
江戸幕府が「五節供」を制定し、
3月3日が「桃の節句」となると、
美しい雛人形を持つことは
町娘の夢となりました。
雛飾りはどんどん華美になったことから、
庶民の贅沢を警戒する江戸幕府は、
享保6(1721)年の「奢侈禁止令 (享保の改革)」で
24cm(八寸)以下と制限しました。
内裏雛(だいりびな)
「内裏」(だいり)とは、
天皇のお住まいになっている御所のことで、
お雛様は天皇と皇后の結婚の儀式をモデルに、
幸せの象徴となっています。
「男雛」は、正装の「束帯」(そくたい) で、
「冠」を被り、「袍」(ほう) という上着を着て、
手には「笏」(しゃく) を持ちます。
一方「女雛」は、「五衣」(いつつぎぬ) に
上着である「唐衣」(からぎぬ) と
腰に「裳」(も) を纏った「十二単」で、
手には「桧扇」(ひおうぎ) を持ちます。
なおこの衣裳は、
現在も皇室に受け継がれている正装です。
三人官女(さんにんかんじょ)
内裏に仕える女官達のこと。
「三人官女」の「官女」は、
宮中に仕える女官 (にょかん) のことです。
皇后や妃の身の回りの世話をするだけでなく、
姫君に礼儀作法や和歌、楽器の演奏などを
教える家庭教師でもありました。
深い教養と多彩な才能に恵まれた
キャリアウーマンでした。
3人のうち、1人だけ座っている
(稀に1人だけ立っていることもありますが)
官女(女官長)を中央に置きます。
女官長は盃を「三方」に載せて持っています。
女官長は眉がなく歯が黒いことがあります。
これは当時の既婚者の習慣であり、同時に、
他の2人より立場が上であることも示して
います。
残りの2人のうち、
お酒の入った「提子」(ひさげ) を持ち、
口を開いて、左手の指が伸びている官女を
向かって左側に置きます。
なお「提子」(ひさげ) には、
「長柄銚子」にお酒を加える役割があるので、
「加銚子」(くわえのちょうし)とも呼ばれます。
お酒を注ぐ「長柄の銚子」を持ち、
口は閉じた官女を向かって右側に置きます。
なお注ぎ口のある方が
内側 (三方側) にくるように、
両手で持たせます。
五人囃子(ごにんばやし)
「五人囃子」(ごにんばやし) は、
五人で「能楽」を奏で、結婚式に花を添えます。
向かって左から
「太鼓」(たいこ) →「大鼓」(おおかわ) →
「小鼓」(こつづみ) →「笛」(ふえ) →「謡」(うたい)
の順で並べます。
太鼓(たいこ)
向かって一番左には、
両手にバチを持った雛人形を飾り、
その前に専用の台に乗っている太鼓を
置きます。
五人囃子のリーダー的存在です。
大鼓(おおつづみ)
向かって左から二番目には、
手で直接打面を叩いて音を出す
「大鼓」を持つ雛人形が並びます。
甲高く迫力のある音が特徴的で、
「ヤー!」とか「ハー!」といった
掛け声を出すのもこの役の担当です。
小鼓(こつづみ)
大鼓より向かって右隣には、
ひと回り小さいタイプの「小鼓」を
肩に担いだ雛人形を配置します。
小鼓には指の使い方によって
4種類の音色を打ち分けて、
多様な音色を作り出すことによって
表現豊かに能楽を演出するのが
大きな役割です。
笛(ふえ)
小鼓より向かって右隣りに並ぶのは、
「横笛」を持つ雛人形です。
主旋律を奏でる役割を担っています。
能楽においては
力強い吹き方をすることから、
リズムを刻む打楽器的な役割も
あります。
謡(うたい)
向かって一番右端には、
右手に扇を持った「謡」が並びます。
声楽が基本ですが、
歌の上手さだけでなく
扇の取り扱いや仕草などで
雰囲気を盛り上げるのも大切な役割
です。
なお「雅楽」になぞらえて
「羯鼓」(かっこ)「琵琶」(びわ)「笙」(しょう) などを持っている場合もあります。
おかっぱ頭をしていることから、彼らは、
元服前の少年達であることを示しています。
四段目に飾ったの二人の男性が「随身」です。
「随身」は外出する際のSPのような存在で、
弓矢をつがえて宮廷を警護する人です。
実は「三人官女」や「五人囃子」よりも
位の高い身分で、
向かって左の若者が「右大臣」、
右の髭をはやした老人が「左大臣」で、
装飾された美しい剣や弓を持っています。
仕丁(しちょう)
五段目の三人の男性は「仕丁」と言います。
「仕丁」は宮中の雑用係のことで、
15人のお雛様の中で一番庶民的な人達です。
右から
「立傘」(雨傘を持つ係)
「沓持」(靴台を持つ係)
「台傘」(日傘を持つ係)で、
出掛ける時の様子を表しています。
箒、ちりとり、熊手を持っている場合は、
宮中を掃除する様子を表しています。
いろいろな表情をしていて、
怒り上戸、泣き上戸、笑い上戸の3人なので、
「三人上戸」(さんにんじょうご)とも
呼ばれます。
表情豊かな子に育ちますようにという
意味が込められているそうです。
市松人形
「市松人形」とは、「やまと人形」の別称で
関西では「市松」、北陸方面では「三吉」、
その他にも「じんじょこ」「ねんね」「でく」等、
地方により様々な呼び方があります。
一般的には男の子は羽織袴の正装、
女の子は通常おかっぱ頭で振袖姿をした
日本人形の代表的な人形です。
「市松人形」は、
歌舞伎役者を模して出来たため、
「市松人形」を贈る際には
美しい子に育つようにという
願いが込められます。
また、姉妹全員に
「雛飾り」を与えることが難しいことから、
次女以降には「市松人形」を贈るという
文化もあります。
「上巳の節句」には、雛段飾りなどの左右に
男女一対で飾られます。
つるし雛
「つるし雛」の風習は、江戸時代後期頃、
愛する子供や孫のため、手作りの雛飾りで、
初節句を祝おうという親心から生まれたもの
です。
吊すものとしたのは、
女の子の生活に必要なもので、
人形類、野菜や果物、花、手毬などでした。
これは子孫繁栄、家族の幸せ、人の輪を表していると言われています。
流し雛
地方によっては、3月3日の夕方に、
簡素なひな人形をお供え物とともに
川に流す、「流し雛」の慣習があります。
たとえば桟俵(さんだわら)を舟にして、
紙で作った雛一組と、菱餅や桃の花、
線香やひなあられなどを載せて
川に流します。
人形を流した習わしに由来すると言われ、
穢れや災いを流す意味合いがあるそうです。