
桜色や若草色など、
優しくて明るい色合いが多く、
見た目にも「春」を感じられる他、
桜葉や蓬、苺、新茶など旬の素材が使われ、
ほんのりと漂う香りは
私達に安らぎを与えてくれます。
和菓子は季節を先取りすることも多く、
春の餅もまたまだ肌寒い時期から
店頭に並びますから、
こういった春の餅が目に入ると
春の訪れが近いことを感じて、
何となく気持ちが浮き立つものですね。
牡丹餅(ぼたもち)
春の花である牡丹が名前の由来の
「牡丹餅」(ぼたもち) 。
「おはぎ」は秋の花である萩が名前由来で、
食べる季節によって名前を区別しています。
更に、丸型の餅にこしあんが「牡丹餅」で、
俵型の餅に粒あんをくるむのが「おはぎ」と
区別されていましたが、
現在では名前や作り方の区別は
曖昧になっています。
鶯餅(うぐいすもち)
春を告げる鳥「鶯」(うぐいす) の姿に見立てた
若草色の餅菓子「鶯餅」(うぐいすもち) です。
あの豊臣秀吉が「鶯餅」の名付け親という説が
あります。
たっぷりの餡を
求肥または軟らかな餅で薄く包み、
鶯のような形に整えたら、
うぐいす粉(青大豆の黄粉)をまぶすのが
一般的な「鶯餅」ですが、
生地に蓬を混ぜ、仕上げに黄粉をまぶしたもの
もあります。
よもぎ餅/草餅
春先に新芽の出る蓬 (よもぎ) で作られる
「蓬餅(草餅)」の鮮やかな緑の色合いは
春の訪れを感じさせてくれます。
3月3日の「上巳の節句(雛祭り)」の
「菱餅」の一段目も「草餅」です。
これはその草の香りが邪気を払うと
信じられてきたためです。
蓬 (よもぎ) の葉には、ビタミン類を始め、
カリウム、カルシウム、鉄、食物繊維などの
成分がバランスよく含まれ、古くから世界中で
薬用として重宝されてきました。
摘んだ若い蓬 (よもぎ) の葉を茹でて灰汁を抜き、
細かく刻んで餅に練り込み、餡を包み込んだ
気取らない餅菓子です。
この季節ならではの
生命力溢れる色と香りを楽しみたいですね。
桜餅(さくらもち)
春の和菓子の代表格の「桜餅」には、
主に2種あり、いわゆる関東風の「長命寺」と
いわゆる関西風の「道明寺」があります。
「桜餅」が誕生したのは江戸時代です。
将軍徳川吉宗の命で植樹された、
隅田川沿いの桜の葉を活用して誕生した
餅菓子と言われています。
それが後に関西地方にも伝わります。
関東風は小麦粉を用いて作られ、
関西では道明寺粉を用いて作られています。
ですが、関東風も関西風もともに
薄紅色に作られ、
塩漬けにした大島桜の葉で包み、
葉の香りも楽しむことが出来ます。
関東風の「長命寺」
関東風の「桜餅」は「長命寺」とも呼ばれます。
東京・向島の隅田川沿いにある
「長命寺」で門番をしていた山本新六が、
桜葉を塩漬けにして餅を包み売り出したところ
江戸の人々の間で人気を博しました。
関東風の「桜餅」は、
小麦粉と白玉粉(または餅粉)に
水や砂糖を少しずつ加えて混ぜ、
食用色素で桜色をつけて
薄く焼いて作った生地でこしあんを包み、
塩漬けの桜の葉を巻いた餅菓子です。
関西風の「道明寺」
「道明寺」と呼ばれる関西風の桜餅は、
大阪府藤井寺市にある真言宗の尼寺
「道明寺」で戦国時代に作られていた
保存食「道明寺糒」(ほしいい) を粗く砕いた
「道明寺粉」を餅生地に使用して作られたため
この名前が付いたと言われています。
桜の葉の塩漬けを使った「桜餅」が
江戸で大流行し、その後、関西を中心に
道明寺粉を使った「道明寺」が広まりました。
もち米を砕いた道明寺粉を蒸した餅で
餡を包み、桜の葉で包んで作る「道明寺」は、
つぶつぶとした食感と
もちもちとした食感が心地良く、
桜葉から移った香りとほのかな塩気が
相性抜群です。
花見団子・三色団子
お花見シーズンに欠かせない、
「花見団子(三色団子)」の上から
桜色・白色・緑色の三色には、
桜・雪解け・新緑といった
春の情景が表現されています。
三色の由来は諸説あります。
降り積もる雪の下に芽吹く新芽、
そして雪が溶け春になり花が咲くという、
春の訪れとその喜びを表しているという説。
ピンクは桃の花、白は白酒、緑は蓬と、
雛祭りの「菱餅」に因んでいるという説。
日本で邪気払いの意味を持つ紅白に、
同じく邪気払いとして利用されてきた
蓬の緑を重ねて、
無病息災への思いを込めたという説などが
あります。
椿餅
「椿餅」は、一般的に、道明寺粉を蒸して
こしあんを包み、2枚の椿の葉で挟んだ
餅菓子の一種です。
椿の旬である冬から春にかけて販売されます。
「椿餅」は、日本最古の餠菓子とも言われ、
平安時代から続く優美な伝統菓子です。
『源氏物語』や『宇津保物語』にも、
「つばいもちひ」として登場していて、
上流貴族の間では饗応用として人気が高く、
蹴鞠 (けまり) の時に用意される定番のおやつ
だったそうです。
椿は日本原産の花です。
冬でも葉を落とさない常緑樹であるため、
古くから神が宿り、邪気を払う力を持つとされ
特に平安時代には、招福・長寿・吉兆の木と
されてきました。
蕨餅(わらびもち)
「立春」を目安に作り始められる餅菓子で、
俳句や和菓子の世界では春の季語であり、
特に4〜5月に旬を迎える伝統的な和菓子です。
年数を経た蕨 (わらび) の根から抽出した
希少な「本蕨粉」に水や砂糖を加えて
よく混ぜながら透明になるまで煮て、
冷水に取って水気を拭き取ったら、
きな粉や黒蜜をかけて食べるのが一般的です。
なお、本物の蕨粉は希少品になっており、
市販の蕨粉や蕨餅粉は、
さつまいも澱粉やタピオカ澱粉に
少しの本わらび粉を混ぜたものが大半です。
