアルバムではメンバーは作詞も作曲も行っていない。
全曲他のソングライターから楽曲提供を受けている。
しかも発売されたアルバム『万謡集』は氣志團の結成20周年記念のアルバム。
編曲は氣志團が行った曲もあるが楽曲提供者が編曲した曲も多い。
これってバンドの周年記念のオリジナルアルバムとしては異例だし実験的だと思うんですよね。
だって作詞作曲をするメンバーがいるバンドで周年記念のアルバムなら、ファンは普通にメンバーが作った気合いの入った新曲を聴きたいんじゃないかと思う。
ところで自分は氣志團にそこまで詳しくはなかったりする。
全然嫌いじゃないし好きだけどそこまで積極的にはCDを聴いたりはしていない。
今作を聴いたのも氣志團万博のチケットを買ったから予習の意味で新作を聴こうと思った。
そこまで詳しくないけど氣志團の存在や曲を何曲か知っている人でもなんとなくの氣志團の方向性や音楽の雰囲気をしっているわけじゃないですか。
今作はメンバー以外が楽曲提供をしているので氣志團の今までのイメージとは違う雰囲気や方向性の曲もあるのかなと思ったんですよ。
でもね、このアルバム全曲ものすごく氣志團。
自分のイメージしている通りの氣志團。
楽曲提供を受けたことによって氣志團の個性がより際立って感じるという不思議なアルバムに感じた。
この不思議なアルバムの収録曲を全曲レビューと感想を述べていこうと思う。
01. R”N”R P@RTY
作詞:ABEDON
作曲:ABEDON
編曲:ABEDON
ユニコーンのABEDONの楽曲提供作品。
ABEDONは氣志團のプロデュースもしていたので長いお付き合いなのだろう。
どことなくABEDONが作ったユニコーンの楽曲にも近いメロディは感じる(SAMURAI 5みたいな雰囲気)
でもABEDONと氣志團はもともと近い雰囲気の曲を作ることもあったので全く違和感もなく、言われなければ氣志團の誰かが作ったのかなと思ってしまう。
シンプルな演奏のロックサウンド。
歌詞もロックを聴いたときの衝動のようなテーマを感じるので演奏と歌詞がとても合っている。
02. スポットライト
作詞:志磨遼平
作曲:志磨遼平
編曲:志磨遼平
元・毛皮のマリーズのメンバーで現在はドレスコーズをやっている志磨遼平の作品。
1曲目のロックサウンドから続いているようなシンプルなロックナンバー。
楽曲を作った人物は違うのに近い雰囲気を感じるのは氣志團が演奏し歌っているからだろうか。
ギターのリフがカッコいい。
シンプルなのに印象的なフレーズ。
ライブでも盛り上がりそうな楽曲。
偶然かもしれないけど、曲の長さが1曲目のR”N”R P@RTYと同じ5分8秒である。
03. 東京湾大飯店
作詞:横山剣
作曲:横山剣
編曲:横山剣
クレイジーケンバンドの横山剣が提供したミドルテンポの楽曲。
1曲目と2曲目はシンプルなバンドサウンドだったことと比べると編曲はメンバーの演奏する楽器以外の音も入っていて、編曲も豪華で凝っている。
でも無駄な音が入っているわけではなく、どの音も曲を盛り立てていくには必要な音を厳選して選んだ感じ。
サビのバックのギターが好み。
シンセの音もいい仕事しているなと思う。
04. 恋するクリスチーネ
作詞:櫻井敦司
作曲:今井寿
編曲:今井寿
BUCK-TICKの櫻井敦司と今井寿のコンビによる作品。
この曲はBUCK-TICKぽさは殆ど感じず氣志團の色がより濃く表れているように思う。
AメロとBメロの2本のギターの絡み方が心地よい。
あとAメロののベースラインが好み。
歌詞に”終わんないカーニバル”というフレーズを入れて氣志團の代表曲”One Night Carnival”を文字っていたりと遊び心と氣志團への愛も感じる作品。
05. バームクーヘン
作詞:御徒町凧、森山直太郎
作曲:森山直太朗
編曲:木内健
森山直太朗が提供したミドルテンポの切ない曲。
直太朗ぽさはほとんどなくて氣志團そのもの。
氣志團と関りが深いアーティストの提供曲ほど提供者の色よりも氣志團の色がより濃く出ているように感じる。
アコースティックギターも使われていてアルバムの中では落ち着いた方向の楽曲。
シンプルに叩いているドラムが歌や切なくソロを弾いているギターの邪魔をしないように曲を引き立てている。
あえてシンプルにぶれずに叩いていることが良い。
06. 羅武尊寓
作詞:宮藤官九郎
作曲:宮藤官九郎
編曲:宮藤官九郎・氣志團
クドカン作詞作曲。
歌詞は氣志團の歴史や氣志團の存在についてそのまま歌詞にしたような感じ。
こういう歌詞を本人ではない人が書いて本人に歌わせるのが粋だなと思う。
個人的に好きな部分はセリフのパート。
シンプルなロックバンドの演奏があって途中で語りかけるようなセリフがあるとそれだけで氣志團ぽさを感じる。
聴いていて氣志團への愛を感じる作品。
07. BANG ON!
作詞:藤井フミヤ
作曲:藤井尚之
編曲:大島賢
藤井フミヤと藤井尚之の兄弟の提供作品。
ユーモアな歌詞とポップなメロディが印象的。
演奏はシンプルなロックサウンド。
アルバムを聴いていて感じるが、それほどテクニカルなことはやっていないが演奏は安定していて上手いんだと感じる。
途中で入ってくるサックスの音が曲に良いアクセントになっている。
08. チャオ~傷だらけのバンドの旅
作詞:大槻ケンヂ
作曲:大槻ケンヂ
編曲:NARASAKI
筋肉少女帯の大槻ケンヂが提供した楽曲。
筋肉少女帯のような面白さを感じる曲を提供するかと思いきや、ミドルテンポの泣きメロの曲を提供している。
コーラスが心地よい。
ギターのカッティングも心地よい。
個人的にはこのアルバムで歌詞が一番好きな曲。
”流れ星の行く先探し 流れ弾にも撃たれて”といゆフレーズが好き。
バンドとファンとの関係性についても一部歌詞にしているようにも感じる。
09. はすっぱ
作詞:前山田健一
作曲:前山田健一
編曲:前山田健一
前山田健一ことヒャダインの提供作品。
これね、聴いてもらうとわかるんだけども、めちゃくちゃヒャダインぽい曲展開。
唐突な転調や急展開する曲展開やところどころに入っているユーモア。
ヒャダインが他の女性アイドルに提供していてもおかしくないような曲。
それでも氣志團がやると氣志團のものになって氣志團のユーモアのある曲にしてしまうのは氣志團の力だろうなと思う。
10. 逃げろ!逃げろ!
作詞:真島昌利
作曲:真島昌利
編曲:氣志團
クロマニヨンズの真島昌利の提供作品。
メロディも歌詞もめちゃくちゃ真島昌利の色を感じるというか、そのものと言っていいぐらい濃い。
だからこの個性に負けないようにするために編曲は氣志團が行ったのかも。
演奏もどことなくクロマニヨンズやハイロウズの雰囲気に近い雰囲気も感じるけど氣志團の個性も曲に負けていない。
歌詞のメッセージが響く。
11. フォーサイクル
作詞:TAKUMA
作曲:TAKUMA
編曲:氣志團
作詞作曲は10FEETのTAKUMAが行っている曲。
BPM速めのロックチューン。
途中のサビの後のベースソロがカッコいい。
あえてなのかもしれないけど10FEETの得意とする方向の楽曲で10FEETぽさ全開の曲を提供したように感じる。
「この曲で氣志團の色を出せるの?」という挑戦状をTAKUMAが渡しているようにも感じるほど。
しかし楽曲の魅力は消さずに氣志團の色も出しているのは流石と思う。
12. 蒼き独裁者に告ぐ
作詞:TAKURO
作曲:TAKURO
編曲:TAKURO
GLAYのTAKUROの提供作品。
約9分の感動的なスローバラード。
ピアノをバックに歌うボーカルが感情的でエモい。
歌詞も詞というよりも物語のような歌詞。
それも氣志團の歩んできた歴史と重なるようなバンドマンの話。
歌だけでなく演奏も切なくて感動的。
ギターソロが泣ける。
13. きかせて!アンコール
作詞:鬼龍院翔
作曲:鬼龍院翔
編曲:鬼龍院翔
ゴールデンボンバーの鬼龍院翔の提供曲。
TAKUROの感動的な提供曲の後にはポップなこの曲が続くギャップ。
ポップなメロディとキャッチーなサビの歌詞が印象的。
演奏もその歌詞のポップさに合わせるように明るくて軽快。
アルバムの後半のバラードの後にこういった明るい曲を持ってくるのが中だるみも防ぐしアルバム全体のバランスがとれて良い。
14. リーゼント魂
作詞:秋元康
作曲:斉藤慶一
編曲:木内健・氣志團
秋元康が作詞をした曲。
作曲の斉藤慶一はあまり情報がないけどもコンペで選ばれたのかな?
アルバムの最後に良い感じの余韻を残してくれるミドルテンポの楽曲。
氣志團の見た目の特徴を歌詞に入れるユーモアも取り入れつつもほっこりするような切ない歌詞。
氣志團が書いていないのに氣志團でなければ歌えないような歌詞。
演奏はギターの絡み方が好き。
途中のメロディで言葉を小節にむりやり突っ込んだような歌い方も感情の起伏を感じてぐっとくる。
”リーゼントは譲れない生き方”というフレーズが氣志團のバンドとしての活動を隠喩しているようで良いフレーズ。
なぜ全曲提供作品にしたか理由が分かった気がする
聴く前は「なぜ全曲自分たちで作詞作曲せずに提供してもらったのか?」と疑問にも感じていた。
しかし、今作を通して聴くことでその理由が分かったような気がした。
全曲楽曲提供作品にした理由は2つあるのではと思う。
1つの理由は氣志團のバンドとしての実力を見せつけるためではと思う。
今年で結成20周年で今でも第一線で活動しているバンドだ。
見た目や雰囲気からイロモノ扱いされることが今でも多いと思う。
しかし、他の実力や才能がある濃いミュージシャンから楽曲提供を受け、それを氣志團の色に染めてしまうことで「氣志團のバンドとしての凄さ」をアピールするという理由があるようにも感じる。
実際アルバムを聴いてみるとそれぞれの楽曲提供者の色が濃い曲も多い。
もしかしたら本人が歌って演奏した方がハマるかもしれないと思える曲もある。
しかし、アルバム全体を通して聴いたときにまぎれもない氣志團の音で氣志團の曲になっている。
それは20年間積み重ねた氣志團としての実力だと感じる。
もう1つの理由は”20周年”について祝ってもらいたかったということかと思う。
楽曲提供者はそうそうたるメンバーだ。
氣志團と交流が深い人が楽曲提供していたり、作詞を明らかに氣志團を意識して書いている楽曲提供者も多い。
それは氣志團への愛を感じるし、氣志團しかやれないような楽曲になっているように感じる。
これは氣志團への20周年のお祝いで楽曲をプレゼントしたということなのかなと感じる。
今作が全曲楽曲提供された作品にも関わらず氣志團の色が濃く出ている理由は、氣志團のバンドとしての実力と楽曲提供がすべて氣志團への愛で溢れているからではと思う。
異例で実験的な作品かというイメージを持っていたが、聴いてみたらそんなことはない。
むしろ氣志團としてまっすぐな作品で、クオリティの高い楽曲がそろったアルバムだと感じた。
氣志團のファンでなくても楽曲提供者のファンならばそれぞれの楽曲提供者の曲が普段と違う解釈をされている音を聴いてほしいなと思う。
