日本時間の昨日公開された米ビルボードによる1月31日付米およびグローバルソングチャートから、YouTubeのデータが除外されています。なお同日付アルバムチャートも同様です。
トップ10速報記事時公開の際には除外の旨が記載されていませんでしたが、後のビルボードジャパンによる発表にて、除外が確定しています。
<ビルボードジャパンチャートの集計に関するご案内>
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2026年1月27日
毎週木曜に公開しております以下のチャートにつきまして、ビルボードUSのチャートポリシーに準拠し、集計対象を変更いたします。
対象チャート:
“Global Japan Songs”
“Japan Songs(国/地域別)”
変更内容:…
ビルボードジャパンによる1月29日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japan(上記ポストでは”Global Japan Songs”と掲載)は1月31日付Global 200を基に日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出するチャートとなります。
今回はYouTubeによるデータ提供取り止めについて、その影響等をまとめます。
YouTubeによるデータ提供取り止めの経緯
米ビルボードやビルボードジャパン、またオリコン合算ランキングでも、アルバムチャートやソングチャートのストリーミング指標においてはサブスクサービス有料会員の1回再生と無料会員とのそれとでウエイトを分けて算出し、有料会員による1回再生がより大きい、いわばユーザーがお金を払って聴くことがより重要というチャートポリシー(集計方法)が敷かれ続けてきました。
そのチャートポリシーについて、米ビルボードは米アルバムおよびソングチャートのストリーミング指標におけるウエイトを1月17日付(集計期間:1月2~8日)より実質上昇すると昨年末に発表。しかしながら有料会員と無料会員とのウエイト分けが続くことから、米ビルボードのアナウンス直後にYouTubeはビルボード全体に対しYouTubeデータ提供を取り止めると宣言。ウエイトを分けること自体を"時代遅れ"と非難しています。除外は1月16日以降となり、1月31日付各種チャートから影響が及んだという次第です。
(なおYouTubeは、米ビルボードによる米ソングチャート、またグローバルのソングチャートにおいてストリーミング指標に含まれます。また米ビルボードアルバムチャートではストリーミングのアルバム換算分(SEA)に加算されます。他方ビルボードジャパンのソングチャートではYouTubeが動画再生指標に含まれ、オーディオストリーミングはストリーミング指標に加算されます。またアルバムチャートに動画再生指標はありません。)
YouTubeがビルボードへのデータ提供を取りやめることについては、昨年末のブログエントリーにてまとめていますが、その際は私見と前置きした上で、YouTubeの発表タイミングや発言内容からみえてくる態度に対し強い違和感も記しています。尤も、米ビルボードがYouTubeの件を報じた際の皮肉表現も問題ですが、両者の溝は埋まることなく現在に至ったこととなります。
YouTubeによるデータ提供、ビルボードジャパンでは継続
<ビルボードジャパンチャートの集計に関するご案内>
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2026年1月21日
ビルボードジャパンチャートは、今週以降もYouTubeのデータを集計/合算致します。計算方法にも変更はございません。今後とも、よろしくお願いいたします。
他方、ビルボードジャパンはこの問題を踏まえて昨年末の段階から動いていました。その旨は先述のエントリーにて追記したポッドキャストにて確認可能ですが、YouTubeデータ提供の取り止めが初めて反映される予定だった1月21日公開分ソングチャート(集計期間:1月12~18日)の発表直前になってビルボードジャパンはデータ提供継続の旨をアナウンスしています(なお継続については昨日のポストでも発信されています→こちら)。
YouTubeによるデータ提供取り止め直後、チャートはどう変わったか
日本では国内向けチャートに影響が出ないものの、米ビルボードによる米やグローバルのソングチャートではYouTubeデータ提供の取り止めが影響を及ぼします。取り止め後初回となった米ビルボードの最新1月31日付米およびグローバルソングチャートでは首位曲が前週と変わっていませんが、そのストリーミング数は大きく変動しています。
最新1月31日付米ビルボードソングチャートを制したブルーノ・マーズ「I Just Might」は、ストリーミング1710万(前週は2350万)、ダウンロードは9,000(前週は13,000)、ラジオは4080万(前週は3260万)を記録。なお今回の記事には前週比が記載されていないため、前週のデータを追記しています。
(中略)
テイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」はGlobal 200にてストリーミング5800万(前週7830万)およびダウンロード12,000(前週17,000)を、またGlobal Excl. U.S.ではストリーミング4470万(前週6150万)およびダウンロード5,000(前週6,000)を、それぞれ記録しています。なお今回の記事には前週比が記載されていないため、前週のデータを追記しています。
米ソングチャートにおいてはブルーノ・マーズ「I Just Might」が登場2週目につきデジタル2指標が後退傾向にある、またグローバルソングチャートではテイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」において前週終盤にリリースされたリミックス効果の反動が特にダウンロードに現れているといえますが、ここで注目したいのはストリーミング再生回数に占めるSpotifyの割合です。
米Spotifyにおいてブルーノ・マーズ「I Just Might」は1月9~15日(米ビルボードにおける1月24日付と同一期間)に10,824,750回再生、翌週は9,996,195回再生を記録。これを踏まえて米ビルボードソングチャートのストリーミング指標におけるSpotifyの割合を算出すると46.1%→58.5%となり、急増していることが解ります。またグローバルのSpotify週間チャートにおいてテイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」は44,990,874回再生→40,728,059回再生と推移。Global 200のストリーミング指標におけるSpotifyの割合は57.5%→70.2%となり、やはりYouTubeの存在が大きいことが読み取れるのです。
(なおGlobal 200において、Spotify週間チャート200位以内にランクインしたテイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」はオリジナルバージョンのみとなります。米ビルボードによる米やグローバルソングチャートでは様々なバージョンが合算されますが、今回はあくまでストリーミング指標におけるYouTubeの影響度を確認するため、簡易的な計算を実施しています。)
Estimated streams lost from the removal of YouTube from the Billboard Hot 100 (Hot 100 Top 10):
— Talk of the Charts (@talkofthecharts) 2026年1月17日
I Just Might -16%
The Fate of Ophelia -13%
Golden -17%
Man I Need -4%
Ordinary -13%
Choosin Texas -10%
End Of Beginning -12%
Back To Friends -7%
Folded -12%
Opalite -4% pic.twitter.com/1ucsjXsRBR
米ビルボードはビルボードジャパンほど数値を詳細に公開していないものの、分かる範囲だけでもYouTubeの存在感の大きさを読み取ることができます。また米ビルボードソングチャートの予想精度が高いXアカウントのTalk of the Chartsが、YouTube除外に伴うストリーミングの損失割合を算出しています。今後はこの除外が年間チャートやオールタイムアルバム/ソングチャートにも影響することを、米ビルボードは考慮すべきです。
YouTubeによるデータ提供取り止めは、日本の楽曲のグローバルヒットを弱める
さて、YouTubeデータ提供取り止め後初となる1月31日付Global 200では日本の楽曲が複数ランクインしています。
1月31日付 #Global200 における日本の楽曲の動向。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2026年1月27日
(集計期間:1月16~22日)https://t.co/SdjUqOxjX2
16→43位 #米津玄師「IRIS OUT」
30→77位 #KingGnu「AIZO」
154→79位 #MrsGREENAPPLE「lulu.」
なお当週より、YouTubeがデータ提供を取り止めています。
Mrs. GREEN APPLE「lulu.」は当週が初の1週間フル加算となったことが上昇の要因ですが、当週の50位までにおける順位面での下落幅は、米津玄師「IRIS OUT」(27ランクダウン)が最も大きくなっています。
Global 200での「IRIS OUT」の後退には、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)の動画が影響しています。紅白動画は元々NHK MUSIC発で公開されながら、同チャンネルがYouTubeにおける音楽パートナーという扱いではないためにストリーミング指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番できませんでした。動画は歌手側チャンネルでの再掲後ISRCが付番され、カウントされた形です。
その再掲が1月9日だったこともあり、同日を集計期間初日とする1月24日付Global 200では13→16位と推移。紅白直後を集計期間とする1月17日付ではダウンロードが大きく上昇したとみられ、翌週はその反動が表れるものとみられていましたが紅白パフォーマンス動画の再掲がその下落幅を抑えたと考えられます。他方、その動画も含めYouTube自体が加算対象から外れたことが、当週の大幅な後退に影響したというわけです。
尤も日本の楽曲においては、Global 200でトップ10入りしたYOASOBI「アイドル」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」においても、ストリーミングに占めるYouTubeの割合が高い(Spotifyの割合が高くない)ことが既に明らかになっていました。その旨は以下のエントリーにて紹介しています。
グローバルチャートでは日本のアニメタイアップ曲が特に強さを発揮していますが、該当曲においてはタイアップ先となるアニメとのコラボ動画を歌手側YouTubeチャンネルで公開することが少なくなく、それが日本のみならず海外の音楽ファンからも支持されていたといえます。
おわりに:ビルボードジャパンや日本の音楽業界への提案
日本の音楽業界は海外を視野に動いていますが、YouTubeのグローバルチャートからの除外は日本の作品の上位進出に対する大きな阻害材料に成ると憂慮しています。いや音楽チャートは他にもあるという声も出てくるかもしれませんが、"世界200以上の国や地域を対象とした" "主要デジタルプラットフォームのデータに基づく" "複合指標から成る"チャートが他に見当たらない以上、やはりグローバルチャートの変更は痛手です。
ビルボードジャパンがYouTubeデータ提供を継続できた背景は解りかねますが、友好な関係性を築いてきたゆえと想起します。ならばそのノウハウを米ビルボードに渡し、もしくはYouTubeとの仲介の役割を果たし、YouTubeのデータ提供再開につなげるべきです。日本の音楽業界全体においても必要であるのみならず、Global 200等がグローバルで唯一の複合指標から成るチャートゆえ、世界の音楽業界においても同様でしょう。
今回の件でYouTube側を(無礼な発言等があったとしても)支持する関係者を複数確認しています。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年12月20日
ビルボード側に問題があるならば、その立場にいる方ならば尚の事その改善を進言することのほうがより好いはずです。
最終的に社会的ヒットの鑑がなくなる可能性を、果たして考慮しているでしょうか。
最後に。自分はYouTubeのデータ提供取り止め問題にて、上記内容を発信しています(当該ポストを含むスレッドは(追記あり) YouTubeがビルボードへのデータ提供を終了へ…声明発表のタイミング等も踏まえた上で考えることについて(2025年12月18日付)にて掲載)。日本の楽曲が世界での存在感を弱める可能性を踏まえて音楽業界関係者が最善の方法を模索し、発信することを願います。