サラダやサンドイッチなど、ハムはさまざまな料理に使用される食材です。食卓に馴染んだハム・ソーセージですが、それが何なのかを、改めて考えることって少ないのではないのでしょうか?

ハムの歴史

狩猟が盛んだった遥か昔、獲物を塩漬けにすることで長期保存できることを知ったのが、ハムの原点です。
中国では、10世紀の宋の時代に、金華火腿というハムが作られました。こちらは、豚の足をヒヅメもつけたまま丸ごと塩漬けにしたものです。
ヨーロッパでは12~13世紀からハムが作られており、中世には十字軍の影響により各地にハーブなどの香辛料が持ち込まれ、それによって味や保存技術が向上したことからハム作りは盛んになり、多種多様なハムが誕生しました。
日本では幕末の頃、オランダ人によってハムが長崎にもたらされ、明治天皇へ献上されています。その後一般的に食べられるようになったのは、1921年の第一次世界大戦時に、捕虜として日本に連れてこられたドイツ人によって広められたからとされています。日本では仏教が伝来して以降、肉を食べることが禁止されることがあったため、食肉加工の文化はほとんど発達せず、日本におけるハムの歴史は、他国と比べると非常に浅いと言えます。
そもそもハムってどんな食品?

ハムとは、かたまりのまま塩漬けにした豚肉を、燻製にしたりゆでたりして作られた加工食品です。
そのままでは日持ちがしない肉の保存性を高める目的があります。
元来「ハム」は豚のもも肉を指す英語ですが、現在では豚もも肉以外の部位から作られたものもハムと呼ばれています。ロース肉で作ったロースハムや骨がないボンレスハムは、一般的に流通しているハムとして親しまれています。
ハムの主要な種類

ここでは日本でもなじみ深い主なハムの種類を紹介します。ロースハムやボンレスハムのような定番の種類のほか、骨付きハムやベリーハムのような豪華な種類も。
1. ボンレスハム
豚のもも肉の骨を除いて作られていることからボンレスハムと呼ばれており、欧米では一般的なハムとして親しまれています。
赤身部分を使っているため鮮やかなピンク色をしており、あっさりした味わいと肉本来の食感を楽しめるのが特徴です。肉のうまみをいかしてボリューム感のあるサンドイッチやサラダにするのがおすすめ。
2. ロースハム
豚肉の背中部分にあるロース肉を使ったハムで、日本での生産量の70~80%を占めるほど一般的な種類です。ロースハムは日本発祥のハムで、欧米ではあまり一般的ではありません。
淡いピンク色でキメが細かく脂肪を多く含んでおり、しっとりとした食感とまろやかな風味が特徴です。そのままでもおいしく食べられるクセのない味わいで、卵料理やサラダなどいろいろな料理にも使えます。
3. ラックスハム(生ハム)
豚のもも肉を香辛料や調味料と一緒に塩漬けし、低温でじっくりと燻煙・熟成させて作られており、加熱されていないため生ハムとも呼ばれます。
鮮やかな色合いと柔らかな食感、独特の深い味わいがあり、サラダやサンドイッチ、パスタの具材として使われるだけでなく、甘みのあるフルーツとの相性も良いのが特徴です。
4. ショルダーハム
豚の肩肉を使っており、脂肪分が比較的少なく赤身とのバランスが良いのが特徴です。肉の味が濃く食感がしっかりしているので、肉のうまみを存分に味わいたい方に最適。
サンドイッチやサラダの具材として楽しむだけでなく、厚めに切ってステーキのように贅沢に味わうのも良いですし、上質なダシが出るのでスープにするのもおすすめです。
5. 骨付きハム
豚のもも肉やすね肉を骨がついたまま成型・加工して作ったハムで、ギフトとしても喜ばれます。見た目のインパクトを活かして、パーティーメニューにするのもおすすめです。
肉の部分を厚めに切ってソテーにしたり、パスタの具材にしたりするのがおいしい食べ方。ショルダーハムは食べ終わっても、残った骨を使ってスープとしても楽しめます。
6. ベリーハム
豚バラ肉を巻いて成型したハムで、木の年輪のような渦巻き模様が特徴です。華やかな見た目はパーティーのオードブルにも最適。柔らかでジューシーな食感と、豚バラならではのこってりとした脂の甘みを楽しめます。
薄切りにしてサンドイッチやサラダにするほか、厚めに切ってソテーやチャーハン、スープの具材にしてもおいしく食べられます。
7. プレスハム
昔は一般的に食べられていた日本独自のハム。豚肉だけでなく、細かくした牛・鶏・羊などの肉をケーシングに詰めて作られています。現在では、ハムカツなどに見られる赤いフチのあるハムがこれにあたります。
現在のJAS規格ではプレスハム類に分類され、ロースハムなどの熟成ハム類とは区別されています。
8. パストラミ
パストラミは東欧発祥の燻製料理のひとつで、牛肉や鴨肉を燻製にしたものです。使われる肉や部位はさまざまで、味わいや食感の違いを楽しめます。
黒こしょうなどの香辛料やハーブをたっぷり使っており、ピリッとした辛みと独特の風味が特徴です。サンドイッチの具材やオードブルのひと品としても人気があります。
世界のハムの種類

日本でのハムの歴史は比較的浅いのですが、海外ではその歴史は古く、紀元前頃から生ハムが食べられてきました。今日でも世界中で愛されている世界三大生ハムをはじめ、各国で作られているハムの種類と特徴、おすすめの食べ方。
1. プロシュート・ディ・パルマ(イタリア)
イタリア・パルマ産の生ハムで、皮をつけたままの豚のもも肉を塩漬けにしてから熟成させたものです。世界三大生ハムのひとつで、パルマ地方の冷涼な気候と寒暖差、山から吹き下ろす風が、独特の風味を生み出しています。
香り豊かでクセが少なく食べやすいのが特徴で、フルーツと合わせたり、サラダやピザのトッピングにしたりするのがおすすめです。
2. ハモン・セラーノ(スペイン)
世界三大生ハムのひとつで、スペイン語で「山のハム」という意味を持ちます。山岳地帯特有の気候をいかして長期間熟成して作り出される生ハムです。肉のうまみが凝縮された奥深い味わいが特徴。
スペインではおつまみとして食べることが多く、そのままスライスして濃厚な風味とコクを楽しみます。同じスペイン産の赤ワインとの相性は抜群です。
3. 金華ハム(中国)
世界三大生ハムに数えられる金華ハムは、中国浙江省の金華地区のみで生産されている、地元の名産品のひとつです。塩漬けにした金華豚を長期間熟成させて、うまみを最大限に引き出しています。
生食されることはほとんどなく、濃厚なうまみと塩味を活かしてスープの素材として使われるほか、炒め物や蒸し物など中華料理の具材として食べられます。
4. ブラックフォレストハム(ドイツ)
黒い森のハムという意味のブラックフォレストハムは、ドイツ語で「シュヴァルツヴェルダー・シンケン」と呼ばれる燻製ハムです。塩漬けした肉を低温でじっくりと燻製して作ります。
樹脂が多く含まれる針葉樹を使って燻製することによる黒くいぶされた表面と、深いスモークの香りが特徴。ドライフルーツとの相性がぴったりです。
5. ジャンボン・ド・パリ(フランス)
骨を取り除いた豚もも肉を塩漬けにして加熱したもので、フランスでは最もポピュラーなハムです。香りと風味付けにハーブと野菜のスープに漬け込む作り方もあります。
あっさりとした味わいと肉のしっかりした歯ごたえが特徴で、サンドイッチの具材やクロックムッシュ、ガレットなどフランス定番のメニューにも使われます。
6. スペック(イタリア)
イタリアの燻製ハムで、ドイツでベーコンを意味する「シュペック」が名前の由来。骨を抜いた豚もも肉を塩と香辛料に漬け込み、燻製して作られます。
塩漬けしただけの生ハムと違って塩気が薄く、ハーブの風味とスモーキーな香りを楽しめますよ。サラダやパスタの具材として食べるのがおすすめです。
7. ヴェストファーレンハム(ドイツ)
ドイツのヴェストファーレン地方で作られており、ドングリを主食とした豚肉が使われるのが特徴です。
ブナやジュニパーの枝を使って燻製され、同じくドイツで作られているブラックフォレストハムと比べると、風味がすっきりとしています。ドイツでは春の味覚である白アスパラガスと一緒に食べるのがポピュラーです。
8. プラハハム(チェコ)
チェコの首都・プラハで作られているハムで、ブナの木で軽くスモークされているのが特徴です。現地ではプラハハムの炭火焼きが名物で、口にほおばるとジュワッと肉汁があふれ出ますよ。
日本で親しまれているロースハムよりもはっきりと主張する塩味が感じられ、肉の豊かなうまみが口いっぱいに広がります。高級食材として知られていて、価格も高めです。
ハムとベーコンの違い

前述したように、ハムを作る主な部位は豚のもも肉です。
中でも後ろ足の部位を使用することが多く、肉を塩漬けにし、熟成させた後に型に詰めたり、糸で巻いたりしてから燻製させます。仕上げにスチームで蒸し、ボイルさせます。
