建設業界では、人手不足や時間外労働の規制への対応など、解決すべき課題が続いています。こうした状況を打破する「DX(デジタル化)」を進めるには、現場管理や図面作成に役立つソフトと、それを安定して動かす環境の整備が欠かせません。
国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)は、こうした取り組みを金銭面で支援する制度であり、申請はIT導入支援事業者(ITベンダー、販社、ディストリビューターなど)と二人三脚で進める仕組みになっています。この記事では、建設業で使えるツールの例や申請の流れ・注意点をわかりやすく解説します。
なお、パソコンやモニターなどハードウェア単体の購入は補助の対象外で、登録された業務ソフトの導入とセットの場合に限り対象となります。
※ この記事の内容は2026年2月12日時点の情報に基づいています。補助金の公募要領やルールは時期によって変更される可能性があるため、必ず最新のIT導入補助金の公式サイトの情報をご確認ください。
- IT導入補助金とは?DXとの関係もわかりやすく解説
- IT導入補助金の補助対象となる企業・事業主の条件
- 建設業で対象になるソフトと、多様な「申請枠」
- IT導入補助金の申請までに必要な「必須準備」
- IT導入補助金の申請から入金までの流れ(期間イメージ)
- IT導入補助金の注意点
- IT導入補助金についてよくある質問(FAQ)
- 点群処理ソフトとは?ソフト+高性能パソコンで広がる活用の幅
- まとめ:専門家と二人三脚で確実な一歩を
IT導入補助金とは?DXとの関係もわかりやすく解説
IT導入補助金とは、中小企業や個人事業主が、自社の課題を解決するための「ITツール(ソフトウェア)」を導入する際、その費用の一部(1/2など)を国が補助してくれる制度です。
デジタルの力で仕事のやり方を変えるDXを促進し、「利益が出る体質」や「休みが取れる環境」をつくることを目的としています。
ここでよく出てくるのが「DX(ディーエックス)」という言葉です。DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、 デジタルの力で、仕事のやり方や会社の仕組みをより良い方向へ変えることを意味します。
例えば、これまで紙の図面を何枚も持ち歩いて事務所に戻って整理していた業務が、タブレット1台で現場完結するようになる、というのも立派なDXのひとつです。
2026年は制度名称が変更予定
2026年度は、これまでの「IT導入補助金」が 「デジタル化・AI導入補助金」という名称で公募される予定です。
基本的な目的は変わりませんが、AI(人工知能)活用などへの支援が強化される見込みです。 正式な名称や制度内容の詳細は、最新のIT導入補助金の公式サイトの情報をご確認ください。
IT導入補助金の補助対象となる企業・事業主の条件
この補助金は、多くの中小企業や個人事業主が利用できるよう、対象範囲が広く設定されています。建設業の場合、基本的には以下のいずれかの条件を満たしていれば対象となります。
| 区分 | 対象となる条件(いずれかを満たす) |
|---|---|
| 建設業(中小企業) | 資本金 3億円以下 または 従業員 300人以下 |
| 個人事業主 | 一人親方や家族経営などの形態も含まれます |
「うちは規模が小さいから無理だろう」とあきらめる必要はありません。むしろ、人手不足に悩む小規模な事業所こそ、IT活用による効率化の恩恵は大きいといえます。
建設業で対象になるソフトと、多様な「申請枠」
自社の課題がどこにあるかによって、選ぶべきソフトが変わります。建設業特有のソフトを含め、事務から現場まで幅広く対象となります。
1|建設業で活用されているITツール例
バックオフィス系
インボイス対応や月末の給与計算、請求処理の負担を軽減。 勘定奉行、弥生会計、マネーフォワードクラウドなどの会計ソフト、 電子請求書発行システム、KING OF TIMEなどの勤怠管理ツールが導入されています。
施工管理・CAD系
現場写真の共有や工程管理をクラウド化。 ANDPAD、Photoruction、SPIDERPLUSなどの施工管理アプリ、 AutoCAD、JWCAD、Revitなどの建築/土木用CAD、 GaiaやATLUSなどの積算ソフトが活用されています。
AI・点群・解析系
ドローン測量や3Dデータ活用が進展。 TREND-POINTなどの点群処理ソフト、 AIひび割れ検知システム、鉄筋カウントAIなどの解析ツールも注目されています。
※ 掲載製品は一例です。対象可否は公募回や登録状況によって異なります。
2|主な「申請枠」と補助額
導入したいツールの種類や機能数によって、申請する「枠」を選びます。 枠によって補助率や上限額が異なるため、支援事業者(販売店)と相談して最適なものを選びましょう。
| 主な申請枠(例) | 補助額・補助率の目安 | 対象となるもの |
|---|---|---|
| 通常枠 | 最大450万円程度 (補助率1/2以内 ※ 年度により異なる) |
CAD、積算、施工管理、勤怠管理など。 |
| インボイス枠 | 最大350万円程度 (補助率2/3~4/5 ※ 年度により異なる) |
会計・受発注ソフト、およびセットで導入する パソコン・タブレット・モニター・プリンター。 |
| AI活用枠(予定) | 上限額は公募要領により設定 (補助率1/2~2/3程度 ※ 予定) |
AI機能を搭載した高度な解析ツールなど。 |
| セキュリティ枠 | 最大150万円程度 (補助率1/2以内 ※ 年度により異なる) |
サイバー攻撃対策(UTM、対策ソフトなど)。 |
※ 補助額・補助率・枠名称は年度ごとに変更される場合があります。必ず最新のIT導入補助金の公式サイトの情報をご確認ください。
補助金は「後払い」です。購入時には、一旦「全額」を自社で支払う必要があります。
数ヶ月後に報告が受理されてから補助金が口座に振り込まれるため、あらかじめ購入費用の全額を準備しておく計画性が求められます。
IT導入補助金の申請までに必要な「必須準備」
申請には土台となるIDや宣言が必要です。これらは審査上重要な要素となるため、漏れなく準備することが採択(合格)への近道です。
1.gBizIDプライムアカウントの取得 法人・個人事業主向けの共通認証IDです。
マイナンバーカードを使えばオンラインで即日~数日で取得可能です。郵送の場合は2週間程度かかることがあります。
※ マイナンバーカードを使わない(郵送)場合
- 印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内の原本)
- 登録印(実印)
- スマートフォンまたはメールアドレス(認証コード受信用)
- 登記事項証明書(※ 法人のみ・原本が必要)
- 本人確認書類(※ 個人事業主のみ・運転免許証など)
2.SECURITY ACTIONの宣言 情報セキュリティ対策に取り組む自己宣言です。Webで数分で完了します。「一つ星(★)」または「二つ星(★★)」の宣言が必要です。
⚠️ 申請前に必ず確認!「準備状況」チェックリスト
以下の項目に一つでも当てはまる場合、対策が必要です。
□ まだ1回目の決算・確定申告が終わっていない
納税証明書などの書類が揃うまで申請を待つ必要があります。
□ IT導入補助金が入金されてから支払いをしたい
IT導入補助金は「後払い」です。一時的に代金を全額支払う資金準備が必要です。
□ 自分ひとりで申請手続きを完結させたい
原則として、認定を受けた「IT導入支援事業者」との共同申請が必要です。
□ パソコンやモニター「だけ」安く買いたい
原則としてハードウェア単体は対象外で、指定のITツールとセットでの申請が必要です。
□ IT導入補助金が通るか分からないので、先にソフトを使い始めたい
後述する「交付決定」が出る前に発注したものは、1円も補助されません。
これらのチェック項目をクリアしたら、いよいよ実際の申請作業へと移ります。まずは全体のスケジュール感をつかんでおきましょう。
IT導入補助金の申請から入金までの流れ(期間イメージ)
IT導入補助金の手続きは、準備から入金までおよそ3~6ヶ月程度の時間がかかります。下図は、各工程がどの時期に行われるかの目安(ガントチャート)です。募集回ごとの正確なスケジュールは、必ず公式サイトの最新情報を確認するようにしてください。
| 申請工程(目安) | 1ヶ月目 | 2ヶ月目 | 3ヶ月目 | 4ヶ月目~ |
|---|---|---|---|---|
| STEP 1:ID取得・パートナー選定 | 準備期間 | |||
| STEP 2:交付申請の作成 | 共同作業 | |||
| 審査期間(事務局) | 審査中 | |||
| STEP 3:交付決定・発注・導入 | 事業実施 | |||
| STEP 4:実績報告・補助金入金 | 精算・振込 |
ITツールとIT導入支援事業者を探す
IT導入補助金は支援事業者と二人三脚で進める制度です。導入したいソフトと、それを快適に動かすパソコン・モニター(ハード)にも対応できる事業者を選ぶとスムーズです。公式検索は現在準備中ですが、公開後は下記ページの「IT導入支援事業者を探す」から検索できます。
検索ページ:IT導入補助金公式「ITツール・IT導入支援事業者検索」(2026年2月12日時点「準備中」)
交付申請の作成(共同作業)
支援事業者のシステムから招待メールをもらい、Web上で事業計画を入力します。この際、前述のgBizIDが必要になります。
【最重要】交付決定を待ってから発注する
審査に通り「交付決定通知」が届いてから、初めて発注・契約・支払いが可能になります。通知より前に契約・購入したものは、いかなる理由でも補助対象外になってしまうため、はやる気持ちを抑えて通知を待ちましょう。
実績報告をしてIT導入補助金入金
導入・支払いを終え、証憑(しょうひょう:領収書など)を添えて報告します。不備がなければ、事務局の確定検査後に補助金が指定口座に振り込まれます。
IT導入補助金は、申請する「枠」ごとに公募スケジュールが異なり、締め切りの回数や交付決定のタイミングも変わります。特に以下に注意してください。
・締め切り回数の違い: インボイス枠は締め切り回数が多い一方、通常枠は回数が少ない傾向があります。
・交付決定日のズレ: 同じタイミングで申請しても、枠が異なれば「交付決定日」が数週間ずれる場合があります。
なお、補助金の対象となる購入は「交付決定通知」が届いてからでなければ認められません。必ず自社が申請した枠の交付決定通知を確認してから発注してください。
スムーズに入金までたどり着くためには、事前に「やってはいけないこと」や「リスク」を正しく理解しておく必要があります。
IT導入補助金の注意点
メリットの多いIT導入補助金ですが、活用には慎重な検討が求められるルールもあります。特に資金面や継続性については、後で「知らなかった」とならないよう確認しておきましょう。
・賃上げの義務: 申請額が大きい枠など、一部の枠では賃上げ計画の策定と実行が必須となり、未達成だと返還を求められることがあります。
・不採択の可能性: 導入の目的が曖昧なことが原因で落ちるケースが多くあります。なぜそのソフトが必要なのか、業務がどう楽になるのかを言葉にできるようにしておきましょう。
・継続利用の義務: 補助対象期間内の解約や、事業計画に沿わない運用は返還対象となる場合があります。
・原則「後払い」: 入金は支払いの数ヶ月~半年後です。一時的な資金繰りが必要です。
・課税対象: 受け取ったIT導入補助金は「税込価格」で算定され、原則として雑収入などの課税対象(法人税・所得税の対象)になります。
IT導入補助金についてよくある質問(FAQ)
Q. スマートフォンから申請はできますか?
- A. スマートフォンでも可能な場合はありますが、トラブル防止のためパソコンでの申請が推奨されています。
- 電子証明書の読み取りアプリとの連携や、ファイルの添付操作が正常に動作しないことが多いため、トラブル回避のためにもパソコンを用意しましょう。
Q. 建設用CADならどんなものでも対象になりますか?
- A. 事務局に登録されている「ITツール」のみが対象です。
- また、販売店も「支援事業者」として登録されている必要があります。購入前に必ず販売店へ「IT導入補助金の登録済みツールか」を確認してください。
Q. IT導入補助金で買ったパソコンが壊れたら買い替えてもいいですか?
- A. 注意が必要です。
- IT導入補助金で購入した財産には法定耐用年数に基づく処分制限があります。処分制限期間内に事務局への手続きを行わずに勝手に買い替えたり廃棄したりした場合、返還を求められることがあります。まずは事務局へ相談してください。
Q. 受け取ったIT導入補助金は課税対象になりますか?
- A. 原則として課税対象(収入)になります。
- IT導入補助金は会計上「雑収入」などとして計上され、法人税・所得税の対象になります。詳しい処理は顧問税理士に確認しましょう。
点群処理ソフトとは?ソフト+高性能パソコンで広がる活用の幅
点群データは、ドローンやレーザースキャナで地形・構造物を計測した際に取得される無数の点(座標)を集めたデータのことです。これを専用の「点群処理ソフト」で読み込み、3Dモデルとして可視化・編集します。
点群データは量が多い場合ソフトの動作が重くなることもあるため、導入時には快適に作業できるだけのパソコン環境を用意しておくと安心です。
・ インボイス枠なら「モニター」や「プリンター」も補助対象
・ 4Kなどの高精細モニター導入で、図面や点群データの確認が快適に
・ ソフトとハードをまとめて申請することで、導入コストを大幅に抑えられます
※ ハードウェア(パソコン・モニター等)のみの申請はできません。必ず対応するソフトウェアとセットで申請する必要があります。
点群処理ソフトはメーカーごとに得意分野が大きく異なるため、自社の目的に合った製品を選ぶことが重要です。そこで、建設現場でよく利用されている代表的なソフトをいくつかご紹介します。
| ソフト名 | 特徴 |
|---|---|
| TREND-POINT | 国内公共工事の定番。i-Construction基準に対応し、多くの現場で標準的に採用。 |
| WingEarth | 大規模データの処理に強く、広範囲の3Dデータも高速かつ軽快に動作します。 |
| ScanX | クラウド・AI活用。ネット上でAIが自動分類。クラウド上で動作するブラウザ型ソフトです。 |
まとめ:専門家と二人三脚で確実な一歩を
2026年度の「デジタル化・AI導入補助金」は、建設業の生産性向上やデジタル化を進めるうえで心強い制度です。
ただし申請には多くの確認事項があり、初めて取り組む方にとっては分かりにくい場面も少なくありません。難しいと感じる部分は、信頼できる専門業者(IT導入支援事業者)を頼ることで、道が開けるはずです。この記事が、あなたの新しい一歩を支える参考になれば幸いです。
※ この記事の内容は2026年2月12日時点の情報に基づいています。IT導入補助金の公募要領やルールは時期によって変更される可能性があるため、必ず最新のIT導入補助金の公式サイトの情報をご確認ください。
