Wikipediaのない時代があった。(当たり前である)
改めて調べてみると、Wikipediaのサービス開始は2001年。その後、2006年前後に日本で普及・一般化したとされる。ぎりぎり昭和生まれの自分がインターネットに触れた頃、あの百科事典はまだ存在していなかったのである。
オタクカルチャーでいくと、その代わりにあったのは膨大な個人サイトだ。デザインが簡素なものから、やけに凝ったものまで、まさに千差万別。アニメや映画の感想、監督やスタッフの情報、考察や分析の数々。後年にブログが流行りSNSがダメ押しで現れ、個人サイトは歴史の遺物と化していった……。
だからこそ、そこには「憧れ」があった。オタク諸先輩たちの執念の結晶。それこそが個人サイトだ。オタクとして成長期に入る、つまりコロモンがアグモンになる頃、決まって舞台裏に関心が増すものだ(当社比)。このアニメは誰が描いているのか、この映画はどの会社が作っているのか、監督は、脚本は、アニメーターは、造形は、スーツアクターは。今でこそ、資料性の高いムック本をわざわざ書店で注文しなくても、VHSのクレジットを一時停止しなくても、スマホひとつですぐに調べることができる。
そうじゃない時代には、情報が蓄積されていたのだ。個人サイトに。
私の趣味領域でいけば、仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン、ゴジラ、といった特撮分野だ。作品の放送・公開年度、話数、サブタイトル、プロデューサー、監督、脚本、スーツアクター、音楽、特技監督。そういった情報は、専門誌か映画のパンフくらいにしかまとまっていなかった。やがてインターネットが一般化し、調べようと思えばすぐに調べられる環境が整い始めたが、まだこの時点では「作品ごと」。あのページに行って調べる、この公式サイトで閲覧する、の繰り返し。だからこそ、情報が集積されている個人サイトには圧倒的な「利」があった。それを作れるだけの、能力、執念、情熱に「憧れ」があった。
映像作品は、実は映像を観なくても楽しめる。この回とこの回の監督は同じ。シリーズ構成とメイン脚本はこの人。このプロデューサーの作家性……。データと睨めっこし、そこに何かしらの文脈や背景を見出す醍醐味。それが好きだからこそ、あの頃の個人サイトには大変お世話になったし、ロマンが詰まっていた。ただアクセスしに行って、いくつもの表を、リストを、グラフを、眺めていたものだ。
例によって前置きが長くなった。そんなこんなで、作ったのである。『平成仮面ライダー制作陣データベース』を。

kamenrider-36nfqeyb.manus.space
AI「Manus」で構築した、平成仮面ライダー『クウガ』から『ジオウ』までの全20作、累計960エピソードの情報を集積したデータベース。2026年の正月あたりにぼんやり構想し、取りあえず手を動かし、1月13日にプレ公開。Twitterやブログで宣伝し、フォロワーの皆さんからのリクエストや不備のご指摘を踏まえ、更に改良。機能を強化し、デザインやロゴも見直し、1月21日に(一旦の)完成版として正式リリースを告知した。
おかげさまで、告知の投稿は僅か1日で16万インプレッション。データベースそのもののページビューは、正式な公開から24時間で8,000超を記録した。いち個人の成果物としては、悪くない数字だろう。
【 正式リリース 】
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2026年1月21日
AI Manus @ManusAI_JP で構築した『平成仮面ライダー制作陣データベース』が完成しました。
・クウガ〜ジオウ全20作の監督と脚本家を網羅
・お名前から作品を横断して検索
・話数や放送月から作品を横断して検索
・担当回数のランキングを実装
▶︎ 詳細はリプ&ツリーにて解説 pic.twitter.com/YZGXWlyj6a
機能としては、分かりやすいものである。
960のエピソード、その全ての「話数」「サブタイトル」「監督」「脚本」「放送日」を網羅している。要は、ただそれだけだ。そこから、シリーズ20作の監督・脚本担当回数のランキング、個人ごとの担当作品割合、作品ごとの担当個人割合、話数や放送月で作品を横断しての検索など、ひとつのデータベースで楽しめる角度をいくつかそろえた。

例えば、『仮面ライダー鎧武』だとこの通り。これが一発で出力され、視認できる。メイン監督である田崎監督が実は4回しか撮っていないとか、そういう事実や気付きに楽しさを見出せる人向けのサイトだ。

監督から表示させると、この通り。どうしても『アギト』や『ファイズ』の印象が強いが、実は田崎監督が最も本数を撮っているのは『カブト』だったり。逆に、こう見せられると『フォーゼ』や『ウィザード』の田崎監督回が気になってきたりもする。
といった内容だが、お恥ずかしながら私は、HTMLコードがさっぱり分からない。

これが実際の開発画面である。右半分、一体なにが起きているのか私にはさっぱり分からない。なんか自動でざーっと文字列が流れていくのを、コーヒーを飲みながら見つめていた。
今回使用したAI「Manus」は、自然言語(日本語)のみでウェブサイトの構築、及びデプロイが可能となっている。これが本当にすごい。あの頃に憧れを抱いた個人サイト、それを一切の専門知識なしで構築、リリースまでもっていける。プロンプトも、特別なものではない。「どういうサイトを作りたいか」「どんなデザインにしたいか」「情報はどう整理するか」「どう検索したらなにを表示させたいか」。それをひたすら作文するのみである。
……とはいえ、そこにはそれなりの苦労があった。
まず何よりソースは公式から、『仮面ライダー図鑑』という公式サイトを参照するのだが、なんと公式の情報にいくつか揺れや間違いが存在している。放送年度の表記ミス、苗字と名前の間の空白の有無の揺れ、旧字体を使うか否かの揺れ、連名で脚本を担当したはずなのに片方しか載っていない、など。
また、連名の2人の脚本家をそれぞれデータベースに登録したい訳だが、AIは「連名表記といういち個人」でカウントしてしまう。あるいは、2人の脚本家を別々に認識したかと思えば、エピソードを重複させ別個で記載したり。それらを分離させ、適切にカウントさせる指示を繰り返す。あっちを修正すればそっちが壊れ、であればまず情報の精査の前にデータベースの前提を整えるべきだろう、等々。
プルダウンで選択させる監督の50音順がうまく並ばないので、一度全てのお名前をプレーンテキストで吐かせ、振り仮名のCSVを作成して適用させる。話数を同一ルールで管理したいのに、例えば『クウガ』は「EPISODE 1」、『響鬼』は「一之巻」など、独自の表記があるゆえに検索結果がおかしくなる。そういったものを何度も何度も修正し、裏の処理を指示し、コツコツと完成に近づけていく。
繰り返すほどに、AIの考え方の癖も分かってくる。ただ要望を伝えるだけではなく、具体的に、例示を添えると分かってもらえる。前の処理を踏襲させたい時は、念のため「前の処理を踏襲してください」と念押しする方が望ましい。任せても勝手にやってくれる範囲と、事細かに監督しないといけない範囲の、独特な線引き。こういった構築の経験がそもそもないので、その道の人からすれば随分と遠回りをしたと思いますが。だからこそ、非常に勉強になりました。
そうしてデータベースをいくらか完成させたら、デザインを少しだけ見栄えの良いものに。これもまたAIにパターンをいくつか提案させ、そこから選んで実装していく。あくまで資料サイトなので、ニュートラル&アカデミックな方向に。
最後に、やっぱりヒーロー物を扱うウェブサイトなのでひとつくらい「それらしい」ものを載せようと、ロゴを作成。ManusはNano Banana Proが使えるので、同一タスク内でロゴを生成。とっても「それっぽい」ものが上がってきた。「Kamen」ではなく「Masked」にしたのは、私の極めて個人的なこだわりである。(ご存知ない方に説明すると、平成ライダーは1期がMasked、2期がKamenと、表記が区別されている。)

そんなこんな、構築の記録でした。かなりのクレジットを投入してしまい、終わってみればもっと効率よくシンプルに辿れたはずだと反省しつつ。でも、HTMLコードが全く分からないズブの素人でもこうやってウェブサイトを構築から公開まで持っていける、本当に良い時代になったなぁ、と。
作品を観て咀嚼するのが本道とはいえ、やはりこうやって「作る」作業は楽しいですね。広義には、ブログで感想をしたためる行為だって「作る」と言えるのだろう。作品を受け止め、飲み込むだけでなく、それを受けて実際に手を動かしてみる。そこに生まれる気付き、動いた感情、湧いたモチベーション。そういうものを愛しているからこそオタクなんだなぁ、と痛感する訳です。
あの日、「憧れ」を抱いた個人サイト。AIに大いに助けられて、随分と楽をしてしまったけれど。「こういうオタクがいて、こういうのを作ってます、だって本人が誰よりも欲しかったから」というこの衝動が、次の世代の何処かの誰かに伝わっていくことを願います。
そのための、記録でした。
これはオープニングのタイトルバックっぽく作ったらオモシロが勝ってしまった没案。 https://t.co/dNzdCKpkmu pic.twitter.com/golDWzBbWc
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2026年1月22日

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