「あの人がいると、他のスタッフが萎縮する」「ベテランが仕切りすぎて、新人が育たない」——こんな悩みを抱える飲食店経営者は少なくありません。
実は、飲食店コンサルタントとして200店舗以上を見てきた経験から、ある法則が見えてきました。それは、「仕切りたがる人」がいる店舗ほど、売上が停滞しているという事実です。
一見、仕切ってくれる人は頼もしく見えます。現場をまとめ、新人を指導し、経営者の代わりに動いてくれる。しかし、その裏で確実に店舗の成長が止まり、優秀な人材が離れ、雰囲気が悪化し、最終的には売上が下がっていくのです。
本記事では、なぜ「仕切りたがる人」が組織にとって毒になるのか、そしてその対処法を、現場の実例をもとに徹底解説します。経営者だけでなく、店長やマネージャーの方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

- 「仕切りたがる人」とは何者か?
- なぜ「仕切りたがる人」がいると売上が止まるのか?5つの理由
- 「仕切りたがる人」が生まれる3つの原因
- 「仕切りたがる人」への5つの対処法
- 「仕切りたがる人」を排除した店の成功事例
- 仕切らせない組織を作る5つの仕組み
- まとめ:「仕切りたがる人」を放置することは、店を潰すこと
「仕切りたがる人」とは何者か?
まず、「仕切りたがる人」の特徴を明確にしましょう。
典型的な特徴
行動パターン
- 自分が正しいと信じて疑わない
- 他人のやり方を否定し、自分のやり方を押し付ける
- 新人や後輩に対して高圧的
- 経営者やオーナーの前では従順、裏では批判
- 自分より優秀な人の成長を妨げる
口癖
- 「私がいないと回らない」
- 「前からこうやってるの」
- 「それは違う、こうするべき」
- 「新人のくせに」
- 「私の時代は…」
心理
- 承認欲求が強い(認められたい、必要とされたい)
- 支配欲求がある(人を動かしたい、影響力を持ちたい)
- 不安がある(自分の立場が脅かされることへの恐怖)
「リーダー」と「仕切りたがる人」の違い
混同されがちですが、両者は全く別物です。
| リーダー | 仕切りたがる人 | |
|---|---|---|
| 目的 | チーム全体の成長 | 自分の優位性の確保 |
| 他者への態度 | 育てる、引き上げる | 支配する、抑え込む |
| 意見の扱い | 聞く、取り入れる | 否定する、潰す |
| 成功の定義 | チームの成果 | 自分の評価 |
| 後進の育成 | 積極的 | 消極的(脅威になるから) |
リーダーは「チームのため」、仕切りたがる人は「自分のため」に動くのです。
なぜ「仕切りたがる人」がいると売上が止まるのか?5つの理由
理由1:新しいアイデアが生まれない
メカニズム 仕切りたがる人は、「今まで通り」を強制します。新しい提案をしても「それは違う」「前からこうやってる」と潰されるため、誰も意見を言わなくなります。
結果
- メニューが何年も変わらない
- 接客方法が時代遅れ
- SNS活用などの新しい取り組みが進まない
- 競合店に取り残される
実例 あるカフェで、若手スタッフが「Instagramでリール動画を投稿しませんか」と提案。しかしベテランスタッフが「そんな暇があるなら掃除して」と一蹴。結果、デジタル集客が進まず、近隣の競合カフェに客を奪われた。
理由2:優秀な人材が辞めていく
メカニズム 仕切りたがる人は、自分より優秀な人を脅威と感じ、潰しにかかります。
具体的な行動
- 成果を認めない、褒めない
- 些細なミスを大げさに指摘
- 「あの人は使えない」と陰で言いふらす
- 経営者に対してネガティブ報告
結果 優秀な人ほど、「この環境では成長できない」と見切りをつけて辞めていきます。残るのは、仕切りたがる人に従順な人だけ。
実例 居酒屋で、調理の才能がある若手が入社。半年でメニュー改善案を10個提案。しかし古参の料理長が全て却下し、「生意気だ」と周囲に愚痴る。若手は3ヶ月後に退職。今では競合店で料理長として活躍中。
理由3:顧客視点が失われる
メカニズム 仕切りたがる人の関心は「自分の立場」であり、「お客様」ではありません。
具体例
- 「私はこうやってきた」が基準で、客のニーズは二の次
- 「これが正しい」と思い込み、客の声を聞かない
- 効率より自分のやり方優先で、提供が遅くなる
- 新人がミスすると客の前で叱責(客が不快に)
結果 サービスの質が落ち、客離れが起きます。
実例 レストランで、常連客が「この料理、前より量が少ない気がする」とスタッフに伝えた。しかし仕切り役のホール担当が「いえ、変わっていません」と即座に否定。客は不快に感じ、それ以来来店せず。
理由4:組織が「分断」される
メカニズム 仕切りたがる人は、自分の派閥を作ります。
具体的な構造
- 「仕切る人」に従う派閥
- 「仕切る人」に反発する派閥
- どちらにも属さない中立派
この分断により、チームワークが崩壊します。
結果
- 情報共有が滞る
- 助け合いがなくなる
- 雰囲気が悪く、ギスギスする
- ピーク時の連携が取れない
実例 カフェで、古参スタッフ(仕切り役)と新人スタッフが完全に分断。情報共有がなく、新人がミスしても誰も助けない。客の前で混乱が起き、クレームに。Googleレビューで「スタッフ同士の連携が悪い」と低評価。
理由5:経営者の判断が歪む
メカニズム 仕切りたがる人は、経営者に対して巧みに「自分に都合の良い情報」だけを報告します。
具体例
- 自分のミスは隠す
- 他のスタッフのミスは大げさに報告
- 「〇〇さんが辞めたいと言っている」と嘘を伝える
- 「私がいないと店が回らない」とアピール
結果 経営者が現場の真実を把握できず、間違った意思決定をします。
実例 オーナーが「新メニューを試したい」と提案。しかし料理長(仕切り役)が「スタッフの負担が増えて不満が出る」と報告。実際はスタッフは賛成していたが、オーナーは諦めた。結果、メニューが停滞し、売上も停滞。
「仕切りたがる人」が生まれる3つの原因
原因1:経営者の放置
なぜ生まれるか 経営者が現場に関与せず、「任せきり」にすると、権力の空白が生まれます。そこに仕切りたがる人が入り込み、支配構造を作ります。
典型的なパターン
- 「現場のことは〇〇さんに任せてるから」
- 経営者が週1回しか店に来ない
- スタッフと直接話さない
原因2:正当な評価制度がない
なぜ生まれるか 明確な評価基準がないと、「声が大きい人」「古株」が権力を持ちます。
典型的なパターン
- 勤続年数だけで給料が決まる
- 成果を評価する仕組みがない
- 「何となく偉い人」が存在する
原因3:経営者の承認
なぜ生まれるか 経営者が、仕切りたがる人を「頼りになる」と評価してしまうと、その人の支配が強化されます。
典型的なパターン
- 「〇〇さんがいないと困る」と公言
- 仕切る人の言うことを鵜呑みにする
- 他のスタッフより明らかに優遇
「仕切りたがる人」への5つの対処法
では、どう対処すべきか。具体的な方法を解説します。
対処法1:経営者が現場に入る
最も効果的な方法 経営者自身が定期的に現場に入り、全スタッフと直接話すことです。
具体的な行動
- 週3日以上は現場でシフトに入る
- 全スタッフと月1回、個別面談
- スタッフの意見を直接聞く場を作る
- 「〇〇さん経由」ではなく、直接コミュニケーション
効果 仕切りたがる人が「情報を独占」できなくなります。
対処法2:明確な評価基準を作る
具体的な基準
- 売上貢献度
- 顧客満足度(口コミ、リピート率)
- チームワーク(他スタッフからの評価)
- 新人育成の成果
重要なポイント 「勤続年数」や「声の大きさ」ではなく、「成果」で評価する仕組みを作ります。
対処法3:複数のリーダーを育てる
なぜ重要か 一人に権力が集中すると、仕切りたがる人が生まれます。
具体的な方法
- ホール担当リーダー、キッチン担当リーダーなど分散
- 若手にも責任あるポジションを与える
- 「この人がいないと回らない」状態を作らない
対処法4:「行動規範」を明文化する
具体的な内容
- 他人の意見を尊重する
- 新しいアイデアを歓迎する
- 後輩を育てることが評価される
- 高圧的な態度は許さない
掲示する バックヤードに貼り出し、全員で共有します。
対処法5:必要なら「別れる」決断も
最終手段 どうしても改善しない場合、その人との別れを決断することも必要です。
判断基準
- 何度話しても変わらない
- 他のスタッフが次々辞める
- 売上に明らかな悪影響が出ている
重要なポイント 「この人がいないと困る」と思っていても、実際にいなくなれば、店は回ります。むしろ、雰囲気が良くなり、売上が回復することも多いのです。
「仕切りたがる人」を排除した店の成功事例
事例1:東京・世田谷のイタリアン
状況
- 古参の料理長(45歳)が完全に厨房を支配
- 新メニューの提案は全て却下
- 若手が次々と辞め、3年で8人が退職
対処 オーナーが決断し、料理長と「契約終了」。
結果
- 28歳の若手を料理長に抜擢
- 新メニューを次々導入、SNSで話題に
- 若手スタッフが定着し、チームワーク向上
- 売上が半年で130%に増加
オーナーのコメント 「最初は不安でしたが、彼がいなくなった瞬間、空気が変わりました。みんな生き生きと働き始めた」
事例2:大阪・難波の居酒屋
状況
- ベテランのホール担当(50代女性)が仕切る
- 新人に対して高圧的、客の前でも叱責
- スタッフ全員が萎縮
対処 店長が個別面談で「態度を改めなければポジション変更」と通告。変わらなかったため、シフトを大幅削減。
結果
- 本人は自ら退職
- 残ったスタッフから「やっと言ってくれた」の声
- 新人の定着率が劇的に改善
- 雰囲気が良くなり、客からも「感じが良くなった」と好評
事例3:福岡のカフェ
状況
- オーナーの姪(30代)が実質的に店を支配
- 他のスタッフを見下す態度
- オーナーに「あの人が使えない」と頻繁に告げ口
対処 オーナーが全スタッフと個別面談を実施し、真実を把握。姪に対して「態度を改めるか、退職するか」の選択を迫る。
結果
- 本人は態度を改善(支配的行動をやめた)
- 他のスタッフが意見を言えるようになった
- 新しいアイデアが次々生まれ、売上向上
仕切らせない組織を作る5つの仕組み
最後に、予防策として、仕切りたがる人が生まれにくい組織の作り方を解説します。
仕組み1:フラットな組織文化
具体策
- 「さん」付けで呼び合う(上下関係の緩和)
- 誰でも意見を言える雰囲気作り
- 若手の意見も真剣に聞く
仕組み2:定期的な人事ローテーション
具体策
- ホール⇔キッチンのローテーション
- リーダー役を半年ごとに交代
- 「固定化」を避ける
仕組み3:360度評価の導入
具体策
- 上司だけでなく、同僚・後輩からも評価される
- 「チームワーク」「後輩育成」の項目を重視
- 高圧的な人は評価が下がる仕組み
仕組み4:透明性の高い情報共有
具体策
- 売上・経営状況を全員に共有
- 意思決定のプロセスを公開
- 「裏で決める」ことをしない
仕組み5:経営者の姿勢
最も重要 経営者自身が、「仕切らない」「支配しない」姿勢を示すことです。
- スタッフの意見を尊重する
- 失敗を責めない
- 多様性を認める
経営者の姿勢が、組織文化を作ります。
まとめ:「仕切りたがる人」を放置することは、店を潰すこと
仕切りたがる人は、短期的には「頼もしく」見えるかもしれません。現場をまとめ、経営者の負担を減らしてくれるように感じます。
しかし、長期的には確実に組織を蝕み、成長を止め、優秀な人材を失い、売上を下げます。
重要なのは、早期に気づき、対処することです。
「この人がいないと困る」という恐怖を乗り越え、健全な組織を作る勇気を持ちましょう。
そうすれば、スタッフが生き生きと働き、新しいアイデアが生まれ、お客様に喜ばれ、売上が伸びる——そんな好循環が始まります。
組織の人間関係に悩む飲食店経営者の方へ
「ベテランスタッフが仕切りすぎて困っている」「雰囲気が悪く、若手が定着しない」「誰に相談すればいいかわからない」——そんな悩みを抱えていませんか。
